美佐野

Open App
12/23/2025, 12:37:18 PM

(揺れるキャンドル)(二次創作)
あとでかく

12/22/2025, 10:13:16 AM

(光の回廊)(二次創作)
あとでかく

12/20/2025, 11:55:37 AM

(時を結ぶリボン)(二次創作)

 女神さまはマザーズ・ヒルの泉に住んでいました。遥か昔から、麓の街に暮らす人間たちを静かに見守ってきました。人間たちに女神さまの姿は見えません。それでも女神さまは人間たちに寄り添い、皆が幸せであるよう心を砕いていました。
 そんなある日のことです。
 麓の街の荒れ地に、一人の青年が引っ越してきました。その青年は、かつて荒れ地が牧場だった頃に住んでいた男の孫で、再び元の姿を取り戻すために奮闘する新しい牧場主でした。そして彼は、何とも珍しいことに、女神さまの姿を見ることができました。
 女神さまはすっかり嬉しくなりました。
 この街の人間と会話をするのは彼が初めてでした。彼はとても働き者で、優しくて、誰にでも人気でした。女神さまの住む泉にもよく遊びに来ては、畑で採れた野菜や家畜の副産物を分けてくれました。とりわけ彼の作るイチゴとパイナップルは、女神さまの大好物になりました。
 女神さまは、彼の力になりたいと考えました。そして一本のリボンを作り出すと、彼にこう言いました。
「これは時を結ぶリボンというの。これを結んだものは何でも、時間が止まって、劣化や老化をしなくなるのよ」
 大切な家畜に結べばずっと元気でいてくれるし、よく実る苗に結べば永遠に収穫ができます。女神さまの贈り物をたいへん喜んだ彼は、リボンを自分自身に結びました。
「これで、ずっと、一緒にいられる」
 女神さまはドキッとしました。彼の表情は恋する男のそれで、対象は女神さまのように見えました。なぜなら同じ人間なら、彼自身の時を止めなくてもずっと一緒にいられるんですから。
 それからというもの、女神さまは彼のことが気になって仕方ありません。人間たちの言う「恋」とはきっとこのことです。女神さまは一人、浮かれていました。
 そうして、彼が来て5年目の春になりました。彼は「いつもありがとう」と言うと、女神さまにとても甘いイチゴをくれました。これから山の湖に向かうそうです。女神さまは「ありがとう、いってらっしゃい」と彼を送り出しました。

12/19/2025, 11:53:59 AM

(手のひらの贈り物)(二次創作)
あとでかく

12/18/2025, 9:54:11 PM

(心の片隅で)(二次創作)

 ブランドンは物心ついた頃から、出会ったものを形にしなければ気が済まないところがあった。幼い頃は、絵を描いたり粘土を捏ねたり工作をしていたりしたが、成長するにつれ、彫刻に興味を持つようになった。芸術とは孤高のものだ。仲間も師も持たぬまま、ブランドンはただ、己の心の赴くままに、創作を重ねてきた。
 それはこれからも、変わらないはずだった。
「…………」
 ちらちらと、心の片隅で何かがうるさい。無視を決め込んでいたがもう限界だ。ブランドンは手に持っていた彫刻刀と木材を投げ出した。ああ、何と腹立たしいことだろう。
「やっほー、ブランドン、いる?」
 更にその原因は、能天気な顔でこうしてアトリエにやってくる。
「……クレア」
「難しい顔してるじゃん、悩み事ならこのクレアちゃんが聞いてあげるよ?」
 悩み事こそ、クレアの存在だった。この春にやってきた新米牧場主なのだが、何故かブランドンを気に入っており、三日に二回は会いに来る。お陰様で、常に彼女の存在がブランドンの意識に居座り、手が動かない。ありていに言えば、スランプだった。
「悩みとは、お前のことだ」
「おお?」
「お前がいっつもこうやって――」
 くどくどと述べられた陳情を、クレアは素直に傾聴した。そして結論を下してから、彼女の動きはとても速かった。一日で必要な資材を集めきると増築をゴッツに依頼。ザッカ屋に赴きプリザーブドフラワーと青い羽根を買ってブランドンに渡す。やがて家が出来上がり、大きなベッドも届き、あれよあれよという間にブランドンは牧場の家に引っ越すことになった。
「……は?俺は、結婚したのか?お前と?」
「うん!」
 クレアは嬉しそうだ。彼女曰く、寝食を共にすれば嫌でも顔を合わせるし、離れた時にわざわざ思い出さなくてもよくなるから、ブランドンの意識からは消えるはずとのこと。1ミリも理解できない解決策だが、結局は彼女の言う通りになったので、ブランドンは考えるのをやめた。

Next