夜みんなが寝静まったころ
懐中電灯を手に
コテージの外に出た
小さなカエルがコロコロと
綺麗な声で鳴いていて
空には天の川
心地良い冷たい風が吹いてくる
遠くでハイエナが
ウーウウ、ウッ と
仲間を呼ぶ独特の声
カエルの声に誘われて
水辺にそっと近づくと
傍の茂みで黒い影が動く
ライトで照らすと、
あっ赤ちゃんカバ🦛だ!
かわいい!…ひとり…で…?
と思うと同時に背筋が凍る
暗い茂みの奥から
巨大な黒い塊が走り出してくる
お母さんカバだ!!
あの巨体に激突されたら
あの大きな口で噛みつかれたら
逃げなきゃ…はやく…
闇の中 足もとも定かでないが
とにかく走るんだ、逃げろ!!
無我夢中で走りつづけ
フシュー!フシュー!という
荒い息づかいが遠のいていった
子どもから離れさえすれば
襲うつもりはなかったのだろう
昼間 のどかな池の水面から
目と耳と鼻先だけが出ていた
あの姿とはかけ離れた恐怖
未だかつてあの時くらい
必死に走ったことはない
「ただ、必死に走る私」
#120
5/30/2023, 11:37:23 AM