たろ

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「過ぎ去った日々」

額の中、パトランプがくるくると点灯している。
額の骨の内側で、目に入ってくる人物や声の刺激を仕分け、少しでも刺激に触れたら、けたたましく警戒警報が鳴り響く。
ここは戦場か?と思う程、私の神経は研ぎ澄まされ、時に過敏に、時に騒がしく、最悪の想定を弾き出す。
生命の危険すら主張するその警戒音は、その場所に向かうことも辛くした。
なのに、逃げ出すと言う選択肢だけが、私の中で塗り潰されて、壊れていた。
どうにも押せないボタンと、塗り潰された選択肢は、私に退路が無いと錯覚させ、泣きながら前へ進むしか無いと思い込ませた。


気の置けない友人が、教えてくれた。
「もう、逃げな。まずは、そこから離れる。全部の話はそれからだよ。もう充分。やれることは、やったでしょう?その壁は、乗り越えるべき物じゃない。戻っておいで。」
全部、捨てると、決めた。

起こり得ない恐怖を予測する脳のエラーコールと猜疑心の塊の様な思考。
魘される悪夢は、繰り返す日常の思い返し。
しゃっくりみたいに繰り返している内に、少しずつパトランプが点灯する回数が減って行った。
それでも、逃げ切るまでは恐怖を予測する思考が度々顔を出して、怯えていた。
この先を考えては焦り、元には戻れない気がして泣いた。
仕事の話しか出来ない人の連絡先をブロックした。連絡しないと決めた。
気にしないを徹底して、もう振り返らないと。振り返るとしたら、若さだけで駆け抜けた良き思い出として。


過ぎ去りし日々に、お別れを。
わたしは頑張った。
それこそ命懸けで、やり切ったのだ。
際限のない戦場を駆け抜けたのだ。
もう充分、やれることはやったのだ。
わたしが、私らしく居られる場所を、新しく探そう。
歪んで歪なわたしを、これ以上すり減らすことがない場所を。
もう一片たりとも、奪われてなるものか。

3/9/2026, 10:03:24 AM