やの

Open App

ひとりのひとを愛した。ただそれだけ。

燃えるような熱い恋、といえれば格好良かったかもしれない。私の恋は一方的なもので、ただの友愛だったのかもしれない。

けれど、どうしても。この世でたったひとりのひとを慈しみ、愛し、尊いと思えた。

だから、守りたいと思った。知られなくてもいい――なんて、独りよがりにも程がある。

「ねえ、まって」

不意に、あなたの声がする。

数事交わして、沈黙。嗚呼、そうか、私も、あなたも、好き同士だったのですね。

胸の奥が、かあっと熱くなる。全身の血が沸騰するような高揚感に足元が浮いてしまいそうだ。

ひとつの恋が結びあい、火を灯した始まりの日のことだった。

- - - - - - - - - - - - - - - - -
テーマ「命が燃え尽きるまで」

9/14/2024, 12:34:52 PM