なぜ泣くの?と聴かれたから
「年を負う毎に涙腺が緩んでいく。
情緒の揺らぎ幅が凄まじい。
うん、いい歳だなぁ。」
すぐ泣くオバさん、静かに爆誕しとる。
『カラスは、お山に子供が居るから、なくんだと。親は皆、子を思うて泣くものよな。
子はいつまでも子なのだよ。』
孫の童謡を聴いた祖母がボソボソ言ってた。
ずうっと心配で、目が離せないのに、目を離さなくちゃいけなかったことが自責と後悔の種。その時、状況が許さなかったのも事実だけれど、その状況に甘んじて許してしまった自分の事が心底許せない。
今もってそうだって。
〈帰る術が無いと分かった時、絶望に涙が涸れるまで泣いた。それが引き潮や枯渇のように涙は出ず、代わりにぽっかりと胸の奥に空虚な空洞を抱えることになった。〉
今日も虚ろな瞳が、空を見上げている。
【人並みの生活が、泣けるほど幸せ。】
自分が自分らしく生きられる事の尊さ。
出来ない事も多いけれど、それでも大切な人と一緒に過ごす事が出来るのは、奇跡。
やさしさなんて
泡になりたい
IF歴史。どっかのフィクション世界線。
タイムトラベラーなモブが混ざってる。
《波にさらわれた手紙》
砂をザクザクと踏んで、波打ち際へ向かう。
白波と水平線に沈み込む夕日を見比べながら、軽い気持ちで拾った小枝で、砂の上にザリザリと書き付ける。
時々、勢い良く打ちつける波に落書きを攫われながら、波に足を洗われないように逃げては、また書き付けていく。
「…何をしている。」
のっそりと背後に立つ偉丈夫。
座り込んだまま振り返って見上げると、覗き込むように傾げた首に銀糸の髪が揺れる。
『落書きです。夜の内に、波に攫われて、失くなってます。』
書いても描いても泡沫に消えるのならば、それも良し。
「童還りか?」
子供っぽいと言いたいのだろうか?
『童心が擽られまして。』
クスクスと笑うと、喉を鳴らすだけのいつもの返事が落ちてくる。
「楽しんだか?…日が落ちる。戻るぞ。」
共をしてくれた小枝を手に、先を行く広い背中を追い掛けた。
白波が、砂浜の落書きを浚って行った。