ね。

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「善悪なんて人それぞれ、っていうけどさー、やっぱり腹立つよねー。なんであーいうのが善いとされちゃうんだろ?全くおかしな世の中だよー!」
と、大声で彼女は一気に言った。
かなりお怒りで、生ビールを飲むペースがいつもより早い。


バイト先でイヤなことがあったらしく、詳しくは話してくれないが、彼女からみると悪人にしかみえない上司が、周りの従業員には人気で、善人とされているようだった。
ボクからすると、彼女はかなり真面目で優秀だ。大抵のことはこなすし、基本的に優しくて親切で…と、善人の鏡のようなタイプ。しかし、バイト先での彼女は周囲から浮いていて、いつも悪者扱いされてしまうらしい。特に、その上司がみなを使って彼女を陥れている…みたいな、なんだか超絶ブラックというか、なんで未だにそのバイトを彼女が続けているのかが不思議でたまらない。


「なんかさー、やめたいけど、やめると負けた気になっちゃうんだよね。あいつ以外はいい人なんだよ、たぶん。あー、悪の温床めー、いなくならないかなー。」
と、ブツブツ言いながら鶏皮を食べる彼女は、こうやって発散してまた明日バイトに行くのだろうな、と思う。
ボクはそのバイト先に行ったことはないけど、彼女がやめない理由は他にもあるだろうし、もしかしたらその上司は悪の温床ではないのかもしれない。分からないけれど、まずボクが今できるのは彼女の気が済むまで話を聞いたり見守ったり、生ビールを一緒に飲んで美味しいおつまみをもぐもぐ食べることなのだ。



「とりあえず、この鶏皮は最高だから、善!」
と、だんだん訳分からなくなってきた酔っぱらいの彼女をみてボクは、″今のキミもなんだかんだ可愛いから、善!″とひっそり思っているのである。



4/27/2026, 2:30:15 AM