ね。

Open App
3/13/2026, 5:07:30 AM

彼は、本が好きだった。
知らないことをたくさん学べるから。
この狭い場所にいても、本を読むだけで彼の世界は拡がった。


彼は、歩くことができなかった。
いつも病室のベッドの上で過ごしていた。
本を読むことだけが唯一の楽しみだった。
食事をする時間さえ惜しんで、彼は本を読み続けた。


本は、病院の隣りにある小さな図書館のものだった。
毎日毎日、彼の家族が様々な本を借りてきた。
おかげで彼はたくさんの知識を得たのだった。



📖📖📖



あるとき、彼は珍しく部屋の外に出たい、と言った。
歩けない彼は、ベッドから動くことをずっと頑なに拒んでいた。
しかし、いま読み終えた本に出てきた、春の訪れを感じてみたくなったのだ。


彼は、家族と共に車椅子で病院の庭へ出た。
初めて感じる空気やにおい。
風が優しくほおをなで、太陽の光が身体をあたたためた。
鳥がさえずり、木々がゆれている。



ああ 美しい
ああ なんて 素敵なんだ
ああ…


彼の目から涙がこぼれ落ちた。


彼は、
外の世界をもっと知りたい、と思った。

3/12/2026, 4:32:16 AM

平穏な日常があって
その中に
大波小波があって
ざぶんざぶざぶと揺らされて

また
平穏な日常になって
ゆるりゆるりと過ごしていたら
また
ざっぶ~んざっぶ~ん
ざぶざぶさぶと波がきて

必死に沈まないようもがいたり
諦めてぽっかり浮かんだりしていて
気づいたら
また
ゆるやかな平穏な日常になっていて



そんなことの繰り返し

3/11/2026, 7:40:43 AM

愛と平和、って、たいそう壮大なテーマのように思いがちだ。(ボクだけ?)

でもさ、難しく考えなきゃ、あちらこちらに、愛と平和はあるんだ。



まずさ、
朝、目が覚めたこと
おはよう、と言える人がいること。


そんな些細かもしれないことも、
愛と平和、なんだよ。(と、ボクは思うんだ)



道行く子どもたちの元気な笑い声や、
道端の小さな草花たちや、
空を高く飛ぶ鳥たちの様子や、
気持ちよく吹く風や、
ふわふわと浮かぶ雲や、
どこかの家から香る、美味しそうなカレーの匂いや、
仲良く歩く老夫妻の様子や、


世の中には、たくさんたくさん
愛と平和が、あるんだよ。




画面の中で起こっている、悲しい出来事は、今ボクの目の前で起こっていなくて、知ることは必要かもしれないけど、ボクは(ボクたちは)必要以上にその恐怖を受け入れなくていいんだ。



ずっと穏やかでいられたらよいけど、いろんな経験をするのがこの人生。
その中で、愛と平和の世界の方をボクは日々選び続けるんだ。





3/10/2026, 6:26:33 AM

崖から後ろ向きに飛び降りた。
一瞬ふわり、と浮いたような気がしたが、飛べるわけなく、海へ海へとボクは落ちていく。 


空がみえた。
過去の過ぎ去った日々もみえてきた。



思ったより怖くなかった。
むしろ、なぜかあたたかい光に包まれているような感じがした。






なかなか海に届かない。
下を向こうと首を傾けた時、『ぎゅん』という音と共に、身体が浮いた。


落ちていくはずだったボクの身体は、高く高く空へと昇っていく。
何かに守られてるのが分かるが、その姿はみえない。みえないけれど、それはもう大丈夫だ、とボクに伝えてくれているのを感じる。





ボクにはたった一つの気がかりがあって、それはさっき落ちていくときにみえた過ぎ去った日々の中にあったのだけれど、今となってはもうどうでもよくなっていて、ふわりふわりと浮きながら、今はもう本当に身を任せていればいいんだ、とハートから安心したボクは、ゆっくりと目を瞑った。





3/8/2026, 10:34:53 AM

『ハッキリ言ってさ、お金より大事なものしかないよね!!!』
彼女が生ビール片手に、いきなり叫んだ。


ボクも酔ってはいたけれど、彼女の大声に恥ずかしくなって周りをキョロキョロ見回した。 
隣のテーブルのカップルは、突然叫んだボクの彼女の様子に、最初は呆気にとられていたけれど、女性の方が飲んでいたカシスオレンジを高々と掲げて、
『そーだ、そーだー!!!』
と、楽しそうに大声を出した。



それにつられて?、なぜか店内の至るところで
『そーだ、そーだー!!!』
の叫び声の嵐である。


なんだか楽しくなって、ボクたちは
『そーだ、そーだー!!!』
と歌うように叫びながら、おのおのの飲み物を飲み干した。



…とはいえ、最後には皆、ちゃんとお会計をして、それぞれの帰る場所へ向かう。


なんだかなあ、この世は面白い。


Next