″あなたの願いを叶えます″
店の看板にはこう書いてあった。
私は、幼い妹と共に店のドアを開けた。
中には、古びた机と椅子が二脚あるだけで、机の上には紙が1枚とペンが置いてあった。その紙に、願いを書くのだ。
私は妹を膝にのせ、椅子に座った。
ペンを持つのは久しぶりだ。緊張もあって、文字を書く手が震える。
幼い妹は、私の顔を心配そうに見た。
「大丈夫。また、お母さんに会えるからね。」
私は、できるかぎり落ち着いた声で妹に伝えた。うん、と彼女はうなずいた。
母が天国にいってから、幼い妹は毎日毎日泣き続けた。母が死んだことも、もう2度と会えないことも、彼女には理解できなかった。なぜ突然いなくなってしまったのか、まだ幼い妹には分かるわけがなかった。
この店の話を聞いたとき、たった1つの希望の光がみえたような気がした。
死んでしまったものに、もう会えるはずはないと思いつつ、私は意を決して妹を連れ、ここに来たのだ。
願いを書き終えると、私たちは店の外に出た。そんなに時間が経ったようには感じなかったが、空には一番星がキラキラしていた。
「なんだか、おかあさんみたい。」
と、一番星を指さしながら幼い妹が笑った。彼女の笑顔をみたのは、久しぶりだった。緊張が解けた私も、空を見上げて微笑んだ。
優しくて、穏やかな、美しい夜だった。
「欲望のまま、生きるって、どんな感じだろ?」
『ん~、赤ちゃん的な生き方?』
「赤ちゃん?あはは、確かに、赤ちゃんは欲望のまま生きてる感じ、するねえ。」
『でしょ~。お腹すいたら、泣いて。オムツ濡れたら、泣いて。なんかわかんないけどイヤだよー、って泣いて。欲望のまま、って感じ。』
「ホントだねー。この人の抱っこじゃイヤだ!ってギャン泣きしたりするしね。」
『そうそう。逆に、大好きな人だったら、安心してにこにこ抱っこされたりするし。素直だよねー。』
「なるほど!欲望のまま生きるって、ある意味、素直に生きてるってことかもねえ。」
『だねえ。』
「あー、赤ちゃんに戻りたいよー。」
『あはは、素直になりたい!じゃなくて、赤ちゃん戻りたいの?』
👶💓👶💓👶
隣の席の女子高生がそんな会話をしている。確かに、大人と言われる年齢に近づいてくるにつれ、赤ちゃんのように欲望のまま生きるのはなかなか難しいのかもしれない。
″欲望のまま生きるって、素直に生きること″
そう捉えたら、みな年齢にとらわれず、欲望のまま生きられるかもしれないなあ、とぼんやり考える。
さ、残りのコーヒーを飲んだら帰ろう。
欲望のままに、今夜は素直に過ごそうか。
後回しにしていた映画を観ちゃおうかな。
あ、ポップコーン買って帰ろう。
新しい味出てるかな?
ひとり ひとり 歩きはじめる
ひとり ひとり それぞれの歩幅で
夜明けと ともに
起きた人々は
ひとり ひとり うたいながら
ひとり ひとり おどりながら
それぞれの歩幅で すすんでいく
行く先は
まだまだ遠いのか
遠くの街へは
どのくらいかかるのか
誰にもわからない
それでも
わたしたちは 歩み続ける
逃げたいことばかりで
逃げてきたけれど
また同じようなことが起きて
逃げるの繰り返し
逃げても逃げても
現実は変わらない
変えるのはなにか?
なにを変えなくてはならないか?
本当のわたしは
分かっている
そろそろ
覚悟を決めるときだ
君は今 どこにいるの?
あの日 命の火が消えてしまった君は
ごめん
気づかなかったよ
ずっと そばにいたんだね
ずっと 守っていてくれたんだね
君は
ずっと ここに いてくれたんだね