″このまま ずっと 夢を 見ていたい″
キミはそういって目を閉じたね。
ちいさな花が大好きなキミは、ひらひら舞う蝶のように、いつも軽やかに歩いていたね。華やかでとびっきり明るいのに、時折見せる悲しげな表情が、ボクはとてもとても愛おしかったよ。きっと、キミは、自分が思ったより早くいってしまうのが分かっていたんだね。
目を瞑ったあとも、しばらくキミのまわりにはあたたかさがあった。まだここにいるのかもしれない、と、ボクはキミの手をとったんだ。まだ柔らかな温もりがあったよ。だんだんと体温が下がっていく。キミの存在が消えていく。
身体はここにあるのに、この中にはもう、いないんだ。
夢から覚めたキミは、今どこにいるのだろう?
頬をつたう涙をぬぐいながら、ボクはおもった。
おかあさんのお腹の中に入ったとき、
ずっとこのままがいい、とおもった。
ものすごく心地よかったから。
産まれなきゃならなくなったとき、
本当に出たくない、とおもった。
外の世界がものすごく怖かったから。
はじめて目を開けたとき、
そこにはぼんやりした光が見えた。
ものすごく優しい光たちだった。
わたしの名前を知ったとき、
じわじわてあたたかな気持ちになった。
そこにあったのは、
ものすごく深い深い響きだった。
∞∞∞∞∞
成長するにつれ、
いろいろなことを忘れ、
いろいろなことを覚えていく。
ずっとこのままがいい、と願っても
ずっと同じでいることはなく、
わたしは
わたしたちは
日々変化していく。
変わっていないようでも、
一瞬一瞬違っている。
ここにいるけど、いない。
ここにいないけど、いる。
それがこの世の仕組みだ。
わたしの物語を終えたら、
また新しいわたしの物語が始まるのだろうか。
そうやって、
わたしは
わたしたちは
受け継がれていくのだろう。
たぶん。
目が覚めたら、ボクは石ころになっていた。雪がチラホラと降ってきた。
うぅ、石ころでも、寒いんだな。
…そういえば、
忙しくてたまらない毎日で、とことん疲れ果てたボクは、もう動きたくないよ、、、と、思いながら眠りについたっけ。
…いや、だからって、石ころなのか?確かにさ、動かなくてすむけどね。
そういう意味じゃなかったんだけどなあ…
雪は降り続いている。
寒さが身に染みて、ボクは泣きたくなった。石ころでも寒いし、泣きたくなる。
人間と何ら変わらないじゃないか。
そこに、ちいさな女の子が通りかかった。赤いマフラーをした可愛い子。
ボクを見つけたその子は、ボクをそっと手の中に包んでくれた。
ああ、あったかい。
人の手って、こんなにあったかいんだ。
女の子の手の温もりに安心し、ボクは再び眠りについた。
きょう
うまれたこどもたちが
20さいになるころ
このよは
どうなっているのかな
みんな
おだやかに
にこやかに
いきているだろうか
わたしは
いきているかな
たびだっているかな
夜更けに お散歩をしていたら
ふうわり と光るものが 歩いてきた
それは 楽しげに
ふわふわ と 宙に浮き
ボクの 横を ゆらゆら
と 通りすぎて いった
すれ違うとき
ミントキャンディ みたいな
涼しげな 匂いがした
空を 見上げると
今夜は 三日月
″さっきの光と 空の三日月を
パズル みたいに 合わせたら
まんまるに なるなあ″
と おもった
お月さま も
ちょっと だけ
お散歩したかった のかも しれない