tifon

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6/2/2023, 11:01:56 AM



嘘をつき続けると
どこかで辻褄が合わなくなる

駆け引きで得をしようとすると
気の休まる暇がない

相手の顔色を窺おうにも
結局人の心などわかるはずもない

損をしても 馬鹿を見ても
貧乏になったって

自分そのままであることが
いちばん楽なんだから
後悔することもない

自分が納得できる
そう生きるしかない




「正直」

#123

6/1/2023, 11:00:22 AM



透明の窓つき傘はレモン色
くるまの絵の長靴は水色で
レインコートもお揃い

雨の日のおでかけは特別
雨の日だけの格好よさ

傘をくるくる回して
水たまりでバシャバシャ

みみずにアマガエル、かたつむり
青い 赤い 白い あじさい

くちなしの花びらはふわふわ
ポッケにいれていいにおい

右足ドカン♪ 左足ドカン♪
ドカンドカンドカン🎶
歌いながらロボットみたいに歩く

おかあさんたちは
梅雨はいやね、というけど
ぼくは大好き
ドカンドカンドカン🎶




「梅雨」

#122

5/31/2023, 10:56:37 AM



「明日、校長先生が私たちに直接会って話をしてくれるって!」親友と私は驚きで興奮していた。まさか本当に時間をとってもらえるとは思っていなかったから。本当の話をちゃんと聞かせてもらえると思うと、期待と緊張感で2人とも頬が紅潮している。

つい先日、私たちが尊敬し慕っている先生方が数人突然学校を辞めることになったと発表があったのだ。とても親身な指導をして下さる、大好きな先生ばかり。訳を聞いても、辞めることは本意ではなく校長の意向であること、責任を持って私たちへの指導を続けたかったこと、それくらいしか話せないようだった。

私と親友は、このまま何もできずうやむやの状態で先生方が学校を離れてしまうことを受け入れたくなかった。決定を覆してほしいくらいだが、それが難しいのならせめて納得のいく説明を受けたい。そう思ってダメ元で校長先生に説明の機会を作って欲しいと訴えていたのだ。
それが、明日の始業前に実現することになった。

私たちは、感情的にならずに、礼儀正しく話そうと決めていた。子どもっぽい振る舞いでは話し相手と認めてもらえないと思ったから。
来賓も訪れる校長室は立派な設えで、初めて招き入れられた私たちは上品な調度を見ただけで身体が固くなってしまった。でも、校長はとても打ち解けた雰囲気の笑顔で迎えてくれ、お茶菓子まで用意してくれていた。

今朝はとても寒いこと、普段より早く登校するのは大変だったろうこと、部活の話、日常生活の話…温和な口調で滑らかに次々と話題を繋げられているうちに、むずむずと、違う こんな話をしたいのじゃない、という思いが募ってくる。そろそろ本題に入るのだろうという思いが、何度も逸らされていく。もうすぐ始業時間がくる。

「あの!先生方がお辞めになるというお話ですが!」思い切って切り出す。ああ、その話は僕も残念に思っているんだ、優秀な方ばかりで、失うのは大きな損失だからね、でも我々もよく話し合った結果だから、残念がってばかりもいられなくてね、大丈夫だよ君たちの教育に支障が出るようなことにはしないよう精一杯やるから安心していなさい、、、、もうこんな時間か、朝礼が始まるねほら教室に戻りなさい、君たちと話せて良かったよ、君たちにはとても期待しているよ、またいつでも校長室にいらっしゃい…。

気づけば「貴重なお時間をいただきありがとうございました」などと呆けたことを行儀良くお辞儀しながら口にし、部屋を後にしていた。
ダマサレタンダ、初めから私たちに本気で説明する気などなかったんだ、機会をつくってもらえただけですっかり信用し切って…ガチガチに緊張していた私たちをうまく煙にまくことなど何でも無いんだ…悔しいくやしい…涙が出た。

校長への信頼や尊敬の念はすっかり失って、世の中にはこういう話術や手管に長けた人物がいるということを心に刻んだ。
疑い深くなった。笑顔で饒舌な人物を警戒するようになった。
大事な教育をしてもらったとも言えるが、ざらりとした感触の 苦い経験…。




「天気の話なんてどうだっていいんだ。」

#121

5/30/2023, 11:37:23 AM



夜みんなが寝静まったころ
懐中電灯を手に
コテージの外に出た

小さなカエルがコロコロと
綺麗な声で鳴いていて
空には天の川
心地良い冷たい風が吹いてくる

遠くでハイエナが
ウーウウ、ウッ と
仲間を呼ぶ独特の声

カエルの声に誘われて
水辺にそっと近づくと
傍の茂みで黒い影が動く

ライトで照らすと、
あっ赤ちゃんカバ🦛だ!
かわいい!…ひとり…で…?
と思うと同時に背筋が凍る

暗い茂みの奥から
巨大な黒い塊が走り出してくる
お母さんカバだ!!

あの巨体に激突されたら
あの大きな口で噛みつかれたら

逃げなきゃ…はやく…
闇の中 足もとも定かでないが
とにかく走るんだ、逃げろ!!

無我夢中で走りつづけ
フシュー!フシュー!という
荒い息づかいが遠のいていった

子どもから離れさえすれば
襲うつもりはなかったのだろう

昼間 のどかな池の水面から
目と耳と鼻先だけが出ていた
あの姿とはかけ離れた恐怖

未だかつてあの時くらい
必死に走ったことはない



「ただ、必死に走る私」

#120

5/29/2023, 11:00:05 AM



幼稚園のおべんとう
わたしのだいすきなそぼろごはん
ピンクと黄色と茶色と緑
おかあさんが早起きをして
わたしに作ってくれた

だから今日はとっても楽しみ
朝からずーっとお昼が楽しみ

待ちに待ったお昼のじかん
かばんからとりだしたお弁当
両手に持って駆け出した

あっ…つまづいた瞬間
お弁当箱は手から離れて
さかさまに床に落ちた

わたしのだいすきな、
きれいな色の、
おかあさんが早起きして…

手渡してくれたときの
おかあさんのにっこり笑顔

急いでお弁当箱にかき集めて
胸に抱き締めトイレで泣いた

ごめんね、おかあさん
ごめんね、おかあさん

おかあさんの気持ちを
ぐちゃぐちゃにしてしまったようで

取り返しのつかない
悲しくて震える思い

泣きながら帰ったわたしを
おかあさんは抱き締めてくれた
いつでも作ってあげるから
あやまらなくていいのよ、って




「ごめんね」

#119

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