「高橋くん?」
玄関で突っ立ってる君を見つけた。
「そんなところに立ってどうしたの?」
「傘を忘れた」
彼はこいつ感情の概念知ってる?ってくらい感情がない。
「しょうがないなぁ私が送ってあげるよー」
「君の家と僕の家、真反対じゃん」
「高校生なんだからそれくらいどうって事ないでしょ」
実質相合傘状態で歩きながら、私は沢山質問する。
「血液型は?」
「A型だよ。几帳面に見えるでしょ」
「誕生日は?」
「7月10日、納豆の日だね」
「身長、私より高いよね」
「170はある。君まさか追い越そうなんて考えてないよね」
「じゃあ…」
私は深く深呼吸して言った。
「高橋くん、私の事どう思ってるのか教えてよ」
一瞬驚いた顔で固まった彼は、また普通の表情に戻った。
「いつか分かるよ、きっと」
「は?どういう意味?」
「まだ、内緒かな」
ちょっとモヤモヤしてるけど、嫌ってない事はたしかだと思っている。
いつもあまり人と一緒にいない君。そんな君を、私が一番よく分かれる人になりたい。
『誰よりも』#高橋くんシリーズ
「手紙ぃ!?」
と、朝から学校で叫んだ。ちなみにうちのクラスは朝から大声やら発狂やらでうるさいので別に気にされない。
朝が弱い僕でも一気に目が覚めてしまった。
「そそ、10年後の私よりって書いてあるんだよー」
彼女はいつもの笑顔でとんでもない事を話してくる。
「いや、まだ100歩譲って数年前のタイムカプセルとかが自分の家に届いてましたーなら分かるよ?けど、未来から来るなんてある?なんかの悪戯なんじゃないの」
僕は言葉を発するのが面倒だからいつもは短文だけど、今日はとことん長文になってしまいそうだ。
「甘いね高橋くん!これを見てみなさい!」
手紙を見てみると、彼女の字と手紙の字がほぼ一致した。強いていうなら手紙の文字は彼女の筆跡を若干美形にした感じだ。
元から美形だし、別に変わらないっちゃ変わらないけど。
「まぁだからこれは本当なんだって!あ、高橋くんには内容見せてあげないから」
「別にいいよ。興味ないし」
でも、内心は違う。
彼女がどういう大人になっているのか。どんな職業に就いたのか。どんな人と付き合って、結婚したのか。もし、それが僕だったらいいのに。とか。
好きなんだから当たり前に見たいけど、今回は我慢だ。
樫平真昼の未来は、いったいどうなんだろう。
さっき興味ないって言ったけど、全然そんなことない。
まぁ、究極のツンデレってことにしておこう。
『10年後の私から届いた手紙』#高橋くんシリーズ
高橋くんの片思い相手の名前が樫平真昼(かしひらまひる)に決定しました。
今日はバレンタインだ。
さっき友達からこんなLINEがきた。
『詩月は本命いないの?』
思わず笑ってしまった。本命なんて言葉は私の中に存在さえしてない。
『いるわけないじゃん』
笑ってるスタンプと共にそう送り返した。
彼氏いない歴=年齢だし、非リアだーとかほざいても彼氏ができないのは十分承知の上なので特に気にしてはない。
ただ、友達にチョコを送ろうとしたのに今日が土曜日なのは正直あまり嬉しくない。
あいにく今日は友達も用があるらしいので作ったとしても渡せない。
なんて運がないんだ。
何を作るか考えながらふと思った。
…恋愛しなくても頑張って生きてる私めっちゃ可愛くね?
丁度いい。
今日はたくさん作って自分への本命チョコをおもてなししようか。
『バレンタイン』みんなのバレンタインが幸せなものになりますように!((私含めて))
両片思いの男子がいた。
「今日はありがとう」
デート(?)終わりに2人で夜道を歩いてると、彼が急にそう言ってきた。
「めっちゃ楽しかったー!」
背伸びして買ったミニスカートも、この日のために練習した髪型も、全部君のためだよ。
…って言いたいなぁー…。
「ねぇ」
「ん?」
でも、思いは我慢ができなかったらしい。
「私…もう準備できてるし、待ってるから」
君に素直な気持ちを伝えてみた。彼は照れたり、誤魔化したりしないで、穏やかな顔でこう答えた。
「待ってて」
2人の間にほのかにあたたかい風が通り過ぎていく。
それは、2月の少しずつ春を感じた日だった。
『待ってて』
えっほ えっほ えっほ えっほ
――TikTokを撮り終えた私と好きな人。
「てか、アンパンマンって粒あんなんだ。正直こしあんかと思ってた」
「それ思った」
淡々と会話するぎこちなさに吹き出しそうになるが、一緒にTikTokを撮ってくれて嬉しい。
「ねぇ」
「ん?」
「バレンタインチョコあげる」
「え!?逆チョコだけど、いいの?」
逆チョコ、っていうワードは聞いたことあったけど、まさか実際に、しかも私が経験すると思わなかった。
「開けてみて」
丁寧に包装されたラッピングを開けると、そこにはチョコの色をしたマカロンが2つ入っていた。
「あ…帰ったら、意味、調べてみてね」
「え?」
「それじゃ」
すぐに姿を消してしまう彼の背中を呆然とみて、顔を赤くしながら思う。
この意味、知ってるんだけどなぁ…。
『特別な人』というありがたい肩書きをもらったところで、私の心は弾む。
「えっほ えっほ えっほ えっほ 君の事が好きって伝えなきゃ…」
そう独り言を呟きながら、彼の背中を追いかけるのだった。
『伝えたい』