やの

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9/16/2024, 2:02:49 PM

昔から雨が嫌いだった。
でも、なぜだか水たまりは好きで、幼い頃は長靴を履いてはバシャバシャと遊び回ったものだ。
理由は自分にも分からない。ただ、理不尽に己を濡らすものよりも安心できたのかもしれない。

それが今、大人になって逆になった。

水たまりは全て避け歩き、雨は甘んじて受け入れ傘もささず、ぼんやりと空を見上げている。
なんとなく、気持ちいいと感じた。

それは多分、隠したいことを隠さなくてもいいからだと思う。

大人になって思う。雨は都合がいいんだ。

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テーマ「空が泣く」

9/15/2024, 11:10:25 AM

また明日

それが最後のメッセージだった。

また、なんていつのことを思っていたんだろう。
君の描いた明日はまだ来ていないよ。

寝て起きて、寝て起きてを繰り返しても君のいない世界ばかりが続いていく。

気がつけば一年。今日は君が眠る場所へ行く。

失ってから気が付くなんて僕も馬鹿だったと思うよ。

毎日ずっと君からの最後のLINEを眺めみながら、喉をやくほど飲んで、泣き叫ぶんだ。


会いたいよ、明日が今なら、どれほど良かっただろうか。

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テーマ「君からのLINE」

9/14/2024, 12:34:52 PM

ひとりのひとを愛した。ただそれだけ。

燃えるような熱い恋、といえれば格好良かったかもしれない。私の恋は一方的なもので、ただの友愛だったのかもしれない。

けれど、どうしても。この世でたったひとりのひとを慈しみ、愛し、尊いと思えた。

だから、守りたいと思った。知られなくてもいい――なんて、独りよがりにも程がある。

「ねえ、まって」

不意に、あなたの声がする。

数事交わして、沈黙。嗚呼、そうか、私も、あなたも、好き同士だったのですね。

胸の奥が、かあっと熱くなる。全身の血が沸騰するような高揚感に足元が浮いてしまいそうだ。

ひとつの恋が結びあい、火を灯した始まりの日のことだった。

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テーマ「命が燃え尽きるまで」

9/13/2024, 12:04:53 PM

空腹に目が覚めた。
鈴虫が鳴き、リンリンと小さな声が絶え間なく聞こえてくる。どうやらまだ陽は登っていないらしい。遮光カーテンの外はまだ薄暗いようだ。

時間は――嗚呼、まだ早い。でも、腹が減った。
寝返りを打ち、深呼吸をひとつ。ふたつ。みっつ。

ぼんやりと天井を見遣り、目を閉じる。
空腹よりも重い瞼が落ちてきて、感覚も泥沼に沈んでいくみたいだ。

おやすみ世界。ぼくはまだ夢の中にいたい。


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テーマ「夜明け前」

9/12/2024, 10:55:11 AM

例えば、土砂降りの坂道を転がり落ちるような痛みさえも心地よかった。
なにもかも、すべての感覚を愛おしく思えた。

本気だった。

後ろ指を刺されても、影口を叩かれても、なんでもいい。
愛した人に笑ってほしくて、ただ悲しんでほしくなくて。

結果、君のとなりが僕じゃなくても全然いい。
だってこれは、最初で最後の本気の恋だったから。


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テーマ「本気の恋」

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