―1件のLINE―
«バイバイ»
と、ただそれだけのLINEが来た
カタカタ、カタカタと
残業を消化していく音だけが鳴り響く部屋に
短めのバイブと共に
送り主が彼女であることに気づいた瞬間、
俺の背が冷や汗に濡れた
頭の中が真っ白になって、
俺は弾かれたように席を立ち、
夜の闇を走り抜けた
夜に溶けそうな彼女を追って
―目が覚めると―
昨夜だっていつも通りのベッドで
寝たはずなのに、
目が覚めると…
みたいな、おとぎ話とか、ファンタジーとか
そんな世界にばかり見蕩れて、憧れて
現実になんて見向きもしなかった私に
今更巡って来るものなんてなく
突きつけられる現実に、
逃避する術も分からず、
行先さえも阻まれて
とうとう、
型に嵌められて生きるしかなくなってしまった
―街の明かり―
ポツポツと街の明かりが遠くに見える
雪がしんしんと降り積もる街の明かり
はあ、はあ、と切れる息
吐息は白く、空気を漂う
手足は悴み、痺れ、
ずっと雪の中を歩いた足は
ボロボロに草臥れて震えている
やっと見つけた温かさ
街灯に照らされて雪がふんわりと浮かび上がって
ほわほわと柔らかく賑わう人たちで溢れている
これでもう安心だ
これからは、この人たちに支えられて
ここの人として生きれて…とぼんやり考えた
頭がぐわんと揺れ、雪の上に倒れた
誰かの助けを待とう
きっと優しい誰かが私を拾ってくれる
私には幸せな未来が待っている
そのはずなんだ…
そう思いながら瞼を閉じた
目の前には真っ黒な世界が広がる
私は黄泉に飛び、天国に辿り着いた
↻ ◁ II ▷ ↺
―七夕―
その子にも叶えたい願いが出来ればいいな
と思ってしまう私がいる
私のように
みんなの願いが叶いますように
としか書くことが出来ない、
偽善者にしかなれない、仮現実主義者の
短冊を見ると
↻ ◁ II ▷ ↺
―神様だけが知っている―
短編集のようで
長編のように長い、長い
この物語は、
現在進行形で進んでいて、
ハッピーエンドかバッドエンドか、
若しくはメリーバッドエンドか
どんな終わり方なのか、いつ
終わりが訪れるのか
作者でさえもまだ知らない
その物語のラストは、そう
神様だけが知っている