さくら ゆい

Open App
5/21/2024, 6:25:47 AM

【理想のあなた】

私が思う理想のあなたはね、人に過敏な子なんて思われたり、傷つきやすいから邪魔な子だって思われない子なの。

理想のあなたはね過敏だからっていじめられることも、教師に傷ついたことを話したってノリだって言われて更に傷つくこともないのよ?

それに人間関係が上手くいかないからって転校なんてしない子なの、あなたは。

あと演劇という芸術にも触れずに普通の女の子として生きているし、来世はめったに外に出ないモグラに生まれ変わりたいなんて言って後輩とかに「闇深そうだけど大丈夫?」なんてタメ口で言われないわよ。

あんたねさっきからこの文章打ってるけど、誰のことかわかってる?
そうよ、今、文章を打ってるあんたの事よ。
今まで言ったこと全部あんたに対する理想よ、分かってんの?


5/19/2024, 3:28:16 PM

【突然の別れ】

これは自分が小学生の頃の話。

友達もいないし、いらないから住んでいる町の子どもが来ないような郷土資料館でよく遊んでいた事があった。

大人は来るけど何かしらを見て時間もかけずに私みたいな子どもがいると分かっていても無視してどこかへ行ってしまい、私はそれを残念に思いながら閉館時間までいることが多かった。

そんなある日のこと、いつものように郷土資料館で遊んでいると女の人がやってきた。
いつもの事だから気になんて留めてなかったし、どうせこの人も何かを見るだけ見てどこかへ行くのだろうと思っていたが、違った。

その女の人は私の所へ近づいて声をかけてきたんだ。

「ねえねえ、郷土資料館でいつも何をして遊んでいるの?」
「お絵かきとか本読んでるの」
「そのお絵かき、お姉さんに見せて?」
「いいよ! はいどうぞ」
「上手いし可愛いね! お礼にいい物見せてあげるよ」

小さい手を引っ張られて向かったのは何かが入ったショーケース。

「これなあに?」
「私……。いや、4500年前に生きてた人の骨だよ」
「お姉ちゃん、怖いよ……」
「大丈夫だよ、何もしてこないから」
「お姉ちゃん、本当?」
「うん、もし何かしてきたらお姉さんが守ってあげるね」

ああ、思い出した。人骨が入ったショーケースだ。
初めて見た時あの人骨ものすごく怖かったなあ
あの時お姉さんが何かを言いかけていたけどあれはなんだったのか覚えてないんだよね。

しばらく色んなものを一緒に見ていて、気付いたら閉館時間になってその場でお別れしたんだっけ。
だけどその日だけじゃなくて何回も郷土資料館に来てくれて、私のお友達の代わりを沢山してくれた。

でもとある日からあのお姉さんは私と突然の別れをしたかのように来なくなった。
お姉さんが来たら、お姉さんに私の大好きなチョコレートを食べてもらおうと思って持ってきていたのに。

そこから数年たってもお姉さんは来なかったし、誰に聞いてもお姉さんの事は誰も知らなかった。

お姉さんは何者だったのだろうか?







5/19/2024, 9:51:25 AM

【恋物語】
真夜中に私の好きな人がこの町から出ていくと知った時、私はすぐに家を飛び出した。

その時の時刻は午後23時ちょうど、静まり返った町にはスーツケースを引く音だけが聞こえる。

スーツケースを引いている人は私の好きな人で、もうすぐ姿が見えなくなりそうなのが嫌で無我夢中で走った。

「なんで黙って出ていくんですか」
「あなたがショックを受けると思ったからだよ、この行為が最低だとはわかっていたけど」
「最低だと思うなら、最初から私に上京すると告げてショックを与えれば私だって覚悟が出来ていたのに!」
「帰って来ないって言うわけじゃなかったから言わなかったんだ」
「ならまた帰ってきてください、私はいつでもこの町にいますから」
「もちろんだよ、また会おうね」

またスーツケースを引く音が聞こえて、私は涙をこぼす。

これが私の人生における恋物語の第一幕。

5/13/2024, 8:55:28 AM

【子供のままで】

最近の事だが、私は知り合いの住んでいる町で高校生くらいの女の子に出会った。

いつも笑顔で私を見かけると走り寄って来るその姿が可愛くて、ずっとこのままがいいと思った。

あの姿が可愛くてずっと見ていたいから大人になんてならないでほしい。子供のままでいて欲しい。

本当にお願いだから大人にならないでよ。

5/11/2024, 7:36:37 AM

【モンシロチョウ】

私が街中をカトレアを持って歩いていた時にモンシロチョウがカトレアに止まり、そのあと私の手に移った。

私に蜜はないはずなのにと思ったが、気付いた。
このモンシロチョウはあの日あの神社で自分がもう死んでいるという事を私に告げて消えたあの人で、あの人は心も身も綺麗な人だったから神様がきっと綺麗なモンシロチョウにしてくれたんだ。

でもあの人が人間のままであろうがモンシロチョウになろうが私には何も出来ないことが明確でしかない。
卵を産ませろなんて言われても私はやらないよ、あの人は自由に飛んでいて欲しいから。それが私の思うあの人にとっての幸せなの。

「今度はちゃんと幸せになってね」と願いながらあの人の生まれ変わりであろうモンシロチョウを空に放した。

ねえカトレアはちゃんと枯れるまで育てるから安心してね。あとまた幽霊になって出てこないでね、私はちゃんと元気にやっているから。

Next