たろ

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3/18/2024, 1:58:27 PM


『不条理』

正しい事が、正しくない事になる。
社会に出てから遭遇した不思議な感覚。
誰かの正論が、他の誰かを傷つける事とも少し異なるそれは、やはり大人の気配がした。

昔話に散りばめられた綺麗な毒は、それと知らずに飲み込んで帰らぬ者たちのみ知る語り種。
知らずに愛でて育てれば、頭から食らう食人花になるのだろうか。
摩訶不思議な奇説ならば、面白可笑しくも楽しめようけれど。
きっと誰も知らぬまま、朽ちるに任せる屍の如く。

あぁ、おそろしい。

3/17/2024, 12:09:57 PM

※閲覧注意※
IF歴史?軽率なクロスオーバー?
タイムトラベラーなモブちゃんが、普通に居るよ。何でも許せる人向け。

《泣かないよ》

水面に映る月を見下ろす。
『…きっともう、戻れないんだ。』
諦めるしかないと言い聴かせる程に、心は千々に乱れて涙が溢れそうになる。

「あら、暁。何を見ているの?」
後ろから掛けられた声は優しく、この屋敷の女主人のものと、理解している。
「まぁ、月が浮かんでいるのね。」
半分に近い、ふくよかな三日月が水面に浮かんでいるのを、女主人は隣から覗き込む。
「お月様、私は好きよ。あなたは、お好き?」
物怖じせず、声を掛けてくれる女性に、こくりと頷いて見せる。
「ふふふ、綺麗な月。」
女性を直視しないように気を付けて、池に浮かぶ月を見つめる。
「ねぇ、暁。お郷が恋しい?…ええと、お家に、帰りたい?」
部外者だと切実に感じていて、歴史を見ているのだと頭の片隅で理解もしている。
『帰る事が出来るなら、帰りたいです。でも、もう戻れないとも、思うんです。諦めるしかないのに、苦しくて。』
風に揺らぐ水面の月。女性の袖の端に触れて、答える。
「当然の事よね。辛い事を尋ねてしまって、ごめんなさい。ただ、あなたさえ良ければなのだけれど…。あの人の為に、ここに居て欲しいの。」
女性の大切な人。彼女の夫であり、最愛の配偶者。
(何で?新婚なのに…。)
最近、祝言を挙げたばかりなのだ、と周囲の奉公人に教えてもらった。
とても仲が良く、睦まじい夫婦であり、仕える身には誇りであると。
「あなたを独りにしてはいけない、と私は思っているの。だから、ここがあなたのもう一つのお郷になってくれたら、何より素敵な事だと思うの。」
見ず知らずの異質な自分を、躊躇いなく受け入れるこの女性が、今は何を考えているのか解らなくて、とても怖かった。
「あまね、何を…。あぁ、暁か。」
女性の夫がのそのそと近付いてくる。
にじり下がって平伏して、いつでもこの場を去れるように踵を持ち上げる。
「月が綺麗なのを教えてくれたの。一緒に見たくて。旦那様も、ご一緒なさらない?」
お酒を持ってくると言って、女性が立ち上がろうとするより前に、立ち上がってふたりの前から、逃げ出した。

(気に入られている内は、ここに居よう。)
駄目なら追い出されるか、首が飛ぶかするだろう。その時は、その時なのだ。
『もう、泣くのは止めよう。』
この世界で生きていく術を、身に付けようと決意を新たにした。

3/16/2024, 10:57:21 AM

※閲覧注意※
IF歴史?二次創作?軽率なクロスオーバー?
時空トラベラーなモブちゃんが出て来るよ。
色々、ごちゃまぜ。何でも許せる人向け。


《怖がり》

怯えを表す潤んだ瞳に、ひゅうひゅうと鳴る喉。震える肩は、恐怖を色濃く伝える。
にじり下がって、手を床に付け、頭を垂れるまで、そう時間はかからない。
「面を上げろ。頭を垂れよとは、申しておらん。」
黒曜の瞳が怯えを含んだまま、こちらを窺う。
「さて、如何したものか。策を練るか。」
喉を鳴らして嗤うと、おどおどと黒曜の瞳が彷徨う。
「来い。何があったか、事実を語れ。」
自分の膝を示すと、目前の子供がきょろきょろと周囲を見渡してから近付く。子供の小さな手が、自分の膝の上にそっと乗る。
『ここで、お留守番をしていたら、忘れ物を取りに来たと、仰言るあなた様が、いらして…。』
姿形が良く似た者とは、面倒なものである。
「あれは、俺を真似る、妖かしだ。」
巧妙に真似をする奴でもある。
『…見分けが付くようになるでしょうか?』
妖かしと聴けば怖がるかと思えば、真剣に何が違うのか探そうとしているのが、可笑しく思えた。
「目元に、これは入っていたか?」
目元の色を示すと、子供がこくりと頷く。
「ならば、示し合わせだな。」
合図と合言葉。互いしか解らぬことを示し合わせる。
「お前から話せ。話が通じなければ、俺ではないと断じて良い。万が一にも、俺であったとて、返事がなければ俺と思うな。」
こくりと頷いて、鼻息を荒くする怖がりな子供。
『それなら、間違えないと思います。』
怖がりな子供の顔が、嬉しそうに綻んだ。

後日、妖かしと呼ばわった輩を子供の目前で絞め上げて、怖がりな子供を泣かせる事になったのは、また別の話。

3/15/2024, 12:12:35 PM


『星が溢れる』

凍て付く夜空に、輝く星々。
狩人は猛り、美しき月へと愛を語る。
その物語は、今も語り継がれている悲恋。

古の船人たちは、極星を頼りに夜空へと地図を描き、最果ての彼方を目指したと云う。
命懸けの航海は今もって存在し、前人未踏を更新してきた。

母なる大地を後にして、空へ飛び立った船は、未知なる宇宙を目指して更なる前人未踏を更新すべく、航海を続けているのだ。

星よ、我らを導いておくれ。
日々、憂いと喜びに揺れるちっぽけな私を、どうか笑っておくれ。
宝箱の中から溢れる様な綺羅綺羅しい光で、私を見守って欲しい。

3/14/2024, 1:51:34 PM


【安らかな瞳】

穏やかで、凪のように揺らぎがない、色素の薄いあなたの瞳。
安穏を浮かべて、こちらを見つめている。
あなたの美しい色の瞳を、吸い込まれる様に見詰め返す。
「…見過ぎ。恥ずかしいんですけど。」
視線を逸らす事など出来ずにいると、照れ隠しの様にふいと外方を向かれてしまう。
「あなたの綺麗な瞳に、目も心も奪われてしまったので。」
わざと仰々しく応えると、耳の裏から首元まで真っ赤に染めて、あなたは小さな抗議の声を上げた。
「…恥ずかしいから、止めてくれ。」
懇願に近い掠れた声と、潤んだ瞳が睨んでくるのを心底可愛らしいと思う。

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