Iben

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11/14/2025, 10:37:05 AM

ささやかな約束

ささやかな約束だと思った。

好きだったあの子に告白をした。
彼女は物腰柔らかく、
いつも場の雰囲気を和やかにさせる人だった。
僕はそんな貴方を尊敬していると、
傍に居たいと、伝えた。
彼女は一瞬、戸惑った顔をしてから笑い、
嬉しい、と言ってから僕をフった。

それから数週間後、彼女は突然話しかけてきた。
「今日の夜、君の家の窓から外を見ててよ。」
何故?なんて問う前に口は返事をしていた。
顔が熱いことに焦っていた僕なんか、
微塵も気にしていない彼女は優しく諦めたように微笑み
「約束ね。」
と言った。

恋は盲目。
今、僕は彼女とのささやかな約束を思い出し、
本当にそうだなと身にしみて感じた。

僕の家は10階建てのマンションだ。
僕の部屋の窓から見えるのはビル。

約束の夜、彼女はそのビルから飛び降りた。

僕は約束を守って、窓から外を見ていた。
ああ、絶対に無事では無いなと、
知識がなくてもわかる、嫌でもわかる衝撃音が響いた。
血の気が引いて、冷たい汗がつーと背中を伝う。
止まらない震え、耳に木霊する音、冷えきった空、
彼女の笑顔。
あのささやかな約束の事。

11/9/2025, 1:43:26 PM

心の境界線

芸術というものは、
自分と向き合うという辛い行為をする。

自分の感情や考え方、生き方。
芸術はそれを形にする。
形になったものは誰か、他人が触れられる。

だから芸術は生死がかかっている。

自分の柔らかく、形の無いものをかたちに起こすから、
それを人に触れられてしまうから。
それを自分が、自分の心の境界線を超えて、
形に出来そうなものを、心の奥深くまで探ってしまうから。

11/8/2025, 2:33:34 PM

透明な羽

バサッ

透明な羽、
見えない羽。
目障りな羽。

ぐちゃっ、ぐち、ぐちっ、

引きちぎれた羽。
透明になった羽。

それでもあなたの背中には羽がある。
何故、ちぎっても、ちぎっても、
生やして、生やして、飛ぶことができる?

ぶちっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ、

あの透明な羽が、
無くなるまで
ボクは引きちぎる。
とっくに落ちて腐ったボクの羽。
君の本物の羽だって腐ったのに。
何故か君にだけ生えている透明な羽。

ぐちゃっ

11/3/2025, 1:35:03 PM

行かないでと、願ったのに

僕を撫でる貴方はいつも悲しい顔をしてた
大丈夫だよ!僕が守るからと思っているのに貴方は気づかない

貴方が帰ってきて直ぐに駆け寄る
その日はなんだかいつもの悲しい顔ではなかった
なにか、事切れたような、そんな…

僕は、僕の方が寿命が短いから
貴方が居なくなるところは見ないはずなのに
行かないでと、願ったのに
どうして?
僕が人間じゃないから
どんなに願おうとも言葉に出来ないから

理由は分かっていても、
もう撫でてくれる貴方は行ってしまった

11/2/2025, 1:04:04 PM

秘密の標本

あの人は博識だ。
僕の知りたいこと全てを教えてくれる。
あの人は寛大だ。誰にでも優しい。
だからこんな僕を受け入れてくれた。

そんなあの人を壊したい。
綺麗なあの人が醜くなる所を見たい。
あの人の大事にしているもの。
僕にだけ教えてくれた秘密の標本。
珍しい蝶、カブトムシ、蜂…。
キラキラしていて宝石みたいだと、
あの人は目を輝かせて僕に話した。

僕はあの人の宝石達へと手を伸ばす。
あの人にしてやりたいように。
手足をちぎり、真っ二つにして中を覗いたり。
羽をむしり月明かりに照らす。
潰す、落とす、マッチで炙る、箱にぎちぎちと詰める。

秘密の標本、秘密にしたい理由は何なのだろう。
何故、僕には見せてくれたのだろう。
あの人はこれを、赤子を抱くように扱っていたな…。
ボクに話しかけるように扱っていたな…。
ボクは、宝石みたいだと、話しているのが聞こえたなぁ…

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