『過ぎ去った日々』
今日、俺達は高校を卒業する。
この3年間は色々あった。
体育祭、文化祭、休みの日に友達とどこかに出かけたり、放課後にファミレスなどで雑談をしたり。
でも、そんな日々も、今日で終わりを告げる。
4月から俺も、友達も、一度も話した事の無いクラスメートも、それぞれの未来に向かって歩む。
『よ! 卒業式になんで校舎裏で黄昏てんだよww』
『少し、遡ってただけだ。過ぎ去った日々を』
『なんか重くねぇか? 空気が凄いぞ?』
『気にするな。すぐ戻る。2つの意味でな』
『そうか。この後打ち上げだからみんなが出発する前にはちゃんと戻ってこいよ?』
『ああ、行けたら行く』
『お前がそう言って外せない用とか無い時は来なかった事無いの意味わかんねぇよな。まあ良い事だけどさ』
そう言って俺の3年間の友達は他のやつらの元へ戻って行った。
過去へは戻れない。俺にはそんな能力は無いから。
なら、未来へ目を向けよう。
今日が終わり、みんな解散し、それぞれの道を歩み、でもまた会えたら。
その時は、酒でも飲みながらゆっくりと遡ろうじゃ無いか、過ぎ去った大切な思い出を。
『お金より大事なもの』
やあ、諸君。はろーえぶりわん。
今日は君達に聞きたい事があるんだ。
君達はお金より大事なものと言うのを考えた事があるかな?
愛情? 青春? 命? それは人によって千差万別だろう。
そんな事を言っている私もまだ答えは出ていない。
どうなんだろうね? 上の3つなのか、はたまた別の答えが出てくるのか。
是非、考えて見て欲しい。そして、大切にするんだよ?
『それ』を
『月夜』
私は今、学生の頃に通っていた学校の屋上に居た。
扉の鍵の複製なんて容易に出来る。複製が無理でもピッキングだって出来る。というか練習した。
良い子のみんなはこんなことしちゃ駄目だよ? 『俺悪い子だから〜ww』も禁止ね?
冬の凍りつくような冷たい風が肌を刺す。
上を見上げると夜の闇の中に次が輝いている。
『ふふ、ふふふふ。あははははは!!』
何故か、笑いが込み上げてきた。とても良い気分だ。歌でも歌おうかな?
今からする事は決して良いことでは無い。気分が良くなる事でもない。
ただ、この世か、解放される。解き放たれると考えただけで清々しい気分だ。
『世界よ! 何故私から全てを奪った! 私が何かお前らにしたか?! 家族は病気で死に、愛する彼氏には浮気され、高校の時からの親友とも絶交された!』
雨が降っていないのに頬に水が触れた。悲しい、苦しい、そんな気持ちで一杯になる。
『失ったトラウマが影響して仕事は上手くいかないし、挙げ句の果てには体調を崩して休むと言ったら理不尽に辞めさせられた』
考える事も放棄したくなる。まあ、その時はすぐ来るが。
『本当になんで……? 私は普通に生きたかっただけなのに……』
まあ、もう良い。何もかも。今日で終われるんだから。
『じゃあね、世界。私はずっと恨み続ける。たとえあなたが謝ってきたとしても、この思いは消えない。いつか、復讐するから』
そう言い残し、私は落ちた。
『絆』
『明日引っ越すんだっけか、真?』
『ああ、そうだ。寂しくなるな』
そう、俺は親友と話す。幼稚園から仲良くなった男の親友兼幼馴染。
俺は明日引っ越す事になった。しょうがないと思いつつも悲しい気持ちがある。
そりゃそうだ、ずっと隣にいた親友と離れるのだから。
『絶対に会いに行くから待ってろよ?』
『その前に俺がまたこっち来て会うさ。』
『それも良いなww。楽しみにしてるぞ』
『おう。』
そんな事を言い合い、俺は帰路についた。
『絶対にまた帰ってくる。絶対だ。』
そう独り言をこぼし、荷物をまとめなきゃ行けないことを思い出してため息もこぼした。
『たまには』
今、俺は公園に来ている。理由は散歩だ。
とても天気が良く、清々しい気分になる。
たまにはこんなのも良いだろう。これで最後になるかもしれないのだから。
『はは、なんてな。……全く、縁起の悪い。』
そのような事を言いながら、一緒に散歩に来た俺の連れに注意する。
『あまり遠くに行くなよ〜。お前小さいから見つけるの大変になるんだからな〜』
こんな日が、ずっと続けばいいのに。
そう思ったその時、急に胸に激痛が走った。
『もう生きる気なんてねぇよ。さっきはああ願ったが、もう十分幸せだ。』
そう独り言を呟き、俺は帰ろうとする。
『お〜い! もうそろそろ帰るぞ〜!』
そう呼びかけると、俺の足元まで来たので一緒に歩いて帰る。
……いつ言えば良いのだろうか。近々俺がいなくなると。
言える訳ない。俺たちは家族だから。俺は好かれていると思うから。寂しい思いをさせてしまうから。
でも、わかっている。言わないなら言わないでその時が来たら、悲しませることになるのは。
『俺は、どうすれば良いんだろうな、たま?』
『にゃー』
やっぱり、たまには言えないな。ごめん、たま。