雲が、薄く積もった雪のように足元に広がっている。
その隙間から微かに小さく街が見える。
見上げなくとも雲ひとつない青い空が
私の目にうつる。
私は雲より上に立っている。
足元の雲には小さくとも鮮やかな花々が咲いている。
足を動かす。土を踏む感覚がしない。
全身が軽い。どこまでだって飛んで行けそうだ。
でも、どこにも行きたくない。
ただここでのんびりと、順番が来るまで過ごしたい。
そうか、ここが楽園か。
ゆっくり雲に腰をおろし、
眩しく輝く太陽に目を細めながら、
私が主人公だと言わんばかりに両手を広げた。
「楽園」
4/30/2023, 10:51:41 AM