路地裏のうさぎ

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6/30/2024, 10:33:16 AM

ガシャンと音を立てて、それは床に落ちた

手を伸ばしたけれど間に合うわけもなくて
床に散らばるハサミやメジャー、ピンクッションに糸…

あわててピンクッションに刺さった針の数を数える
…良かった、針は散らばらなかったみたいだ

ソーイングケースの中に
落ちたものをひとつひとつ戻していく

ピンクッション、ハサミ、メジャー、白い糸、黒い糸…

「はい、こっちに転がってきてたよ」

目の前に差し出されたのは赤い糸

「あ、ありがと…」

片想い中の彼に手渡された、ただの赤い糸
この瞬間からただの赤い糸は私の宝物へと変わった
これが運命ならいいのに…


***赤い糸***

6/29/2024, 10:34:06 AM

学校の帰り道、ふと空を見上げた

「…ソフトクリーム食べたい」
「えー?わたあめじゃない?」
「ソフトクリームだよー」

そんなしょうもないことを話しながら
コンビニへ寄り道する

「さすがにわたあめは売ってないか」
「だからアイスにしておきなよー」

その時、ゴロゴロと雷の音が鳴り出した
さっきまでの青空は消えて、黒い雲に覆われた空

ザーッと音を立てて雨粒が勢いよく降り落ちる

「…アイスより傘買おうか」
「そうだね…」


***入道雲***

6/28/2024, 10:26:03 AM

バシャバシャと弾けるような水の音を聞き流して
プールの横を足早に通り抜けようとした時

ーーぱしゃん
背中に水がかかった

「ちょっ!もう、濡れただろ」
「ごめーん。だって無視して行こうとするから」

水着姿の彼女の、日に焼けた肌が眩しかった

片や俺は一年中真っ白い肌で
彼女の隣に並ぶとオセロのようだ

「今日、部活あるの?」
「うん。大会近いから」
「じゃあ一緒に帰ろ」
「わかった。じゃあとで」

俺はラケットケースを持ち直して
卓球部の部室へと向かった


***夏***

6/27/2024, 10:20:46 AM

「どこかに行きたいな」

公園のベンチに座り親友とおしゃべりしていた時
ふと口からこぼれ落ちた言葉

「どこ行く?ゲーセン?」
「ごめん、そうじゃなくて」

優しい親友は私の脈絡もない呟きを拾ってくれたけれど
そうじゃないんだ…

「なんか疲れちゃった」
「…うん」
「誰もいないどこかに行って、そのまま消えたい」
「だめだよ。ここにいて」

そう言って親友は私の手を強く握った


***ここではないどこか***

6/26/2024, 10:42:52 AM


「また明日」

それが君と交わした最後の言葉になるなんて

席替えで隣の席になった時のことを覚えてる
初めて交わした言葉は「おはよう」だったっけ
いつの頃からか君の姿を目で探していた

決死の覚悟で伝えた「好き」の想い
君のはにかむような笑顔
つないだ手の温もりだって覚えてる
それなのに…

どうして今、俺の手は何も感じない?
指先すら動かせない…
目が霞む…

ああ、サイレンの音がうるさい…


***君と最後に会った日***

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