自転車に乗った高校生と思しき少年少女が俺を追い越して行く。弾けるような若さ、煌めく汗、その全てが清々しい。俺も昔はああだったのかな? 流石にあそこまで爽やかじゃなかった気がするが。
俺もかつては自転車通学だった身。学校だけじゃなく、色んなところに行ったもんだ。あの頃は自転車に乗っていれば行けないところなんてない! ぐらいの感覚だったのに、それが今では……。
なんてことない坂道でさえ自転車を押して歩き、平坦な道をちょっと走っただけで息切れ。爽やかさの欠片もない汚い汗をダラダラとかき、Tシャツはすぐに汗で色が変わってしまう始末。時の流れは残酷だ。
また、他の学生が俺の自転車を追い越して行く。君が乗っているのは本当に自転車か? 俺のと比べてずいぶんスピードが出るじゃねえか。俺の自転車が遅いのは決して俺が衰えたからじゃない。自転車の差だ!
何一つ根拠のない負け惜しみを心の中で叫んでいると、俺を追い抜いて行った学生がふと後ろを振り向いた。その表情から心の内は読めない。が、もし俺を鼻で笑っていたなら「明日は我が身だぞ」と言ってやりたい。そんな気分になった。
8/15/2024, 1:23:41 AM