【同情】
きっと傍に居てくれるのは、同情とか憐憫なのだろうと思っていたのに。
「大好きだよ、かっちゃん。かっちゃんが嫌いって言っても、離れない。…ごめんね、オレが離れられなくなっちゃったの。」
あろう事か、あなたはおかしな事を口にし始めたのだ。
「…無理、しなくて、いい、から。」
何度か同じ事を口にしては、苦笑いのあなたに否定される。
「オレは、無理してない。無理してるのは、かっちゃんの方。」
ベッドのサイドテーブルに色んな物を持ち込んでは、自力でベッドから出られない自分の隣で、本を読んだり、書き物をしたり、あなたは自由に過ごしている。
「学校、行って。」
思うより、か細く掠れた声が出て、恥ずかしくなって頭から掛布団を被った。
「あぁ、かっちゃんと一緒に、休学する事にした。一緒に卒業したいから。大丈夫だよ。」
ぽんぽんと掛布団を優しく叩く。
「―――っ!馬鹿。早く、学校、行けよ!」
こんな事で、足を引っ張りたくない。そう切実に思った。
「嫌!あのね、オレ独りで学校行ったら、かっちゃんが居ないだけで、すっげぇつまんなくて、もう学校行くの辞めようと思った。でも、かっちゃんと一緒に卒業したいから、辞めるのを止めようと思った訳。親にもちゃんと話して、同意は取った。自分で決めたから、大丈夫。」
真剣な顔で、はっきりと告げられた言葉に、呆れるしかない。
「かっちゃんと一緒に行けない学校なんて、無意味だよ。」
真面目な顔で、何を言い出すかと思えば、世迷言そのものだった。
「呆れてるだろ、ご両親。」
自分よりも厳格な両親の元に産まれたあなたに、申し訳なくなる。
「いつも通り、オヤジは呆れてだけど、おかんは応援してくれた。」
何も心配は要らないと鼻息荒く、あなたはガッツポーズしている。
「本当、馬鹿だな。」
同情でも憐憫でも、何でも良くなった。
あなたが傍に居てくれるなら、何でもしようと想った。
2/20/2024, 10:12:04 AM