さくら ゆい

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【突然の別れ】

これは自分が小学生の頃の話。

友達もいないし、いらないから住んでいる町の子どもが来ないような郷土資料館でよく遊んでいた事があった。

大人は来るけど何かしらを見て時間もかけずに私みたいな子どもがいると分かっていても無視してどこかへ行ってしまい、私はそれを残念に思いながら閉館時間までいることが多かった。

そんなある日のこと、いつものように郷土資料館で遊んでいると女の人がやってきた。
いつもの事だから気になんて留めてなかったし、どうせこの人も何かを見るだけ見てどこかへ行くのだろうと思っていたが、違った。

その女の人は私の所へ近づいて声をかけてきたんだ。

「ねえねえ、郷土資料館でいつも何をして遊んでいるの?」
「お絵かきとか本読んでるの」
「そのお絵かき、お姉さんに見せて?」
「いいよ! はいどうぞ」
「上手いし可愛いね! お礼にいい物見せてあげるよ」

小さい手を引っ張られて向かったのは何かが入ったショーケース。

「これなあに?」
「私……。いや、4500年前に生きてた人の骨だよ」
「お姉ちゃん、怖いよ……」
「大丈夫だよ、何もしてこないから」
「お姉ちゃん、本当?」
「うん、もし何かしてきたらお姉さんが守ってあげるね」

ああ、思い出した。人骨が入ったショーケースだ。
初めて見た時あの人骨ものすごく怖かったなあ
あの時お姉さんが何かを言いかけていたけどあれはなんだったのか覚えてないんだよね。

しばらく色んなものを一緒に見ていて、気付いたら閉館時間になってその場でお別れしたんだっけ。
だけどその日だけじゃなくて何回も郷土資料館に来てくれて、私のお友達の代わりを沢山してくれた。

でもとある日からあのお姉さんは私と突然の別れをしたかのように来なくなった。
お姉さんが来たら、お姉さんに私の大好きなチョコレートを食べてもらおうと思って持ってきていたのに。

そこから数年たってもお姉さんは来なかったし、誰に聞いてもお姉さんの事は誰も知らなかった。

お姉さんは何者だったのだろうか?







5/19/2024, 3:28:16 PM