→ → → 《楽園》
《?》← ← ←
道を歩いていたら、ぼんやりしていたせいか、まったく知らない場所にいた。
しかも、目の前に二つの看板らしきものがあって、右か左か、どちらかに進むようになっている。
うーむ、右は《楽園》で、左は《?》
うーむ、?といわれても、正直困る。
うーむ、どうしたものか…
あまのじゃくなボクは、進むことを諦めて、回れ右、をして、今自分が歩いてきたと思われる道を戻りはじめた。
人生、進んでばかりも疲れるよな。
ま、戻ることも必要だよ。
と、思いつつも、基本的にボクは今、知らない場所にいるのを思い出して、あれ?この道はどこに続いてるんだろー?と少々ドキドキしているのだった。
風船が風に乗って飛んできた。
空高くからゆらゆらと舞い降りてきたそれには紐が付いていて、一番下に種の入った袋が結んであった。
ボクは、その種を庭に植えた。
毎日毎日水をあげていると、芽が出てきてぐんぐんと伸びた。空高く、ぐんぐんと。
ある日、緑の葉っぱに紛れて小さなオレンジ色の実がなっていることに気づいた。
手に取ろうとすると、その実はぽとん、と地面に落ち、真っ二つに割れた。そして、中からミニトマトくらいの可愛い女の子が出てきて、ボクを見てにっこりと笑った。
その日から、ボクと彼女はずっと一緒にいるんだけど、彼女は喋らないし、何にも食べない。ただボクの顔を見て、にっこり笑うだけ。ボクが悲しいときも、怒っているときも、ただ、にっこり、するだけ。
彼女の笑顔をみると、ボクは悲しさや怒りもどうでもよくなって、つられて笑ってしまう。
風に乗ってきた彼女。
彼女はどこから来たんだろう?とたまに考えるけど、そんなボクをみて彼女はまたにっこりするもんだから、考えていたこともどーでもよくなって、ボクも思わずにっこりしてしまうのだ☺
「刹那、ってなんて読むの?」
「せつな、だよ。」
「どんな意味?」
「んー、短い時間かなー、すごく。」
そんな会話をする娘と孫
こういう何気ない一瞬一瞬が
案外とても大切なのよね
と、感じて
お茶を入れながら
一人こっそり
胸があったかくなった休日の昼下がり
誰かのため とか
何かのため とか
あちこちで 探してみたり
無理やりに 作ってみたり
することも あるかもしれないけど
生きて
生きて
生きぬいて
この世を去るとき に
わたしたちは
ようやく 分かるもの
なのかも しれないね
生きる意味 を
「善悪なんて人それぞれ、っていうけどさー、やっぱり腹立つよねー。なんであーいうのが善いとされちゃうんだろ?全くおかしな世の中だよー!」
と、大声で彼女は一気に言った。
かなりお怒りで、生ビールを飲むペースがいつもより早い。
バイト先でイヤなことがあったらしく、詳しくは話してくれないが、彼女からみると悪人にしかみえない上司が、周りの従業員には人気で、善人とされているようだった。
ボクからすると、彼女はかなり真面目で優秀だ。大抵のことはこなすし、基本的に優しくて親切で…と、善人の鏡のようなタイプ。しかし、バイト先での彼女は周囲から浮いていて、いつも悪者扱いされてしまうらしい。特に、その上司がみなを使って彼女を陥れている…みたいな、なんだか超絶ブラックというか、なんで未だにそのバイトを彼女が続けているのかが不思議でたまらない。
「なんかさー、やめたいけど、やめると負けた気になっちゃうんだよね。あいつ以外はいい人なんだよ、たぶん。あー、悪の温床めー、いなくならないかなー。」
と、ブツブツ言いながら鶏皮を食べる彼女は、こうやって発散してまた明日バイトに行くのだろうな、と思う。
ボクはそのバイト先に行ったことはないけど、彼女がやめない理由は他にもあるだろうし、もしかしたらその上司は悪の温床ではないのかもしれない。分からないけれど、まずボクが今できるのは彼女の気が済むまで話を聞いたり見守ったり、生ビールを一緒に飲んで美味しいおつまみをもぐもぐ食べることなのだ。
「とりあえず、この鶏皮は最高だから、善!」
と、だんだん訳分からなくなってきた酔っぱらいの彼女をみてボクは、″今のキミもなんだかんだ可愛いから、善!″とひっそり思っているのである。