るね

Open App
10/9/2024, 1:56:00 PM

【ココロオドル】


文房具が好きな私の最近特にハマっているものが万年筆。
そして、万年筆そのものと同じか、それ以上に楽しいのが万年筆用のインクたち。

もちろんつけペンでも良い。
ガラスペンも素晴らしい。

新しいインクを買って、手持ちの紙を並べて。
試し書きをするのは実にココロオドル時間。

小さな瓶が入った小さな箱を丁寧に開ける。
箱のデザインもラベルも瓶の形も多岐にわたり、可愛らしく美しくあるいはクールだ。

インクを含んだペン先をそっと紙に走らせる。
現れる色は必ずしも見本通りとは限らない。

液色からは想像もつかない色が出ることもある。
紙質によって大きく発色が異なることもある。
美しい濃淡。
ボールペンではなかなかこうはいかない。

僅かなインク溜まりに全く違う色が光ることもあるし、乾くと色が変わるインクなんてものもあったりする。

楽しい。美しい。素晴らしい。
もっと欲しい。あの色もこの色も。



ただ、使い切れないことと己の字の汚さが如何ともし難い。


10/8/2024, 1:29:51 PM

【束の間の休息】


勇者の剣である聖剣は、自浄機能も自己修復機能もあって、砥石なんて要らない。
だけど仲間の武器はそうもいかないから、鍛冶屋に修理を頼んだりする。

魔物との戦闘の合間。比較的安全な町に寄って束の間の休息だ。

武器や鎧を預けている間に、ブーツの泥を落とし破れたマントを繕い、洗濯をし、消耗品や食料を補給する。

風呂に入ってベッドで眠り、店で食事をして、自分が殺戮兵器からヒトに戻ったような気分になった。

町を歩けば「勇者様ー!」と声援が聞こえてくる。血塗れの英雄の、綺麗な部分しか知らない人たちだ。

実際に俺が戦う姿を見たら、黄色い声なんて上げられないだろう。勇者パーティを支援するために国からついて来た騎士でさえ、顔を強張らせるんだから。

魔王を倒したら。
世界が平和になったら。
安全な場所で待っていた人たちは……


俺たちをちゃんと迎え入れてくれるのか?




用済みになった俺に居場所はあるのか?


…………だめだな。
休息は束の間で十分。
早く次の敵を屠りに行こう。
これ以上余計なことを考えてしまう前に。


10/7/2024, 11:42:00 AM

【力を込めて】


倒れないように支えて、力を込めて。
真上からぐっと押し込む……

おっと。
支えきれず、思いきれず。
ガツンと音を立てて。
中途半端に押された薄緑色の硝子瓶がバランスを崩す。
倒れそうになったそれを、横から別の手が支えた。

その手の持ち主がくすくす笑う。
「ラムネすら開けられないとか。
 …………ほんと可愛い」

だって、噴き出しそうで怖いじゃないか。

10/6/2024, 11:34:40 AM

【過ぎた日を思う】


いつか過ぎた日を思うのなら。未来にとって過去である今を思い返すことがあるなら。
『あの頃は幸せだった』と思いたいものだ。

特にドラマチックなことも起きない日々を『平和で穏やかで悪くなかった』なんて、感じられたらいいと思う。

そのためには……
まずは、自身の健康かなぁ。


10/5/2024, 12:12:10 PM

【星座】


星座なんて、私にはオリオン座くらいしかわからない。
そもそも近眼が酷くて、たとえ眼鏡をしていても、はっきり見えるのは明るい星だけ。

だけど星が好きだと君が言うから。
一緒に夜空を眺める。
見えないなりに目を凝らす。
「ほらあれが」と指差す君の声を聞く。

この街は空が狭くて、地上が明るすぎて、星が見えにくい。
だからと言うわけでもないけれど。

楽しそうに語る君のキラキラした顔。
それが星空よりも美しく見える。



Next