彼は偉大だった。
全ての人が彼を崇め畏れ称えた。
彼はそれらを全く相手にしなかった。
どこまでも強く、
どこまでも脆かった。
彼はすぐに消えてしまうほど弱かった。
だが海を行き山を行き彼は見違えるほど別人になった。
もとの弱さなんてなかったように。
彼は弱かったが泣かなかった。
強くなり帰った時。
彼は泣いた。
感情的ではない。
まるで“そうあるべき”と教えるように。
そして空中に霧散した。
彼の匂いが地にこびりつき人々はあの一瞬を焼き付けた。
二度と忘れないように。
教訓を。
[涙の理由]
あなたの好きなことはなんですか。
へえ、それはとてもいいですね。
ではあなたの趣味はなんですか。
なるほど、では今度いい所を紹介しますね。
あとは…あなたの嫌いな物はなんですか。
ああ、人でもなんでもいいですよ。
ふむ……なるほど。
最後に。
本当にそれはあなたが思っていることですか。
仮面なんて被らなくてもいいんですよ。
……ふふ、すみません、失礼でしたね。
気を取り直して。
あなたにピッタリの場所が分かりました。
でもあなたは否定するかもしれません。
そんなあなたを説得するのも私の役目。
あなたは私からするととても良い人間でしたよ。
では、そこのカフェで話しましょうか。
飲めないものやアレルギーはありますか。
…なるほど、ありがとうございます。
私は……コーヒーにしましょうか。
隣座りますね。
[コーヒーが冷めないうちに]
いつか空を飛ぶんだ。
雲の上には海よりも青い空があるんだって!
その大空を羽ばたいて叫んでやるんだ。
真っ青な空に白と黒の僕。
モノクロがカラーに入るって面白いでしょ?
いっぱい海風の空気を吸って。
太陽にだって行けるんだ。
空の向こうの向こうのそのまた向こう。
そこには息を飲むほどの星があるってさ!
真っ白な雪景色だけじゃないかもしれない。
魚が沢山ある所まで行けるかもしれない。
南の奥の僕たち。
いつか空を飛べるようにってお願いしなきゃね!
[パラレルワールド]
橙と紺が混ざる。
秋の早朝午前5時。
雲ひとつない空にグラデーションが撒かれる。
まるで絵の具をこぼしたような色。
いつか空になれたなら。
手を伸ばして呟いた。
地球に生きる自分。
宇宙という名の限りない空。
現象として干渉しない。
一つの意思として生きられたら。
存在さえ曖昧な時間では止める事は出来ない。
[時計の針が重なって]
輝く惑星が全て自ら発光しているとは限らない。
発光の源、宇宙の白。
君に触れると君では無くなってしまうから。
それでも君に触れてみたい。
ずっとずっと時間は進み崩壊も近づく。
そんな中、君の横顔だけは何時見ても綺麗だった。
君は君を醜いと泣くけれど。
それが君ってもんで、
好きな奴もいるわけで。
いつか君が燃え尽きたとしても、
僕はその灰すら愛してみたいんだ。
君の思うような温かさじゃないけれど。
もしも“中心”でまた出会えたら。
君の一瞬を僕にさせて欲しい。
[僕と一緒に]