※閲覧注意※
IF歴史?
二次創作?
軽率なクロスオーバー?
ごちゃ混ぜバンザイ!
創作モブが普通に居るよ。
《伝えたい》
声が出ない。
気が付いたら、誰にも声を掛けられなくなっていた。
誰も気が付かない。
呼び掛ける声は、空気を少し押す程度で、誰にも伝わらなかった。
「―――っ!」
(どうして?どうやって話してた?喉を痛めて声が出ないんじゃない。)
声が、ないのだ。
(なんで、こんな事に…。)
「何故、ここにお前がいる?」
茫然と座り込んでいると、後頭部から声が降ってきた。
ざりざりと地面を踏む音が近付く。
(なんて説明したら…。だめだ、伝わらないのに、どうしよう。)
地面に指が触れる。はっと思い出して、指で地面をなぞる。
(書いて、見てもらえば…。)
大きめに、ゆっくりと腕を動かす。
「こえが、でない…?」
後ろへ体ごと振り返り、首を縦に振って見せる。
「…巫山戯て居るのか?」
ひゅっと喉が鳴った。見ていたであろう男性の瞳が、至近距離で剣呑に細められている。
竦み上がる身体を叱咤して、首を横に振る。
「あまり、人様をからかうなよ。死ぬぞ。」
ひょいと男性の腕に抱き上げられて、そのまま連れ出されてしまった。
運んでいる間に意識を手放したらしい子どもが、突然に滔々としゃべりだした。
「此の子は、私を預かると約束してくれたから、大切にしておくれ。私を結び付けるのに、此の子の声を使わせてもらった。不便だろうから、あなた達には伝わるようにしよう。意地の悪い事をしたら、相応の報いがあると、そう心得よ。」
己を神だと宣う子どもは、胸を張って得意気である。
「…人が良すぎるのも、考えものだな。」
仕方がないと応える男性に、子どもは怪訝そうに首を傾げた。
「子を護れば、神も護れると言う事ならば、さしたる変わりはない。承知した。」
子どもは嬉しそうに笑って、頼んだ!と言い放ち、それきり脱力して気を失った。
「…唐突だな。」
脱力する体を引き寄せて、再度担ぎ上げる。
ふわりと風が通り抜けて行った。
※閲覧注意※
IF歴史?
うっすら二次創作?
クロスオーバー?
ごちゃ混ぜ、創作モブが普通にいる。
《この場所で》
昔々、或る所に―――。
おとぎ話の冒頭部分に良くあるくだり。
優しいお爺さんとお婆さんは出て来ないけれど、何故か新婚さんっぽい若夫婦に拾ってもらって、お手伝いさんみたいな人たちにも良くしてもらって、やっと生きている。
生活習慣は全く異なっていて、馴染むのもひと苦労だ。
七五三以来の着物も、見たことがないシロモノで、何が何だか判らない食べ物も、作法なんて何ひとつ解らない。
自分で身の回りの事をしようとしても、少しも上手く出来なくて、結局すべての面倒を看てもらっている。
緊急事態の時は、どうしたら良いのだろう。
困る事しか思い浮かばない。
ここを去る日が来たら、きっと何も出来なくて困ってしまうだろうなぁと、取り留めなく考えていた。
「考え事かい?難しい面してさ。」
着付けとお風呂の介助をしてくれる女性が、ふと着付ける手を止めて訊ねてくる。
首を横に振って、にっこりと笑ってみせる。
女性は安心したように笑って、着付けを再開した。
(きっと、この場所で生きて行くのだろうな。)
帰る方法も判らないのだ。元いた場所には戻れないと考えるのが妥当だろう。
(出来るだけ早く、馴染まないと。)
頑張ろう、と思えた。
【誰もがみんな】
あなたは、誰もがみんな声を掛ける素敵な人。陽だまりのような暖かな人。
どこかに連れ去られそうで、心配になる。
(お願い、何処にも行かないで―――。)
声が喉元までせり上がってくるのを、慌てて飲み下す。
あなたの周りは、いつもたくさんの人で溢れていて、誰もがあなたを好きになる。
あなたは、誰にでも優しくて、嫌な顔ひとつせずに、屈託なく喜怒哀楽を伝えられる素敵な人。
(あぁ、また埋もれて。)
囲われて何処かへ連れて行かれてしまうのではないかと、ハラハラする。
遠巻きにそっと見守るように、あなたを視線で追う。少し胸が痛んで、肩にかけている鞄のベルトをぐっと握り締めた。
(―――っ。大丈夫、いつもの事だから。)
溢れる取り巻きの中へ入ることも出来ず、見守るしかない。
せめて、穏やかに笑って戻ってくるのを待ちたいのに、心は少しもままならない。
視線を外すことも出来ず、居た堪れなくなって俯いた。枯れ葉が1枚、風に流されて足元へ寄り添った。情けない自分を映しているような気がした。
ふと気が付くと、囲みの中からあなたが大袈裟に手を振っていて、満面の笑みを寄越していた。
小さく手を上げると、囲みの中からこちらへ走り出てきた。
「かっちゃん、ごめんね!おまたせ。行こう!」
あなたは囲んでいた人たちに向かって、大きく手を振って、お礼を言っている。
「場所聴いてきたから、こっち!」
躊躇いなく自分の手を握るあなたの手に釣られて、歩き出した。
【花束】
いっぱいの花を、あなたに贈ろう。
溢れんばかりの花を、ひとまとめにして。
あなたが好きな色、あなたに似合う色、あなたが映える色、あなたの隣に傍にあるだけで、どれもきっと綺麗に見えるだろう。
迷っていたら、店員さんに声をかけられて、あれよあれよと言う間に、大きな大きな花束が出来上がった。
太陽のように笑うあなたに、花を買って帰ろうとふと思い立って、花屋さんの前で立ち止まる。
「太陽のような、大切な人に。」
太陽を写し取ったような向日葵を中心に、可愛らしくまとめた花束。
―――あなたは喜んでくれるだろうか。
「いつも、ありがとう。」
家に辿り着くと、中から花の香りがした。
「えぇ〜、嬉しい!ありがとう!」
出会い頭に、そのまま手にしていた花束を相手に渡す。
「居間、見てもらえる?」
嬉しそうに花束を抱き締めるあなたが、照れた様に笑う。
「何だか、二人して同じ事考えてたみたいだよ?」
居間に入った途端、花の香りが強くなる。
「…え?」
頬を恥ずかしそうに掻いているあなたが、はにかんだ。
「かっちゃんに似合うやつ〜、とか考えてたら、こんなにおっきくなっちゃって…。」
ひと抱えどころか、そのまま飾っておけるような大きさになっていて、純粋に驚いた。
「でっか…。良く持って帰れたな。」
ふたりは、それぞれに買ってきた花束を仲良く飾って、似た者同士だと笑いあって、喜びを分かち合う。
私から、愛を込めて―――。
【スマイル】
にこにこ、にこにこ。
いつも笑っているあなた。
嬉しそうに、楽しそうに、はにかんだり、大きな口を開けて笑って。
素直に喜怒哀楽を表現出来るあなたが眩しくて、目を背ける事もできなかった。
「かっちゃん!見て、こんなに沢山!」
庭木に水をやるんだと小さい庭に出て行ったあなたが、ボウルいっぱいに夏野菜を収穫してくる。
出来立ての麦茶をたっぷりの氷を入れたグラスに注いで、汗だくで戻ってくるあなたに手渡す。
「ありがとう。今年も、良く実るなぁ。」
ボウルを受け取って、水に潜らせて良く絞ったタオルを渡す。
「ひゃぁ、冷たい!気持ちぃ~♪」
喉を鳴らして、麦茶を一気飲みするあなたが、嬉しそうに笑っている。
「はぁ〜、生き返る〜。」
汗を拭きながら、洗面所に駆け込んでいく背中を見送る。
「…忙しいな。」
ふふふと笑って、ボウルの中の夏野菜たちを水で洗う。
「何にしようかな。」
キュウリ、トマト、オクラ、ピーマン…。
「かっちゃん!その子達、どうする?無難にサラダ?スープも良いよね。パスタソースも行けそうだし、肉とか魚と煮込んでも良いかな?」
パタパタと足音を立てながら、駆け戻ってくるあなたが、元気よく提案してくる。
一緒に作って、一緒に食べる。
不思議と笑みが零れるのは、あなたの太陽のような笑顔の所為かもしれない。