『かつての栄光』などという錆びついた誇らしさは可燃ごみなのか、それとも不燃ごみなのか……?
分別出来ないことを言い訳に、今日も大事に抱えて生きよう。
実にくだらない、守り一辺倒のぬるま湯人生を。
夜の海、ってさ。なんであんなに惹かれるんだろうな?
どうしようもなく不気味で、ひどく昏いのに、見ているだけで段々と惹かれていく気がするんだよ。あの感覚、いつか、どこかで似た感覚を覚えた気がするんだけど、何だったっけなぁ……?
ま、流石に実際に入ったりはしねえけどな。いや、本能が警告するんだよ。あれに近寄ってはならない、ってさ。どれだけ惹かれようと、本能の警告に逆らうほど、俺は馬鹿じゃないつもりだよ。
今夜も俺は海をただ眺めている。
嗚呼、この感覚は。漸く分かった。死に惹かれているときの感覚に酷似していたんだ。俺を惹き付けてやまない、夜の海に潜む何かの正体はおそらく、この世からの離岸流。一度流されたら最期、もう戻れない。
自転車に乗った高校生と思しき少年少女が俺を追い越して行く。弾けるような若さ、煌めく汗、その全てが清々しい。俺も昔はああだったのかな? 流石にあそこまで爽やかじゃなかった気がするが。
俺もかつては自転車通学だった身。学校だけじゃなく、色んなところに行ったもんだ。あの頃は自転車に乗っていれば行けないところなんてない! ぐらいの感覚だったのに、それが今では……。
なんてことない坂道でさえ自転車を押して歩き、平坦な道をちょっと走っただけで息切れ。爽やかさの欠片もない汚い汗をダラダラとかき、Tシャツはすぐに汗で色が変わってしまう始末。時の流れは残酷だ。
また、他の学生が俺の自転車を追い越して行く。君が乗っているのは本当に自転車か? 俺のと比べてずいぶんスピードが出るじゃねえか。俺の自転車が遅いのは決して俺が衰えたからじゃない。自転車の差だ!
何一つ根拠のない負け惜しみを心の中で叫んでいると、俺を追い抜いて行った学生がふと後ろを振り向いた。その表情から心の内は読めない。が、もし俺を鼻で笑っていたなら「明日は我が身だぞ」と言ってやりたい。そんな気分になった。
今日のお題は『心の健康』か。
書きそびれた昨日のお題『君の奏でる音楽』に、ヤンデレ女子を出そうとしてた俺への皮肉かなw?
なんか異様に眠くて、寝て起きたら7時過ぎてました。すみませんでした……。
麦わら帽子、といえば今でこそ海賊が思い浮かぶ人が多いだろうけど、昔はオタクの憧れだったんだよな……真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女って。
でもさ、現実にはなかなかそんな娘はいないんだよ。所詮、オタクが生み出した一種のファンタジーなのかな……? そんな幻想に対する想いと夏の暑さにやられた頭は——今にして思えば、イカれた結論を生み出した。
白ワンピの美少女がいないなら、俺がそれになってやろう、と。可愛いは作れる! Can Make T○ky○! って言うし、大丈夫! やれるやれる!!
謎の自信に満ち溢れた俺は、早速Z○Z○TOWNで自分サイズの白ワンピを購入した。いつもいかつい男物を買ってたアカウントが、突如同サイズの白ワンピを購入したことを知った担当者はさぞゾッとしたことだろう……ZOZOT○WNだけにね!
ネットで白ワンピを購入した俺は、勢いそのままに近場のホームセンターで麦わら帽子を買った。……これで後は白ワンピの到着を待つばかりだ。
注文から二日ほど経ってついに、ワンピースが届いた。これであの頃、オタクだった俺が憧れていた白いワンピースの美少女になれる! 俺は着ていた服をいそいそと脱ぎ捨て、憧れの純白のワンピースに袖を通した。
すると、なんということでしょう!
素材の良さを活かし、引き出すはずの真っ白なワンピースは素材の不味さに殺され、見るも無惨な姿となっているではありませんか。
麦わら帽子を被った首から上は、どっからどう見ても農作業に従事するおっちゃ……お兄さん。白ワンピとの相性の悪さは改めて言うまでもありません。
……家を出る前に鏡を見て良かった。この姿のまま外に出ていたらどうなっていたことか。俺は涙を堪えて元の服へと着替えた。ちなみに、白ワンピは捨て……るのは勿体無かったので、なんとなくハンガーに掛けておいた。駄目元でZ○ZOT○WNに返品出来ないか問い合わせてみたが、一度でも着用したものは駄目なようだ。女物の下着までは買わなかった(お洒落は見えないところから、ってことで迷いはしたが)のはせめてもの救い、だったのかもしれない。
かくして、俺の白ワンピ美少女化計画は失敗に終わった。あれは本当に素材が良くなきゃ似合わないんだな、と身をもって知った。
現実に真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女がいない理由は、もしかしなくても「そういうこと」なのだろう。