「バツイチなんですか?」
初めて会った人にいきなり言われて驚いた。
「はい、そうですけどどうして…」
「いや顔に書いてあったんで」
聞くのは失礼かと思ったけれど、わざわざ顔に書いてあるってことは何か意味があるのかとも思い…とのこと。
さっきからすれ違う人々がちらちら俺を見ていたのはそういうわけか。トイレの鏡で確認。ほんとだ、右頬に薄墨くらいのかんじで「バツイチ」文字通り。
なんでだよ。書いた覚えも書かれた覚えもない。
まぁ別に事実だしな。隠す気もないけど。
その後も時々聞かれはするが、そこから根掘り葉掘りプライベートを詮索されることも特にない。自分としては深く長いストーリーが横たわってはいるけど、他人からしたら「そうなんですね」ってだけなんだよな。
気をつけて道行く人々の顔をみてみたら、時々同じように「バツイチ」さらに「バツ2(3や4も)」と頬に表示されてる人がいて、思ったより数も多かった。
人の一属性に過ぎないことだよな。別にデメリットもなくて気にならなくなった。
思えば結婚すると人は自分から指輪をして表示するよな、昔から。あれと同じか。内容は逆だけど。IQとか年収とか、余命とかが表示されるよりマシか。いや、意外とそれも気にならなくなるものかもな。
本人にとって重要なことでも、他人の属性なんて「そうなんですね」って程度のことなんだろう。
余計な関心をもって勝手なジャッジしなくなるなら、日替わりでみんな何か表示されてみるのもアリかもな。いい出会いがあるかもだし。
「不条理」
#365
『全米が泣いた』
「泣かないよ」
#364
いぬがこわい
いぬをなでるのはいやだ
いぬを飼うのもいやだ
いぬとおさんぽしたくない
家に帰っていぬがとびついてきたらいやだ
しっぽをふってうれしそうなのもいやだ
おすわり、と言ってちょこんとすわるのも
ぜんぶぜんぶいやだ
なかよくなりたくない
なかよくなって
はなれられなくなって
そしてお別れするのがいやだ
こんなに大好きになって
二度とあえなくなるなんて
だからいやなんだ
だからこわいんだ
「怖がり」
#363
夕闇せまる中 車を走らせる
人家もない荒涼とした大地
はじめての道 はじめての場所
日没前には辿り着きたい
あと何マイル 直進です
時折りナビの音声が響く
両脇の枯れた茂みから
生き物が飛び出しはしないか
日暮れと同時に目的地に到着
ロッジに荷物を運び入れて
軽く夕食を済ませる
他の客もまばらな時期
ロッジにしか光はない
大きな蛾が自販機に群れている
もう一度車に乗り込み
光から離れた場所まで
人影はないか獣の気配はないか
緊張しながら車を降りて歩く
聞き慣れない虫の声
少し先は断崖
月もない夜 地面以外の全てが空
滲むように白く光る空のドーム
星座?一等星?もう何もわからない
溢れる星々で視野がいっぱいに満たされる
お空に果てはあるの?と尋ねる
絵本を思い出す
果てはあるから夜は暗いんだよ
果てがなかったら星でいっぱいだよ
なんてことだ
お空に果てはなかったのか
こんなにも星だらけじゃないか
「星が溢れる」
#362
安らかなのは
もう迷いも不安もなく
未来を案じることなく
全てを受け入れ
瞼を閉じようとしているから
「安らかな瞳」
#361