″どこにも書けないこと、をどうぞ″
と、ノートの表紙に書いてあった。
古びた喫茶店の一席に、このノートはひっそりと置いてある。
ページをめくると、
「わたしは ずっと 怒っている
わたしが ずっと 生きていることに」
と、書いてあった。
見覚えのある、美しく整った文字だった。
これは、彼女が書いたものだ。
ボクは、コーヒーをひとくち飲み、大きく深呼吸をする。
そして、もう一度、書いてある文字を読む。
「わたしは ずっと 怒っている
わたしが ずっと 生きていることに」
天国にいる彼女は、
もう怒ってはいないのだろうか?
いまは、
穏やかに笑っているのだろうか?
ボクが死んだら
この時計の針は
止まるのだろうか
ははは
止まるわけないか
この時計の針は
電池が切れるまで
ずっと ずっと
動き続けるだろう
そういうものだ
弟は、
大好きなものが目の前にくると、
たちまち色が変わる。
ホントに不思議だ。
色が変わるのに気づいてるのは、
姉である私だけ。
ちなみに、
どんな色に変わるかというと…
お母さんは、ピンク
お父さんは、みどり
おばあちゃんは、あか
おじいちゃんは、あおみどり
お兄ちゃんは、きいろ
そして
私が目の前にいくと、
なんと、にじいろに変わるのだ!
(なんか特別感があって嬉しい)
弟はまだ産まれて間もないし、きっと溢れる思いを身体全体で表してるんだろうなあ…
と、私は勝手に思っている。
私の大切な大切な弟は、
本当に見ていて飽きないのである。
初めてkissをしたのは、飼い猫だった。
名前は「トラ」といった。
トラ柄だったから母がそう呼び始め、家族みなに定着しのだが、いまおもえば相当ベタな名付け方だな、と思う。
トラは、いつも私の側にいた。
勉強するときも、寝るときも。お風呂に入っているときでさえ、風呂場のドアの横に丸くなって待っていたのだから、本当に私のことが好きだったんだな、としみじみする。もちろん、私もトラのことが大好きだった。
そんなトラも22年も生き、寝てばかりの毎日になったある夜、私はいつものように布団で本を読んでいた。
トラは、本のページをめくるたび、少しだけ耳を動かした。その様子が愛おしく、私はトラの背中を優しく撫でた。するとトラは、私の方に顔を向け、真っ直ぐ私の目を見つめてきたのだった。
しっかり目を開けたトラをみるのは久しぶりで、随分歳をとったというのに、キラキラした美しい瞳だった。
私はたまたま恋愛小説を読んでいたこともあり、見つめあうわたしたちは、なんだか恋人同士のようだな、と笑ってしまった。
私が目を瞑ると、まるでkissをするかのように、トラが鼻を私の唇にちょん、とつけてきた。その仕草が可愛くてたまらなくて、私はトラをぎゅっと抱きしめたのだった。
数日後、トラはこの世を去ってしまったが、あの日読んでいた恋愛小説はいまも本棚にあり、その背表紙をみるたび、大好きだったトラを思い出すのである。
ボクはいつまで生きるのだろう
みんな死んでいくけれど
どうやらボクは死なないらしい
うっかり口にしてしまった
この池の水は
どうやら不死の薬らしくて
それに気づいたのは
200歳をこえたあたりで
どうやらボクは死ねないらしい と
1000年先も
その先も
ずっとずっと
生き続けなくてはならないなんて
この池の水を
誰か飲んでくれないかな と
考えたりもしたけれど
ボクと同じ思いをするならば
この池なんてなくなってしまえ と
こころから おもうのだ