『月夜』
私は今、学生の頃に通っていた学校の屋上に居た。
扉の鍵の複製なんて容易に出来る。複製が無理でもピッキングだって出来る。というか練習した。
良い子のみんなはこんなことしちゃ駄目だよ? 『俺悪い子だから〜ww』も禁止ね?
冬の凍りつくような冷たい風が肌を刺す。
上を見上げると夜の闇の中に次が輝いている。
『ふふ、ふふふふ。あははははは!!』
何故か、笑いが込み上げてきた。とても良い気分だ。歌でも歌おうかな?
今からする事は決して良いことでは無い。気分が良くなる事でもない。
ただ、この世か、解放される。解き放たれると考えただけで清々しい気分だ。
『世界よ! 何故私から全てを奪った! 私が何かお前らにしたか?! 家族は病気で死に、愛する彼氏には浮気され、高校の時からの親友とも絶交された!』
雨が降っていないのに頬に水が触れた。悲しい、苦しい、そんな気持ちで一杯になる。
『失ったトラウマが影響して仕事は上手くいかないし、挙げ句の果てには体調を崩して休むと言ったら理不尽に辞めさせられた』
考える事も放棄したくなる。まあ、その時はすぐ来るが。
『本当になんで……? 私は普通に生きたかっただけなのに……』
まあ、もう良い。何もかも。今日で終われるんだから。
『じゃあね、世界。私はずっと恨み続ける。たとえあなたが謝ってきたとしても、この思いは消えない。いつか、復讐するから』
そう言い残し、私は落ちた。
3/7/2024, 4:00:25 PM