【落下】
突き落とされた。
それは突然に。
胸がヒュっとして、その後ゆっくりドキドキ感が強くなって。
バクバク鳴り響く、耳鳴りに。
頬が熱くなるのがわかる。
初めて知ったこの感覚。
ジェットコースターの上から下に落下した時よりも。
このドキドキは止まらない。
これが【初恋】って感情なのか…。
【未来】
怖いって普通のこと
緊張感があって
少し不安で。
それでもそこに行きたいと
手を伸ばして叶えたいと思ったから
だから。私は行くよ。
君と同じ世界へ
【あいまいな空】
夜とも夕方ともわからないそら。
朝やけとも昼間ともわからないそら。
曖昧な境目の中で、僕は1人立っている。
天界とも地上とも異なるこの場所。
あやふやな存在の僕。
ただ漂うこの空間で、僕は今日も待ち続ける。
次の命を。次の人生を。次のーーーーーーーー。
【あじさい】
目の前がくすむ視界の中。
轟々と横槍の雨が降る。
それはまるで、別世界へ誘われたような心地がして。
我思う。この僅かな色彩の霞の世界へ身をーー。
◾︎
西暦x年。
この世界には雨しか降らない。
ざぁざぁと。
ポツポツと。
晴天の日を生まれてこの方見た事がない。
昔、昔のお話では、お日様とお月様があり、どちらも天遠い大空に燦々と、淡々と輝いていたらしい。
「ねぇ、お母さん。なんで雨は降り続けてるの?」
それは神様がお怒りになったからだよ。
「なんで、かみさまは怒っちゃったの?」
地上に住む人々が、人殺しや戦争、自然に悪さをしたり、苦しい事や、悲しい事をいっぱい。いっぱいしてしまったからだよ。
「いっぱい??」
そういっぱい。
母は言いました。これは神様の怒りの声だと。
近所のお爺さんは言いました。これは神様の悲しみの雫だと。
雨が降りやまなかった当時、地上に住む人々には色んな災害を体験したと授業で習いました。
津波や地割れ。
浸水や、土砂崩れ。
人口は減り、人々は住むことろを無くし、今の姿になったそうです。
そう。鉄と塀に囲まれた、大きな水路がある水の都市に。
食べるものも減りました。
昔は野菜や肉などもあったらしいけど、今は固形のステックや、プロテイン。
味の薄いシリアルバー等。
昔は大陸に色んな国が混在し、それぞれの文化があったとされてます。
でも、今は違う。
名前も、髪色も話す言葉もすごく少なくなったとされてます。
私の住んでるところは、大和国。
帝都・時雨区、港町。
名前は、詞音・栗花落 (ことね・つゆり)
どこで混ざってしまったのか。
その記載は残ってません。
ただ、細々とした細い繋がりの中。
苗字と名前を逆に綴る国になったそうです。
私は思います。
ザァザァと横槍の雨の日に。
しとしとと遠くまで澄んで見える雨の日に。
いつか、神様って存在の。
哀しみや、苦しみが、少しでも軽くなった頃。
分厚い鉛色の雲の向こう。
産まれてこの方。見た事がない青色の空。
光の柱から零れる七色に輝く梯子を。
いつか。いつか。ーーーーみてみたいと。
【好き嫌い】
トマトが好き。ピーマンが嫌い。
赤が嫌いで、紫や黒が好き。
ショートは涼しくていいけど、ロングも捨て難い。
笑った顔も好きだけど、仏頂面も中々好み。
「なんでもいいんでしょ!」
なぁんて、プリプリさせながら話す君。
そんな顔も可愛くて、愛おしくて。
ハープの高音みたいな、弦で弾かれるとポロンと響くその声と。
空の青さを映した瞳で君はいつもそこに居る。
大人になった君は一体どんな美しい人になるんだろう。
将来、君の横にたてる存在のひとりに入ってたら嬉しいなぁ。
俺は思う。俺と同じ白雪を彷彿とさせる絹のような軽やかな髪の毛。
するりと伸びる体躯には洗練さがある。この人をーーーーーー。
◾︎
俺は少年兵だった。
【家族】だったものは、戦争でいなくなり、兵士に拾われ、使い捨ての如く毎日訓練をしてた。
目的もなく、言われるがまま。
何も感じず、何も持ってない空っぽな俺。
無意味な殺戮に、頓着しない冷えた心。
何もかもがどうでもよかった。
そんな折り、戦争の終わりを告げる鐘が鳴る。
俺を拾った大人達。
家族や恋人のいる兵士達。
命令を下す上官らは、どこか安堵を滲ませて。
俺達という存在など、初めからなかったかのように振舞った。
それもそうだ。
優先順位が、元々立っていた土台が違うのだから。想いや、立場が……。
そんな時だった。彼女にあったのは。
彼女とその仲間達と生活を共にするようになって、初めはよく分からなかった。
倫理観や、常識が。
今までの生き方と大きく異なるものだったから。
でも、だんだん知ってくとわかってくるものがある。
……多分。俺にとってそれはとても心地よく、好きな部類だったのだろう。
仲間になった彼らにはよく言われる。
「昔より、良くなった。」
「覇気がでてきたな。」
「ちゃあんと、飯食ってるか?」
「思ってる事が、表情や言葉として出るようになったな。いい傾向だ。」
「強くなりましたね。」
どこれこれも、昔には味わったことの無い言葉と感情。
でも、胸をほんのり温かみが包み込むそんな感じ。
好きでも無ければ、嫌いな感じもしない。
多分、俺はここが好きだ。
ここにいたい。
この仲間達と、世界中を回りたい。
………例え、一生恨んでも恨み切れない【あれ】と共にあろうとも。
彼女らは【武器商人】
武器の売買から、買い付け、用心警護などを受け持つ凄腕のプロフェッショナル。
俺はそのうちの一人。
恩人であり、このチームで最優先事項であり要でもある彼女。ボスの護衛だ。
この世界には武器が溢れている。
硝煙の匂いと重く淀む鉛色の空。
この手に、嫌という程馴染んでしまった憎き代物。
そんなものを扱う彼女の事は好きであり嫌いだ。