Sweet memories
愛があれば何でもできる?
※閲覧注意※
幼馴染シリーズ。
【初恋の日】
いつも一緒。
片時も離れず、傍に居る。
それが、常だった。
社会の波に流されながら、少し距離を置くようになった頃、突如として自覚する事になった。
(あぁ、好きだな。)
ふと過ぎる言葉が、しっくり来る様な気がした。
あなたは、いつもクラスの人気者。
「ねぇ、かっちゃん!次、移動教室だよ!行こう!」
ここは学校だ。ぼんやりしている暇はない。
「かっちゃん、気分悪い?」
不思議そうに覗き込む黒い瞳に、ぼんやりした自分が映り込んだ気がした。
「大丈夫。ちょっとぼーっとしてた。」
教科書とノートを持って、席を立つ。
「かっちゃん、待って。それ前の授業のだよ。1回座って。まだ時間あるから、ゆっくり行こう。」
手元の教科書と室内の時間割表を見て、全く違う組み合わせだと気が付いた。
「…うわ。本当だ。」
机の中にある次の授業の教科書とノートを出す。
「かっちゃん、首裏触るよ。」
しっかり体温を計られるのは、いつもの事。
「熱は、無さそう。」
ひんやりとした心地良い掌が首の裏に当たって、気持ちが良い。
「カズくんの手、冷たい?カズくんこそ、平気?」
無事に、次の授業の教科書とノートを確保して、席を立つ。
「え?あ、ごめんね、冷たくて。さっきトイレ行って手を洗ってきたから、かな?」
ちゃんと洗ったよ!と念押しするのも、いつもの事。
「気にしてないから。大丈夫なら、良い。」
優しい気遣いは、誰にでも振舞われる。
「こっちこそ、ごめん。気にしないで。」
冷たくて気持ち良かったとは、言い難かった。
「今日の心模様」
曇り、のち雨。波浪注意報。
小さな不安から、嵐の様に心の海は荒れるでしょう。
どうぞ、出来るだけ不要な心配はしないように。お気をつけて1日をお過ごしください。
今日も朝がやって来た。
希望に満ちている訳でもない、ぼんやりとした繰り返しの中のとある1日として。
それでも、今日は少しだけ特別な1日。
遠出する家族を早朝に見送って、今日は独りでハウスキーパー。
さて、何をしよう。
夜には帰ってくる。
大丈夫。独りでも出来る。
家族の無事を祈りながら、のんびり過ごす事にした。
『電車、乗れたよ!行ってくるね!』
メールが来た。ひとつホッとした。
気を紛らわす為に、洗濯機を回した。
朝ご飯を済ませて、時間が来たらゴミを出して、食器を洗って、洗濯物を干して…。
家の外で雨音がした。
天気予報通り、雨が降ってきたのだ。
家の中で、独りぼっち。
太陽の光がないと、少し落ち着かない。
じめじめ、めそめそ。
(何で、こんな日に洗濯しちゃったの…。)
自責の念を払拭したくて、テレビを点けた。
夜が近づいて来ても、家族からの連絡はない。
きっと忙しくしているのだろうから、詮索する様なメールはこちらから発信しない様に気を付けようと、思っていたのに…。
『これから、帰るね!電車、乗ったよ!晩ご飯は家で食べるから、お弁当買ってくれる?最寄り駅で、また連絡するね!』
嬉しくなって、たくさんメールしてしまって、また自己嫌悪。
『雨降ってるから、足元気を付けて。迎えに行けるように待ってるから、最寄り駅まで行こうか?…大丈夫、待てるから。連絡待ってます。』
お弁当も、目当ての物じゃなくて、しょんぼりした。
(これは、私の所為じゃないんだけど…。)
分かっているのに、何でか凹む。
時々、思い出したように頭の回転灯が回る。
くるくる、チカチカ。
もう少しで、頭の中で緊急速報みたいなサイレンが鳴りそうなのを、宥めすかす。
(大丈夫、大丈夫だから。乗った電車が遅れたって、家族が傷付く訳じゃないから。)
何でも大事にしてしまう脳の仕組みが、恨めしい。
(何も飛んでこないよ。今日はただ1日雨が降ってるだけ。家族もちゃんと帰ってくるから。交通事故?遭わないよ。その時は、その時!)
頭の中は嵐の様で、落ち着かない。
電車が到着する時間になって、ソワソワうろうろして、緊張なのかトイレまで行って、今か今かと帰りを待つ。
「ただいま〜!凄い雨だね!」
帰って来た!大騒ぎの頭のまま、出迎える。
「お帰り!」
元気な姿を見て、やっと安心した。
(怪我もしてなさそう。上着も汚れてないから、転んだりもしてない。良かった。)
煩いほどの心配が一気に解けて、どっと疲れが出た。
(何て難儀な事になったのか。全く。)
これを活かせる術はあるのだろうか。
この先を心配して、ひたすらに起こり得る不安を演算し続ける私の脳は、一体どうなるのか。辞めろと言っても止まらないし、取り敢えず気を紛らわすしかなくて。
ぐるぐるを止める呼吸方法だけをお守りにして、やり過ごす日々だ。