風がザワザワと
小鳥がピチピチと
小川はさらさらと
草はわさわさと
揺れて、踊って、歌っている。
だけれどそれは煩くない。
寧ろ私の心を落ち着ける。
誰にも邪魔されない、
私一人のまるで空間じゃないかのような空間。
薄目でぽぅっと空を眺めていたら、
涙がほろりと零れてきた。
この空間を
邪魔して欲しい人が、ここにいない。
いつものように眠っていたら
ゆさゆさ揺らして起こして欲しい。
前はそれが煩わしくて堪らなかったけれど、
今はそれが恋しくて堪らない。
お願いだから、帰ってきて。
風も子鳥も小川も草も、もちろん私も
貴方を拒まないから。
「大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?」
ありがとうじゃ足りないくらい、
あなたには沢山のものを貰った。
初めての胸の高鳴りも
初めての不安も
初めての恋という自覚も
初めての人のためのチョコレートも
初めてのキスも
初めての真っ白なドレスも
渡したもの全てを
愛で包んで何倍にもして返してくれた。
私はあなたに、何でそれらを返せばいい?
返したところでまた愛に変換してくれるでしょう?
「「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い出して何か言葉を綴ってみて」
雲が、薄く積もった雪のように足元に広がっている。
その隙間から微かに小さく街が見える。
見上げなくとも雲ひとつない青い空が
私の目にうつる。
私は雲より上に立っている。
足元の雲には小さくとも鮮やかな花々が咲いている。
足を動かす。土を踏む感覚がしない。
全身が軽い。どこまでだって飛んで行けそうだ。
でも、どこにも行きたくない。
ただここでのんびりと、順番が来るまで過ごしたい。
そうか、ここが楽園か。
ゆっくり雲に腰をおろし、
眩しく輝く太陽に目を細めながら、
私が主人公だと言わんばかりに両手を広げた。
「楽園」
風に乗って会いに行く
未だ見た事ない君へ。
皆と別れて風の向くまま
誰か分からぬ君のもと。
悲しい、
泣きたい、
後ろ向き。
そんなとき。
君の足元に黄色い花を咲かすかだろう。
待っていて。
今行く。
もう着く。
大丈夫。
下を向いた、
涙を落とす、
そんなとき。
いくら小さくてもはっとするような
黄色い花を。
君の潤んだ瞳に送るだろう。
「風に乗って」
まばたきの間にあいつは
俺の額に優しいキスを落として羽ばたいていった。
「刹那」