秘密の標本
あの人は博識だ。
僕の知りたいこと全てを教えてくれる。
あの人は寛大だ。誰にでも優しい。
だからこんな僕を受け入れてくれた。
そんなあの人を壊したい。
綺麗なあの人が醜くなる所を見たい。
あの人の大事にしているもの。
僕にだけ教えてくれた秘密の標本。
珍しい蝶、カブトムシ、蜂…。
キラキラしていて宝石みたいだと、
あの人は目を輝かせて僕に話した。
僕はあの人の宝石達へと手を伸ばす。
あの人にしてやりたいように。
手足をちぎり、真っ二つにして中を覗いたり。
羽をむしり月明かりに照らす。
潰す、落とす、マッチで炙る、箱にぎちぎちと詰める。
秘密の標本、秘密にしたい理由は何なのだろう。
何故、僕には見せてくれたのだろう。
あの人はこれを、赤子を抱くように扱っていたな…。
ボクに話しかけるように扱っていたな…。
ボクは、宝石みたいだと、話しているのが聞こえたなぁ…
11/2/2025, 1:04:04 PM