【優越感、劣等感】
この世には優越感と劣等感というものが存在し、そのふたつに浸る状況は人それぞれ。
ある人は学校が休みの時には優越感を覚え、何かが上手く出来ない時には劣等感を覚える。またある人は普段食べれないものを食べている時に優越感を覚え、何かを無駄にした時に劣等感を覚えるそうだ。
私の優越感は1人で地元より少し遠い場所にある高校に入学して逃げれたこと。劣等感は見下されていたこと。
私は小さい頃からずっと見下されながら生きてきた事がこの人生の中で劣等感を抱く時の最大の理由。
見た目をバカにされ、発する言葉を真似され、名前をバカにされ、更には志望校までバカにされた。
担任だって私の志望校をよく知らないのにも関わらず『ガラが悪いのでやめた方がよろしいかと』なんて親の前で堂々と発言したのを今も覚えている。
やめろなんて言うならば、私が地元から逃げようとしているこの意味のわからない状況を何とかして欲しかった。でも何もしないのだから黙ってて欲しかった。
結局地元から逃げるという気持ちが前を行き、私は高校は地元ではない場所にした。
そして私はそんな優越感に浸れることができて幸せだよ、誰も私のことを知る由もないのだから。
部活も始めて、新しい大人にも出会ったけど、まだその人達が私の味方なのか分からないけどそれが分かるまで関わっていくことにしたんだ。
みんなも私と頑張って生きていこうね。
【透明】
私ね、透明になりたいって思うんだけど、その理由が2つあってね。
1つ目は室内にいたとして、その空間の中でどんな風にいれば良いかとか誰と話していいか分からなくてものすごく困ることがあるんだ。別に変じゃない事を言っても変じゃないタイミングで笑って見てもさ怒られたり変に思われそうで嫌なの。
2つ目はね舞台に立った時、いつも嫌な事を思い出すの。私中学生の時に目立ちたくて人の前に立ってたんじゃないのに目立ちたがり屋、でしゃばりって言われてさ、でも誰にも助けて貰えず苦しかったんだ。
今は中学卒業して演劇をしているけどさ、バレたらまた言われるかもしれないと思うと怖いんだ。
演劇は目立つためにある訳じゃないのはわかってるんだけどね。
どこにいれば良いかを考えたりだとか人に何かを言われることを恐れているこの生活はいつも辛い。
思えば中高合わせて6年間、苦しい思いをいつもしていた。別に苦しい思いをしていても誰かが助けてくれるなんてない、むしろ助長されるだけだ。
だから卒業してから三年間で悪意のあると私が判断した人間とは関係を切った。SNSだって全部見られないようにとか晒されないように遮断してやったんだよ?
なのになんでまだ切れていなくて繋がっているように感じるの?
そうだ地元という狭い場所にいるからなんだよな、今すぐ出なきゃダメだよな。
でもできないから透明になりたいんだよな。
ああどうすれば良いんだ、どうすれば私は良かったんだよ!
【理想のあなた】
私が思う理想のあなたはね、人に過敏な子なんて思われたり、傷つきやすいから邪魔な子だって思われない子なの。
理想のあなたはね過敏だからっていじめられることも、教師に傷ついたことを話したってノリだって言われて更に傷つくこともないのよ?
それに人間関係が上手くいかないからって転校なんてしない子なの、あなたは。
あと演劇という芸術にも触れずに普通の女の子として生きているし、来世はめったに外に出ないモグラに生まれ変わりたいなんて言って後輩とかに「闇深そうだけど大丈夫?」なんてタメ口で言われないわよ。
あんたねさっきからこの文章打ってるけど、誰のことかわかってる?
そうよ、今、文章を打ってるあんたの事よ。
今まで言ったこと全部あんたに対する理想よ、分かってんの?
【突然の別れ】
これは自分が小学生の頃の話。
友達もいないし、いらないから住んでいる町の子どもが来ないような郷土資料館でよく遊んでいた事があった。
大人は来るけど何かしらを見て時間もかけずに私みたいな子どもがいると分かっていても無視してどこかへ行ってしまい、私はそれを残念に思いながら閉館時間までいることが多かった。
そんなある日のこと、いつものように郷土資料館で遊んでいると女の人がやってきた。
いつもの事だから気になんて留めてなかったし、どうせこの人も何かを見るだけ見てどこかへ行くのだろうと思っていたが、違った。
その女の人は私の所へ近づいて声をかけてきたんだ。
「ねえねえ、郷土資料館でいつも何をして遊んでいるの?」
「お絵かきとか本読んでるの」
「そのお絵かき、お姉さんに見せて?」
「いいよ! はいどうぞ」
「上手いし可愛いね! お礼にいい物見せてあげるよ」
小さい手を引っ張られて向かったのは何かが入ったショーケース。
「これなあに?」
「私……。いや、4500年前に生きてた人の骨だよ」
「お姉ちゃん、怖いよ……」
「大丈夫だよ、何もしてこないから」
「お姉ちゃん、本当?」
「うん、もし何かしてきたらお姉さんが守ってあげるね」
ああ、思い出した。人骨が入ったショーケースだ。
初めて見た時あの人骨ものすごく怖かったなあ
あの時お姉さんが何かを言いかけていたけどあれはなんだったのか覚えてないんだよね。
しばらく色んなものを一緒に見ていて、気付いたら閉館時間になってその場でお別れしたんだっけ。
だけどその日だけじゃなくて何回も郷土資料館に来てくれて、私のお友達の代わりを沢山してくれた。
でもとある日からあのお姉さんは私と突然の別れをしたかのように来なくなった。
お姉さんが来たら、お姉さんに私の大好きなチョコレートを食べてもらおうと思って持ってきていたのに。
そこから数年たってもお姉さんは来なかったし、誰に聞いてもお姉さんの事は誰も知らなかった。
お姉さんは何者だったのだろうか?
【恋物語】
真夜中に私の好きな人がこの町から出ていくと知った時、私はすぐに家を飛び出した。
その時の時刻は午後23時ちょうど、静まり返った町にはスーツケースを引く音だけが聞こえる。
スーツケースを引いている人は私の好きな人で、もうすぐ姿が見えなくなりそうなのが嫌で無我夢中で走った。
「なんで黙って出ていくんですか」
「あなたがショックを受けると思ったからだよ、この行為が最低だとはわかっていたけど」
「最低だと思うなら、最初から私に上京すると告げてショックを与えれば私だって覚悟が出来ていたのに!」
「帰って来ないって言うわけじゃなかったから言わなかったんだ」
「ならまた帰ってきてください、私はいつでもこの町にいますから」
「もちろんだよ、また会おうね」
またスーツケースを引く音が聞こえて、私は涙をこぼす。
これが私の人生における恋物語の第一幕。