「半々袖!」
それは言葉を覚え始めたあの子が
ノースリーブにつけた名前
鞄はパリラン 魚はブリラ
両親まとめて アダーダン
世界を自分なりに理解していく
世界を自分なりに名付けていく
そんな様子が新鮮で 愛しい
ものの名前をたずてねは
「どうやってその名前になったの」
「誰がつけた名前なの」と言う
ずっと昔の人たちだよ
よその国では違う名前だよ
どんな人がつけたんだろうね
周りの人もそれを覚えてくれたんだね
世界にはもともと
名前も決まりもないこと
たまたま名付けられて
多くの人の間で根付いたこと
そんなふうに育ったあの子は
今も人間社会の不思議さを
不安定さを多様さを
飽きることなく探求してる
一生退屈など知らぬげに
「半袖」
#118
天国ってどんなとこ
地獄ってどんなとこ
到底わかりっこない
死んだ後のこと考える暇があるなら
いま生きることに集中するんだ
いまを豊かにすることだ
「天国と地獄」
#117
帰り道の夕空に
輝く金星そして細い細い月
朝寝坊して大遅刻
見上げた青空 白い三日月
塾へと急ぐ道の向こう
目に飛び込んだ 大きな満月
眠れない夜の人気ない街
見慣れぬかたちは 更け待ち月
いつもそこにあるから
いろんな場面とともにある
ずっと見ていて
地球とわたし
「月に願いを」
#116
それはあるんだ
たまたま知らずに済んでいても
悲しみだけがつづくこと
泣きながら夜を明かすこと
明日が来なければいいと願うこと
絶望だけがそこにあること
ただただ、雨が降りつづけること
そしてその後に
いつか
ほんとうの安らぎが満ちること
「いつまでも降りやまない、雨」
#115
この世界に
生まれたばかり
何もわからない
ここは安全?
この人はだれ?
あの音はなに
寒いのはいや
暗いのはいや
抱きしめて
優しく歌って
あたためて
大丈夫 大丈夫
何もこわくないよ
おいしいね
あたたかいね
気持ちいいね
大きくおなり
一緒にあそぼう
たくさんの
楽しいことが待ってるよ
みんなあなたを愛してる
いつもそばにいるから
安心して ぐっすりおやすみ
「あの頃の不安だった私へ」
#114