いただいた♡が1,500を超えまして、記念に何かと思ったりもしたのですが
今日のお題【心と心】ですか……
難しいな
暗い話か自分語りか暗い自分語りになってしまいそうです
ただまあ、ここで私の心のうちを述べても誰かの心に届くかはわかりませんが
少しばかり語らせていただくと
私、十何年か前まで割と希○念慮にやられていたんですよね
こういうこと書くと年がバレそうですけど
それでもまあ、今は結構幸せなんですよ
苦しんでいる最中のどなたかに
頑張れとは言わないし言えませんが
抜け出せる可能性はあります
ありますよ、ここに実例がいるので
かなりラッキーな例かもしれませんが
皆無ではありません
とりあえず、もうしばらく生きてみませんか
なんてことを伝えたいなと、最近の私は思っていたりします
まあ、押し付けがましいのは嫌なので、誰かに直接何かをすることはないでしょう
逆効果になりかねませんし
ただ、こういう人間もいるよと、ひっそり発信するくらいでいいのかもしれません
【何でもないフリ】
自分に『大丈夫』と言い聞かせ
何でもないフリをする
そんなもの
全然、大丈夫ではないし
フリでしかない
だって、本当に大丈夫な時には
『大丈夫』なんて
わざわざ言葉にして
意識したりなんか
しないでしょ?
玄関チャイムの音が苦手な私は
うーばーイーツのCMで
『ビクッ』としたら
それはもう、弱っている時なんだ
しっかり休んで
自分を甘やかして
もっと楽して
生きていきたいねぇ
【仲間】
「あなたを、私の趣味を理解してくれる仲間だと思って相談するんだけどね?」
私は少しだけ周囲を気にしながら、そう切り出した。正面に座る友人の前にはブレンドコーヒーと季節のフルーツパフェがある。どちらも私の奢りだ。
「どうしたのさ、改まって。まあ、甘いものを食べさせてくれるなら相談くらいいくらでも聞くけど」
「知ってると思うけど、私、一次創作書くじゃん?」
「ああ……うん。私にはあんまり読むなとか感想は聞きたくないとか言うあれね」
「そうそれ。私、結構登場人物に名前を付けないことが多いのよ。短編だと特に」
友人は「ふーん」と言いながら、パフェの天辺に乗った苺を摘んだ。
「……酸っぱい……」
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。で、キャラの名前がどうかしたの?」
「たまには短編でも登場人物に名前を付けたい時があるの。会話の流れで呼ばせたいとか。ないと不便な時とか」
「うん、それで?」
「適当に付けるから思い入れとかなくて。誰にどの名前付けたかすぐ忘れちゃうのよ」
「へー」
パフェのアイスで冷えたのか、友人はコーヒーをひと口飲んで、ほうっと息を吐いた。
「もう。ちゃんと聞いて」
「聞いてるよー」
「一応『当たり障りのない名前のストック』みたいなものはあるのね。でも、どれを使ったかわからなくなっちゃったの」
「あー。それがどっかの剣士と勇者の息子の名前が被った理由かぁ」
「なっ……!」
絶句した私に、友人はパフェをつつきながら言った。
「名前のストックがあるならメモでもしておけば。簡単なことでしょ」
「……読まないでって言ったじゃん!!」
「なんでよー。ネットに公開してるなら私が見てもいいでしょー?」
「リアルの知り合いとか身内に見られるのは恥ずかしいんだってば」
「だからいつも見てないふりしてあげてるじゃない?」
ニヤニヤしている友人と、赤い顔でミルクティーを飲む私。
「誤字脱字のチェックでもしてあげようか?」
「やめて、本当に」
そんなことされたら羞恥でしんでしまう。
「でもまあ、何かあったら言いなさいよ。私は小説とか書かないから、本当の意味で仲間になれるかは自信ないけど、味方にはなってあげるからさ」
そう言って、友人はパフェのクリームを口に含み、幸せそうに笑み崩れた。
【手を繋いで】
「手を繋いでくれないか?」
真っ赤な顔で左手を差し出してきたその人を見て、僕は『え、普通に嫌だな』と思ったし、表情が引き攣るのを誤魔化せなかった。
「……悪かったな! そんな顔しなくてもいいだろ!? 流石に俺も傷付くぜ?」
「あ、いえ、その。すみません……なんで僕が隊長と?」
目の前の男の特徴を表現するなら『でかい』のひと言だ。この人は魔法士団の所属ではあるが、剣の腕もなかなかのもので、騎士団からもスカウトを受けていたという肉体派。今も差し出したのが左手なのは剣を使う右手を塞ぎたくないからだろう。
もちろん立派な成人男性であり、本来なら僕と手を繋ぐ理由がない。恋人同士でもなく家族でもなく、ふざけてじゃれつく関係でもない。
「妖精の悪戯をくらった」
隊長が苦々しい声で言った。
「『方向失認』の呪いだ。まともに歩くこともできねぇ」
ああ……呪いか……なら仕方ないか。
『方向失認』の呪いを受けたということは、今の隊長は凄まじい方向音痴になっているわけだ。十歩歩くだけで道に迷うと言われる強力な呪いだ。通い慣れた道もわからなくなる。
対処法は、とにかく呪いを受けた本人から目を離さないこと。誰かが見ていなければ行方不明になりかねない。三日も経てば妖精が飽きて呪いは解除されるはずだけど……
「手を繋ぐ必要、あります?」
近くで見張って『そっちじゃない』と声を掛ければいいだけじゃないのか。
「……今朝ここまで来るのに別の隊員に頼んだら、よそ見をされて、気付いた時には第二倉庫にいたんだ」
「なるほど」
この執務室と第二倉庫では方向がまったく違うし、建物二つ分くらいは距離が離れている。
「よく戻って来られましたね」
「兵站部の治癒士が手を繋いで案内してくれた」
「え。治癒士の誰が」
兵站部は物資の保管やら輸送やら、遠征の時には料理なんかもしてくれる支援部隊だ。前線に立つことが少ないせいか、線の細い人間が多く、何人か団内でアイドル扱いされている美人がいる。
「……レベッカ班長だ」
「うっわ、羨ましい!!」
つい大きくなった僕の声に、隊長は嫌そうな顔をした。
「どこがだ。あの魔女、今いくつだと思ってる? 俺より年上だぞ。大体あいつの治癒魔法は乱暴で無駄に痛いんだよ、嗜虐趣味があるとしか思えねぇよ」
「でも、めちゃくちゃ美人じゃないですか。レベッカ班長に治療されたいって男は多いですよ」
「……お前もか?」
「僕、治癒魔法は自分で使えるので」
「ああ、そうだったな」
「それで、隊長はどこに行きたいんですか」
「騎士団本部だ。次の合同演習に関する書類に不備があったとかで、直接説明に来いと言われている」
「大事な案件じゃないですか。それ早く言ってくださいよ!」
大きくて硬くてサカつく隊長の手を取り、隣を歩く。騎士団本部までの距離がものすごく長く感じた。すれ違う人たちにジロジロと見られている気も……って、それは気のせいじゃないな。何事かと思われている。隊長の背中にでも張り紙をしたい気分だ。『要支援、現在呪われています』と。
「そもそも、なんで呪われたんですか」
「昨日、団長が甥っ子とかいう子供を連れて来てただろ。あの子が妖精の巣をつついて怒らせたんだ。呪われそうになったんで、代わりに俺が呪いを受けた」
「はあ……」
そんなの放っておけばいいのにと思うが、実にこの人らしい。それも、団長に気に入られて出世しようなんてことはこれっぽっちも考えていないのだ。ただ『弱いものは守らねば』という信念で動いているだけ。
「隊長の明日の出勤、何時ですか」
「ん? 何か用事か?」
「宿舎の部屋まで迎えに行きますよ。また倉庫まで無駄に歩くとか嫌でしょ」
「呪いが解けるまで、お前が世話してくれるのか?」
「ええ。その代わり、今度一杯奢ってくださいね?」
「……仕方ねぇな。頼むわ」
騎士団本部からの帰り道。僕は隊長と手を繋ぐ代わりに制服の袖の上から腕を掴んだ。
「最初からこれで良かったっすね」
「……ああ、そうだな」
隊長も慌てていたのだろう。手を繋ぐ、という方法以外、思いつかなかったらしい。そのことが恥ずかしかったようだが……
「そこで照れないでくださいよ。気色悪い」
「……お前、意外と性格キツイよな」
そんなの。心の広い上司が軽口を許してくれるって知っているからだ。
「ねぇ、隊長。長生きしてくださいね」
「なんだよ、急に」
「いえ、なんとなく?」
だってアンタ簡単に死にそうじゃないか。子供を庇うだけじゃない。軍人なんて仕事をしてるのに部下を切り捨てることを躊躇する。だからこそ、僕も他の隊員もこの人について行こうと思えるのだが。
この人の甘さが嫌いじゃない。けど、それが本人の首を絞めることにならなければ良いと、本当にそう思っている。
【ありがとう、ごめんね】
「レニー、そのまま押さえて! ありがとう、ごめんね!!」
俺への礼と謝罪を口にしながら、エリオットの魔法が俺を貫いた。それは俺が押さえ込んでいた犯人を俺ごと戦闘不能にするのに十分な攻撃だった。
痛覚はすでに遮断されている。遠退く意識の中でぼんやりと、今回の回復は早そうだなと俺は思った。
「…………は……か、……?」
「……だろ、……は」
ああ。声が聞こえる。意味がわかるほどは聞き取れないけれど、これはエリオットと、俺のご主人様であるカイル殿下の声だ。
エリオットはカイル殿下の側近、俺は専属の護衛騎士。立場に差はあっても元同級生であり仲は良い。
この国の第一王子であるカイル殿下は、優しそうに見えるが冷たい所もあるお方だ。きっと俺が『また』死んだと知っても悲しみはしないだろう。
「……それで、……は」
少しずつ耳がまともに働き始める。
「もう……けど、なかなか……」
「そうか、しかし……」
すべての感覚が遠く、もどかしい。早く起き上がりたい。ゆっくりと目を開ける。それだけのことにかなりの集中力が必要だった。
「レニー? 意識が戻ったの!?」
エリオットに返事をしようとして、声が出なかった。復活の直後はいつもこうだ。支え起こしてくれたエリオットに、そのまま水を飲ませてもらう。カイル殿下がもの言いたげに俺を見て、ため息をついた。
「レナード。また自分を犠牲にしたな」
俺はただ素直に頭を下げた。まだちょっと喋れそうにない。
「他の戦法はないのか。いくらお前が死なないといっても、毎回毎回……」
こうして説教されるということは、多少は心配されていると思ってもいいのだろう。それを嬉しいと思ってしまう自分に少し呆れる。
俺は死なない。正確には、怪我や病気では死ねない。死んだと思っても復活する。神様からそういう加護を賜ってしまった。
完全な不死ではないし老化はするから、将来的には老衰するのかなと思うけど、戦死はあり得ない。毒も効かない。
おかげで優秀な囮であり便利な壁である。だからこそ、王子の専属護衛に選ばれた。いざという時には身代わりになれということだ。痛みを遮断・軽減できるのが救いか。意識して痛覚を鈍らせることもできるし、一定以上の痛みは自動で遮断される。
なんでこんな体になったかと言えば、神様が加護を授けてくれると言うから、それなら長生きしたいなぁと安易に願ったせいだった。人間としては長生きできた、そう神様が判断するまで、俺は死なないそうだ。何度でも何度でも復活する。
「まあまあ。おかげで殿下もご無事だったんですから」
エリオットがカイル殿下を宥めた。俺が今回こいつに『殺された』のは、王家主催の夜会での騒動が理由だった。カイル殿下に毒を盛ろうとした者がいて、拘束しようとしたら暴れた上、魔法を使おうとしたので、俺たちも強硬手段に出るしかなかったというわけ。
「……夜会の警備責任者は近衛騎士団の副団長だ。以前から第二王子派と接点があった」
副団長はいつもにこにこと穏やかな人で、たまに甘いものをくれるから嫌いじゃなかった。けど、潰されるだろうな。たとえカイル殿下の暗殺未遂に直接加担していなくても、不審者を見逃したのだから。
「いい加減、面倒だな」
そう言ってカイル殿下はため息をついた。
「なぁ、レナード。お前、近衛騎士団を辞める気はあるか」
突然そんなことを聞かれて、俺は焦った。
この方の護衛を外される?
何か不興を買うようなことをしたか?
「殿下。俺は確かに盾になることしか能がありません。ですが、それでも今までお役に立てていたはずです……!」
「ああ、勘違いするな。私の護衛を辞めろとは言っていない」
「では?」
どういう意味だ。何が違う?
「弟の方が王には相応しいだろう」
カイル殿下の言葉に、俺は目を見開き、エリオットも絶句している。
「そもそも何故揉めている? 王太子が決まらないからだ。何故決まらない? 第一王子の私が王の器ではないからだ」
「殿下……そのようなことは」
「これまでの王国の歴史上、魔法が使えない国王が何人いたか……いないよ。いないんだ」
本来なら、長子であり男子でもあるカイル殿下が次の王になる。けれど、カイル殿下は魔力を持たずに生まれた。国王陛下はカイル殿下を王太子に指名することを躊躇い、だからといって切り捨てられずにいる。
「東の辺境伯に後継者がいない。このままなら家は断絶、領地は王家の直轄地になる予定だ」
エリオットが声を震えさせた。
「カイル殿下、まさか」
「……私を養子にという話がある。受けようと思っている」
次の王が決まらないままでの臣籍降下。周囲はカイル殿下が王に捨てられたと判断するだろう。その後の社交界で、この方が一体どんな扱いを受けることか。
「レナード、ついて来てくれるか?」
「……俺は」
本来、カイル殿下の専属である以前に、俺は騎士であり、この国と王に忠誠を誓った身だ。けれど許されるなら。望んでいいなら。この剣はカイル殿下おひとりに……
「連れていってくださるのですか?」
「もちろんだ」
俺はどうにかベッドから降りると、敬愛する主人の足許に跪いた。
殺しても死なない俺を、怪しげな実験の被験体にしたいとか、人体をより詳しく知るために解剖させろとか、そういう物騒な連中が実は大量にいたのだということを、俺は辺境伯領に移住してから知った。
そういうものはすべてカイル殿下が、カイル様が俺から遠ざけ、守ってくれていたのだ。
剣を捧げる相手を変えるなんて騎士としては不義理なこと。けれど、あの日、国よりカイル様を選んだことは間違いではなかったと、俺は思っている。
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長くなりました。今までで最長かと。ここまで読んでいただきありがとうございます。短くできなくてごめんなさい。