ウツロ

Open App
9/15/2024, 8:43:45 AM

蝋燭の様な人になりたかった。
周囲を明るく照らし、役に立ち、人々の癒しとなる存在に。
本能がそれでは足りないと、そうではないと爪を立てている。
害があるとわかっていても手放せないよう洗脳し、籠絡させろと。
煙草の様な人で在れと足を引っ張っている。
今では必死に、火事が起きることがないよう燃え尽きるのを待っている。

9/13/2024, 6:21:19 PM

社会人になると夜明けを忘れてしまう。
サンタクロースを待ち侘びて見た夜明け。勉学に励んで見た夜明け。語り合った友と見た夜明け。自由を求めて見た夜明け。
今では時間を数字でしか見なくなった。
朝の9時、昼の12時、夜の21時。
自身と同様、空も時刻によって瞬時に切り替わっていくように感じてしまう。
だからほんの少しだけ、窓の外に意識を向ける。
真っ黒な中に滲み出す白。あのグラデーションがそこにある。
決して忘却ではない。認識しなかっただけなのだ。
──確かにそこに、夜明けはあるのだ。

9/12/2024, 5:59:30 AM

内蔵された電池を消費させようと電源をオンにしたままにする人生にカレンダーほど必要のないものはなかった。いや、正確にはスケジュール帳や日記といった方が良いだろう。
機械化された1日、1週間、1ヶ月、1年。これといって特筆する様な予定も出来事もあるはずがなく、ページを開いたところで自身の空白な心境を目の当たりにするだけであった。
馴染みのペンを片手に日々の喜怒哀楽を表現し綴る楽しさを見出していたのは遠い昔。今とは関係ない、幼少期の習慣だった。どれだけカレンダーを重ねたとて抜けることのない厄介なものだ。
……そう、繰り返すだけの日常にこの習慣ほど必要のないものはない。
これで何度目だろうかと自己嫌悪に陥りながら、とっくに記入期間の過ぎた掌サイズのノートを手に取る。そして数秒後、ガタンと音を立ててゴミ箱が揺れた。