彼は、本が好きだった。
知らないことをたくさん学べるから。
この狭い場所にいても、本を読むだけで彼の世界は拡がった。
彼は、歩くことができなかった。
いつも病室のベッドの上で過ごしていた。
本を読むことだけが唯一の楽しみだった。
食事をする時間さえ惜しんで、彼は本を読み続けた。
本は、病院の隣りにある小さな図書館のものだった。
毎日毎日、彼の家族が様々な本を借りてきた。
おかげで彼はたくさんの知識を得たのだった。
📖📖📖
あるとき、彼は珍しく部屋の外に出たい、と言った。
歩けない彼は、ベッドから動くことをずっと頑なに拒んでいた。
しかし、いま読み終えた本に出てきた、春の訪れを感じてみたくなったのだ。
彼は、家族と共に車椅子で病院の庭へ出た。
初めて感じる空気やにおい。
風が優しくほおをなで、太陽の光が身体をあたたためた。
鳥がさえずり、木々がゆれている。
ああ 美しい
ああ なんて 素敵なんだ
ああ…
彼の目から涙がこぼれ落ちた。
彼は、
外の世界をもっと知りたい、と思った。
3/13/2026, 5:07:30 AM