終わりにしよう
「終わりにしよう」
彼女はそう言って笑った。
なぜ、こんなことになってしまったのだろうか。彼女の背後に地面はなく、僕は彼女に銃を向けている。
「なんで、君が泣いてるのさ」
滲む視界で彼女の姿を捉えながら、一歩、彼女へと近づく。
彼女は下がることなく、むしろ一歩近づいてきた。
「私、転落死なんて嫌よ」
一歩、また一歩と彼女は近づいてくる。僕は後ずさることも出来ずにいた。
「ほら、あとは引き金を引くだけ。君ならできるよね?」
彼女の咲かせた花は、これまで見たどの花よりも綺麗で、凛々しかった。
泣かないよ
たとえ、1人だけ入賞できなくても。
たとえ、好きだった人が死んだとしても。
たとえ、明日生きているかすら分からない状態になったとしても。
だって泣いたら潰れるから。
いやでも認識してしまうから。
それならば泣かない。悲しくなどない、涙などでない。
そうして蓋をして、静かに少女は落ちてった。
枯葉
パキパキと枯葉を割りながら、箒で枯れ葉を吐く。
吐いた枯葉をまた割って、枯葉の残骸積み上げた。
吐いて、掃いて、履いて
掃除にはならなかったけれど、楽しかったのでヨシ
今日にさようなら
落ちていく日と、去っていく友人の背を眺めながら月を待つ。
この静かな時間が、終わりを感じるこの時が、一日の中で一番好きな時間だったりする。
たとえ作り物であろうとも、日も月も美しい。
たとえ機械であろうとも、友人がいるのは嬉しい。
もう終わった世界で、次の日が来るのを待つ。
今日にさようなら、明日におはよう告げるため、僕は今日も生き続ける。
お気に入り
お気に入りのものはずっとずっと大切にしておきたいけれど、大切にすればするほど壊れてしまう。
私には長持ちする使い方を知らないし、大切だと思う気持ちも本当は分かっているかどうかさえ怪しい。
私のお気に入りは、もしかしたら私に大切にされていないのかもしれない。
それでも、それでも私は、大切にしているつもりなのだ。
だから今日も、私は私のお気に入りを壊すのだ。