アサギリ

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【好き嫌い】

トマトが好き。ピーマンが嫌い。
赤が嫌いで、紫や黒が好き。
ショートは涼しくていいけど、ロングも捨て難い。
笑った顔も好きだけど、仏頂面も中々好み。

「なんでもいいんでしょ!」

なぁんて、プリプリさせながら話す君。
そんな顔も可愛くて、愛おしくて。
ハープの高音みたいな、弦で弾かれるとポロンと響くその声と。
空の青さを映した瞳で君はいつもそこに居る。

大人になった君は一体どんな美しい人になるんだろう。
将来、君の横にたてる存在のひとりに入ってたら嬉しいなぁ。

俺は思う。俺と同じ白雪を彷彿とさせる絹のような軽やかな髪の毛。
するりと伸びる体躯には洗練さがある。この人をーーーーーー。


◾︎


俺は少年兵だった。
【家族】だったものは、戦争でいなくなり、兵士に拾われ、使い捨ての如く毎日訓練をしてた。
目的もなく、言われるがまま。
何も感じず、何も持ってない空っぽな俺。
無意味な殺戮に、頓着しない冷えた心。
何もかもがどうでもよかった。


そんな折り、戦争の終わりを告げる鐘が鳴る。
俺を拾った大人達。
家族や恋人のいる兵士達。
命令を下す上官らは、どこか安堵を滲ませて。

俺達という存在など、初めからなかったかのように振舞った。
それもそうだ。
優先順位が、元々立っていた土台が違うのだから。想いや、立場が……。

そんな時だった。彼女にあったのは。

彼女とその仲間達と生活を共にするようになって、初めはよく分からなかった。
倫理観や、常識が。
今までの生き方と大きく異なるものだったから。
でも、だんだん知ってくとわかってくるものがある。
……多分。俺にとってそれはとても心地よく、好きな部類だったのだろう。

仲間になった彼らにはよく言われる。

「昔より、良くなった。」

「覇気がでてきたな。」

「ちゃあんと、飯食ってるか?」

「思ってる事が、表情や言葉として出るようになったな。いい傾向だ。」

「強くなりましたね。」

どこれこれも、昔には味わったことの無い言葉と感情。
でも、胸をほんのり温かみが包み込むそんな感じ。
好きでも無ければ、嫌いな感じもしない。

多分、俺はここが好きだ。
ここにいたい。
この仲間達と、世界中を回りたい。


………例え、一生恨んでも恨み切れない【あれ】と共にあろうとも。

彼女らは【武器商人】
武器の売買から、買い付け、用心警護などを受け持つ凄腕のプロフェッショナル。

俺はそのうちの一人。
恩人であり、このチームで最優先事項であり要でもある彼女。ボスの護衛だ。

この世界には武器が溢れている。
硝煙の匂いと重く淀む鉛色の空。
この手に、嫌という程馴染んでしまった憎き代物。
そんなものを扱う彼女の事は好きであり嫌いだ。


6/12/2023, 11:32:50 AM