「私、思うんだ。・・・もしも涙に色がついていたら、鈍感な君にも気付いてくれるのかなって。」
夕方の公園、ブランコをゆっくり漕ぎながら、君は小さく呟いた。私はいつも通り明るく「鈍感で悪かったですね。」と答えて、続けて言う。
「ていうかさ、もしも涙に色ついてたら、気づいてくれるかもしれないけど、なんかめっちゃカラフルになるよね。」
「そうだね。・・・こういうのって、どんな色なんだろ。人によって色が違うのかな。」
「それじゃあ、私たちはどんな色なんだろうね。」
私はブランコを強く漕ぐ。冷たい冬の風が身を襲う。君も負けじと強く漕いで、凍るような風が当たったのだろう。すっかり驚いたような顔をして「寒いね!?」と大きな声を出した。
「ねぇ、もしも涙に色がつかなくてもさ・・・気付いてね、私が泣いてることに。」
「うん。夜、会いに行くよ。君の隣で話聞いたげる。」
「へぇ、優しいじゃん。」
いつも通り、君は私をからかうように笑う。でも、その笑顔はいつもよりも明るく見えた。
もしも涙に色がついているなら、私は何色だろう。
もしも涙に色がついているなら、君は何色だろう。
そうやって考えたけど、色がついていないからこそありのままでいられるんだと思う。だって、もしも色がついていたら、毎朝君は必死に涙の色を隠そうとするんだもの。
それじゃあ、大好きな君がありのままでいられるように、私も君を支えられるような人でいよう。
#透明な涙
(睡魔と闘いながら書いたので変な文になってたらすみません。あといつも以上に内容雑ですみません。)
俺は今日も、隣の部屋から聞こえる、声を抑えて泣く声に耳を傾けていた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
謝る声が聞こえる。その度、「お前は悪くない。」と言いたくなる。でも、俺が何かアクションを起こしたら、すぐにいつもみたいににこにこ笑って「どうしたの?」と言ってくるのは分かっている。経験済みだからだ。
それなら、どうやって伝えるか。俺は、一日だけでも貴方に泣かない夜を過ごしてほしい。貴方の側にいて、悲しみを分け合って残りを喜びで満たせば、貴方は笑ってくれるだろうか。────笑ってくれなくてもいいけど、いずれはそうなってほしいのだ。
勿論、すぐに止めるなんて無理だ。だからこれから、部屋に行っても誤魔化す演技をされるだけだろう。
そもそも、貴方がこのようになってしまった原因は、貴方が高校三年生の頃────六年前まで遡る。その年の文化祭で発せられた、たったひとつのありもしない噂のせいで学校中が敵になって、いじめられるようになったというものだ。
俺は、幼稚園から中学の時までずっと、貴方に迷惑をかけてきた。だから、高校では自由になってほしいと思い、貴方とは違う高校に進学した。────それが間違いだった。
一番傍にいてはならない時に傍にいて、一番傍にいるべきときに傍にいない。そんな頼りない俺でも、貴方は許してくれるだろうか。
俺は扉を開けて廊下に出た。冬真っ盛りで、一歩外に出ただけで凍え死んでしまいそうである。
正直、そのまま凍え死ねと思った。だが、貴方を救うまでは死ねないのが事実である。たとえ、俺に救えないとしても、それを自覚するその時までは────それを自覚したとしても、足掻かせてほしい。
作戦なんて何も無いまま、俺はすっかり冷たくなったその部屋のドアノブに触れる。────閃いた。演技をさせる隙を与えなければいいんだ。
思いついたらすぐ実行だ。俺はドアノブを押して前方向に力を込めて扉を開けた。
驚く隙も与えてやらない。真っ直ぐに貴方のもとへ走り、その身を抱きしめた。
#あなたのもとへ
太陽の光が、窓を開けたリビングに入ってくる。
俺の口からでた初めの感想は「眩しい」ではなく「暖かそう」だった。だって、2匹の飼い犬────キャバリアキングチャールズスパニエルたちが気持ちよさそうに日向ぼっこしているのだから。
それと同じことを思ったのだろう。俺の隣に腰掛ける貴方も「気持ちよさそうですねぇ。」と和んでいる。
「そうだ。私も寝ちゃおっ♪」
貴方は普段お淑やかで大人しいが、時々こうやって、いたずらっ子のように笑ってくれるのである。そこがまた、可愛らしい。
立ち上がって、俺の隣から離れていってしまう。その瞬間、心に穴が空いたような感覚がして、俺の心を満たしていたものが一気に零れていった。行かないでとのばした手は、貴方の長い髪からほのかに香る甘い匂いに遮られてしまった。
そんな俺の様子など知らずに、貴方は床の日が当たる部分に寝転がる。眠っている犬たちの邪魔はしたくないのだろう。犬たちから少し離れた所で大の字になって目を瞑った。
どうして貴方はいつも俺の心を弄ぶのだろう。隣にいると期待させておいて、それを平気で裏切るなんて。
「・・・仕返しだ、馬鹿。」
俺もソファーから立ち上がると、寝返りまで打って呑気に眠る貴方の横に寝転がった。貴方の、まるで幼子のような寝顔が、俺の真正面にある。
俺はその唇に、そっと、自分の唇を重ねた。
#そっと
(学業が忙しくてあまり更新できなくてすみません。「俺」と「貴方」の関係はご想像におまかせします)
人生に絶望していた時、君が私に言ったこと────言おうとしていたこと。
あの夢の中、私と君は学校の屋上に座っていて、二人で曇天の夜空を見上げながら話していた。
「私、もう生きたくないんだよね。」
「何があったんだよ。俺でいいなら聞くぞ。」
「んー・・・親友だと思ってた人に裏切られたり、やって提出した課題を『出してない』って言われて怒られたり、突然知らない人から『謝ってよ!!』って怒鳴られたり・・・」
「本当に何があったんだよ・・・」
君は少し考えた素振りをしたが、やはり答えは出ないらしい。そりゃあそうだろう。その人は、クラスメイトの、他のクラスにいる友だちだったんだから。それを君に言うと、「意味わかんねぇよ。何に謝れって言うんだよ。つーか言いたいことがあれば自分で言えよ。」とため息を吐いた。私はそのクラスメイトと話したことがないため、何に対しての「謝れ」なのかは分からないということも言うと、尚更君は呆れたような顔になった。
「つまり、あれか?周りの人が頭のおかしなやつしか居なくて疲れるってことか?」
「んまぁ、そうなんだけど・・・でも、私、怖いんだ。私の一言や私のミスで、誰かを傷つけたり、迷惑かけちゃったりするのが。それにさ、勉強とか、人間関係とかでも結構劣等感感じちゃうし。・・・ねぇ、助けてよ。一緒に逃げようよ。」
ねぇ、助けてよ。一緒に逃げようよ。口からそれらが滑りでても、君は怒らなかった。
「そうだな────」
そこで、目が覚めた。
世界は残酷なほど明るくて、鳥が楽しそうに囀りをしている。
その時、私は絶望した。隣に君は座っていないし、夜の屋上でもなければ、ここは朝の自分の部屋である。
でも、しばらく日が経った今ならわかる。
あの時、君が言おうとしたことの答えを知るために、私は生きているのだろう。
今日も、答えを見つけられないまま────君を見つけられないまま、生きていく。いっぱい苦しんで、いっぱい泣いて、いっぱい嘘をついて、生きていく。
分かっているんだ。君は、私の夢の中の住人だから、現実になんて来てくれない。それでも、いつか答えを見つけられる日を信じて────
「いってきます。」
重いドアを開ける。────答えは、そこに立っていた。
「遅くなってごめんな。さぁ、逃げようぜ。」
差し伸べられる、君の手を取る。
あの夢のつづきを、私たちは今から、なぞっていくんだ。
#あの夢のつづきを
(久しぶりの更新になってしまいすみません!
まぁ、多分誰も私の作品なんて待ってないと思うけどね。でも、待っててくれる人がいたらいいな。
ちなみに、親友に裏切られたことと「課題出てない」って怒られたことは実話です。その後ちゃんと閲覧印押された課題返ってきたよ・・・)
今一番何が欲しいかと聞かれれば、私は「追い風」と答えるだろう。
なにか新しい物事を始めたり、一歩踏み出すときには勇気というものがいるが、生憎私にはそんなものなどないのである。
だから、一歩を踏み出す場面であえて立ち止まり、追い風────つまり、私の背を押してくれるトリガーのようなもの────を待つことにした。
しかし、こんな生温い考えのヤツには、いつまでたっても来てくれない。目の前にたって私を待ってくれていた君が、次第に遠ざかっていく。
「待って!・・・待ってよ!!」
叫んでも、君には届かない。君が────好きな人が、夢が、目標地点が、二股に分かれた道が、遠ざかっていく。
追い風は、待てど暮らせど来ない。ならば────
私の心に、追い風になってもらおうじゃないか。