※閲覧注意※
命に貴賤なし。
大きいも小さいもねぇのですよ。
とまぁ、個人的な感想しか出て来ませんでした。
独断と偏見により、お題から逸れます。
完全なる、逸脱行為です。
それでも良ければ、どうぞ。
【小さな命】
冷蔵庫の扉を開けて、衝撃を受けた。
「わぁ、空っぽ!買い出し行かなきゃだ。…何も考えたくないよぉ。」
頭の中が真っ白で、何も出て来ない。
「ねぇ、かっちゃん!何も思い付かない!何食べたい?」
ガタタッ、と物音がして、驚いた顔のあなたが台所に駆け込んで来た。
「…熱、計って。」
体温計を脇に突っ込まれて、空っぽの冷蔵庫の扉を閉めた腕に抱き締められる。
「え、ちょっと、体温上がっちゃう。」
ピピピと電子音が鳴って、体温計を乱雑に回収される。
「…熱は、なさそう。」
表示された数字は、見慣れたいつもの体温。
「どっか、食べに行こう。…帰りに、買い出しして、今日は何も作らない。」
こんな風に、たまに頭が真っ白になると、あなたは気を使って、外へ連れ出してくれる。
「今日と明日は、俺がやるから。甘え過ぎた、ごめん。」
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、少し嬉しくなる。
「わぁい、甘えん坊さんだ!嬉しい!」
えへへ、と笑って、少し苦しくなってくる頃、ゆらゆらと揺れてトントンと背中を叩く。
「…っ、ごめん。」
ぱっと離れる体が、気遣わしげにこちらを覗っている様だった。
「取り敢えず、車で行こう。」
ドライブだ!デートだ!と、はしゃいでいると、あなたは顔を紅くして照れてしまう。
今生の人生とやらを、満喫してやるのだと、この命を燃やしている。
【Love you】
どんな時も、いつだって、あなたは真っ直ぐに、想いを伝えてくれていた。
いつからか、シンプルな言葉を繰り返して、こちらを酷く赤面させてくるようになった。
恥ずかしくて顔が赤くなるのを、からかっているのかもしれないと、思い込もうとする自分を遮る様に繰り返される言葉たち。
とにかくたくさんの言葉をくれるあなたに、少しでも言葉を返したくて。
「愛してる。」
ようやく口から出てきた言葉は、酷く掠れて蚊の啼くような小さいものだった。
「!?…えっ!嬉しい、まって!幻聴じゃないよね?」
面と向かって言えずに、後ろから掛けた自分の声を拾ったあなたが、勢い良く振り返る。
「―――っ!」
目が合いそうになって、慌てて視線を外す。
「…かっちゃん、もう一回、聴きたい。」
そっと抱きついてくるあなたの腕が、遠慮がちなのに気が付いてしまって、いよいよ恥ずかしさが込み上げてくる。
「夢じゃないって、幻聴じゃないって、言って欲しい。ムリ言って、ごめんね。」
あなたの半分よりもずっと少ない回数しか言えていない言葉を、どうにかして伝えなくてはと思うのに、喉が塞がったように動かなくて、溺れてしまいそうだ。
「…嘘じゃない。本当に、言った。」
その言葉だけが、出て来ないのだ。
「うん、聴いてた。聴いていたんだけど、もう一回聴きたいの。お願い、かっちゃん。愛してる。大好き。」
雨のように落ちてくる言葉たちが、身体に沁み込んでくるような気がした。
「…愛してる。和真の事、愛してる。」
ようやく言葉が音になって、口から滑り落ちて来た。やっと出てきた言葉を、きちんと伝えなくては、とあなたに向き合う様に体を動かす。
「オレも、かっちゃんの事が大好き!愛してるよ!」
ぎゅうぎゅうと力強く抱き寄せるあなたの腕が、喜びの強さを伝えてくれる。
「かず、ま?大好き。」
いつまでも離れようとしないあなたの腕に、そっと口付けをした。
あなたの愛に、包まれている。
そう、想った。
【太陽のような】
「かっちゃんは、オレの太陽だよ!」
あなたは、そう言って笑う。
「カズくんの笑顔は、太陽みたいだと思うけど?」
太陽のようなあなたをずっと見つめている自分自身が、太陽を追い駆けている向日葵と重なる。
「かっちゃんにそう言われると、嬉しいけど…。何か、違うなぁ。」
難しい顔をして唸ってしまうあなたが、ぽんっと手を打った。
「オレがヒマワリの方だと思うなぁ。だって、抜けそうに真っ青な空を横切っていく、キラキラして恰好良い太陽みたいなかっちゃん!画になるじゃん!」
断言して、鼻息を荒くしているあなたに苦笑いする。
「ありがとう。…照れる。」
少しだけ、小出しにして欲しいと思った。
【0からの】
きっと始まりなんて、なかったと思う。
産声を上げたその日から、もう始まっていたのだから。
運命や必然では表せない何かが、二人を繋いだのだ。
きっと二人は、出会うべくして出逢ったのだろう。
物理的な距離は、限りなくゼロに近く。
精神的な距離も、限りなくゼロにしたい。
そんな風に思いながら、ゼロからの関係を築き上げてきたのだ。
【同情】
きっと傍に居てくれるのは、同情とか憐憫なのだろうと思っていたのに。
「大好きだよ、かっちゃん。かっちゃんが嫌いって言っても、離れない。…ごめんね、オレが離れられなくなっちゃったの。」
あろう事か、あなたはおかしな事を口にし始めたのだ。
「…無理、しなくて、いい、から。」
何度か同じ事を口にしては、苦笑いのあなたに否定される。
「オレは、無理してない。無理してるのは、かっちゃんの方。」
ベッドのサイドテーブルに色んな物を持ち込んでは、自力でベッドから出られない自分の隣で、本を読んだり、書き物をしたり、あなたは自由に過ごしている。
「学校、行って。」
思うより、か細く掠れた声が出て、恥ずかしくなって頭から掛布団を被った。
「あぁ、かっちゃんと一緒に、休学する事にした。一緒に卒業したいから。大丈夫だよ。」
ぽんぽんと掛布団を優しく叩く。
「―――っ!馬鹿。早く、学校、行けよ!」
こんな事で、足を引っ張りたくない。そう切実に思った。
「嫌!あのね、オレ独りで学校行ったら、かっちゃんが居ないだけで、すっげぇつまんなくて、もう学校行くの辞めようと思った。でも、かっちゃんと一緒に卒業したいから、辞めるのを止めようと思った訳。親にもちゃんと話して、同意は取った。自分で決めたから、大丈夫。」
真剣な顔で、はっきりと告げられた言葉に、呆れるしかない。
「かっちゃんと一緒に行けない学校なんて、無意味だよ。」
真面目な顔で、何を言い出すかと思えば、世迷言そのものだった。
「呆れてるだろ、ご両親。」
自分よりも厳格な両親の元に産まれたあなたに、申し訳なくなる。
「いつも通り、オヤジは呆れてだけど、おかんは応援してくれた。」
何も心配は要らないと鼻息荒く、あなたはガッツポーズしている。
「本当、馬鹿だな。」
同情でも憐憫でも、何でも良くなった。
あなたが傍に居てくれるなら、何でもしようと想った。