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手を繋いで

手を繋いで欲しい。それが彼女の最後の願いだった。
その願いを叶えたら消えてしまう彼女を消したくなくて、僕は最期まで彼女の手を握らなかった。

「そろそろ、いいでしょ?貴方の手で終わらせて欲しいの」

ベッドの上、横たわる僕に差し出された彼女の手を握ろうとして、力が抜ける。遠のいていく意識の中、不思議と後悔はない。

「酷い人。またこうなるのね」

何度死んでも、必ず逢いに行く。迎えに行く。そう約束して、これで何回目だろう?いつかは彼女を、解放してあげられるのだろうか。

「ずっと、ずっと待っててあげる。だからちゃんと、迎えに来てよね」

12/9/2024, 10:05:51 AM