花とコトリ

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1/30/2026, 2:49:03 AM

「 I LOVE … 」


1月の終わり、透明な風

いつからだろう。
好きという言葉が、こんなに静かな重みを持つようになったのは。


ショパンの光

ピアノの蓋を開け、使い古されたショパンの楽譜を広げる。
指先が触れる紙のざらつき。何度もめくられたページの端は少し丸まって、かつての私の熱情を記憶している。音符たちは、冬の光の中で銀色に輝き漂う。


琥珀色の時間

キッチンでカフェオレを淹れる。
白い湯気が立ちのぼり、窓をうっすらと曇らせる。ミルクの甘い香りが、ささくれだった心をゆっくりと整えていく。


確かな体温

足元では、黒い毛並みのクロが寝息を立てている。
私が名前を呼ぶと、彼は片目だけをあけて、しっぽでトンと床を叩いた。


「I LOVE…」
それは声に出すまでもない、この静寂そのもののことだ。

1/23/2026, 2:04:17 PM

「こんな夢を見た」

うたたねの縁側で、こんな夢を見た。

空が、見たこともない虹色のグラデーションに染まっている。絵具を水に溶かしたような、淡くて、どこか淋しい光の層。

見上げると、銀色の鱗を光らせた大きな魚たちが、静かに空を泳いでいた。尾びれが空気をなでるたび、きらきらと光の粉が降ってくる。

足元には、いつかの冬に旅立ったユキがいた。雪のように真っ白な毛並みは、触れると柔らかく、懐かしい温もりがある。ユキは喉を鳴らすこともなく、ただ隣に座って、細めた瞳で不思議そうに空の魚を追っていた。

「きれいだね」
私がつぶやくと、ユキは一度だけ小さく耳を動かした。

次の瞬間、ユキは音もなく立ち上がり、すうっと宙に浮いた。まるで重力がないかのように軽やかに、空の魚たちと同じ速さで、優雅に泳ぎ始める。私もそれに続き、ふわりと体が持ち上がった。

ユキと私は、虹色の空を銀色の魚たちと並んで泳いだ。冷たいはずの風は心地よく、きらめく鱗の粉が頬をなでる。ユキが私の方を見て、小さく「ミャッ」と鳴いた。その声は、遠い昔の記憶のようにも、明日への招待のようにも聞こえた。


目覚めると、部屋には冬の午後の、ただ白い光が差し込んでいた。

1/19/2026, 2:17:22 PM

君に会いたくて

10月4日。雨。
古いアップライトピアノの前に座る。指先が鍵盤に触れるたび、湿った空気に音が溶けていく。ショパンを弾き始めると、足元でクロが小さくあくびをした。黒い毛並みが、影のように部屋の隅に馴染んでいる。

10月12日。晴れ。
君がいなくなってから、世界はずっと静かだ。
でも、クロの呼吸や、時折鳴るピアノの残響の中に、君の気配を探してしまう。
「元気?」なんて、心の中でつぶやいてみる。
答えは返ってこないけれど、窓から差し込む光が、君の優しい眼差しに似ていると思った。

1/10/2026, 8:06:46 AM

三日月と、クロの背中

十月の夜は、薄い硝子を一枚隔てたような静けさがある。
空には、爪先でひっかいたような鋭い三日月。
銀色に研ぎ澄まされたその光は、どこか遠い誰かの落とし物のようだ。

ベランダに出ると、クロが足元に鼻先を寄せてくる。
「月がきれいだね」と声をかけると、クロはただ、ふさふさした尻尾を一度だけゆっくり振った。
彼の黒い毛並みが、月の光を吸い込んで少しだけ青白く縁取られている。

私たちは、言葉にならない感情の断片を、夜の風に溶かしてやり過ごす。
明日には忘れてしまうような、ささやかな寂しさと、確かなぬくもり。
三日月は少しずつ傾き、クロの背中の上で、静かに夜を深めていった。

1/7/2026, 1:14:34 PM

雪、光の粒

1月7日。朝。
カーテンを開けると世界が新しくなっていた。
昨日までの景色を真っ白なキャンバスに戻して、「さあ、今日は何を描く?」と問いかけられているみたいだ。
冷たい空気さえ、心の中を洗ってくれる気がする。

午後。
愛犬のクロは、庭の雪に大はしゃぎだ。
黒い弾丸のように駆けまわり、冷たいはずの雪に鼻先を突っ込んでいる。
顔中を真っ白にしてこちらを振り返るクロの瞳が、キラキラと光っている。
「楽しいね」と笑うと、世界がもっと明るくなった。

夜。
冷えた体を温めるスープの匂い。
私の足元で、雪の夢を見ているのかクロの足がピクピク動いている。
明日の朝、まだ誰もいない真っ白な道に、二人で最初の足跡をつけに行こう。

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