【仲間】
「あなたを、私の趣味を理解してくれる仲間だと思って相談するんだけどね?」
私は少しだけ周囲を気にしながら、そう切り出した。正面に座る友人の前にはブレンドコーヒーと季節のフルーツパフェがある。どちらも私の奢りだ。
「どうしたのさ、改まって。まあ、甘いものを食べさせてくれるなら相談くらいいくらでも聞くけど」
「知ってると思うけど、私、一次創作書くじゃん?」
「ああ……うん。私にはあんまり読むなとか感想は聞きたくないとか言うあれね」
「そうそれ。私、結構登場人物に名前を付けないことが多いのよ。短編だと特に」
友人は「ふーん」と言いながら、パフェの天辺に乗った苺を摘んだ。
「……酸っぱい……」
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。で、キャラの名前がどうかしたの?」
「たまには短編でも登場人物に名前を付けたい時があるの。会話の流れで呼ばせたいとか。ないと不便な時とか」
「うん、それで?」
「適当に付けるから思い入れとかなくて。誰にどの名前付けたかすぐ忘れちゃうのよ」
「へー」
パフェのアイスで冷えたのか、友人はコーヒーをひと口飲んで、ほうっと息を吐いた。
「もう。ちゃんと聞いて」
「聞いてるよー」
「一応『当たり障りのない名前のストック』みたいなものはあるのね。でも、どれを使ったかわからなくなっちゃったの」
「あー。それがどっかの剣士と勇者の息子の名前が被った理由かぁ」
「なっ……!」
絶句した私に、友人はパフェをつつきながら言った。
「名前のストックがあるならメモでもしておけば。簡単なことでしょ」
「……読まないでって言ったじゃん!!」
「なんでよー。ネットに公開してるなら私が見てもいいでしょー?」
「リアルの知り合いとか身内に見られるのは恥ずかしいんだってば」
「だからいつも見てないふりしてあげてるじゃない?」
ニヤニヤしている友人と、赤い顔でミルクティーを飲む私。
「誤字脱字のチェックでもしてあげようか?」
「やめて、本当に」
そんなことされたら羞恥でしんでしまう。
「でもまあ、何かあったら言いなさいよ。私は小説とか書かないから、本当の意味で仲間になれるかは自信ないけど、味方にはなってあげるからさ」
そう言って、友人はパフェのクリームを口に含み、幸せそうに笑み崩れた。
12/10/2024, 10:55:38 AM