『風に乗って』
長い草が風になびいて波のように揺れている草原。かき分けて進むと灯台があった。近寄って見ると張り紙があり、
〖この先、ご自身の分身が数人、共同で暮らしている島がありますので、そこでご自身達と生活できます〗と、書いてあった。
灯台の扉が開いて、中から私に似た人物が一人出て来て、「迎えにに来たよ。一緒に島に行こう」と、言った。「ここは死後の世界なの?」と聞くと、そうだと言った。
ここまでの道のり、誰も迎えに来ないし、道案内もないから分からなかったが、私が死んでも迎えに来る人なんかいるまい、と思っていた。
でも、来てくれた。けど、それも私なのなら、結局誰もいないのと同じことなのだし、相変わらず、一人なのだが、それでいいと思った。
死んだからには、自分と向き合うことになるということか。生きてきた人生も逐一おさらいして、生きる意味を探るのか。
「その必要はない」と、分身は言った。「木や草や花も虫も、小鳥も猫も、蛸や提灯アンコウなんて不思議な生き物だって、ただ生きてそこにいるだけで、意味なんてない。だから、そこにいればよかったんだよ」
『刹那』
刹那という言葉を物に例えると剃刀のような小さなナイフで、それを手に空間を切り裂くと、場面がその都度変わるらしい。
『生きる意味』
瞑想してみた。海のように風になびく一面の草原に、田舎の駅の待合室のような小さな小屋があって、私はその中で椅子に腰かけている。
自分の無意味でつまらなすぎる人生の意味を知りたくて、本を読みあさって神秘の世界を調べたけど、分からずじまいだった。
死後の世界に来れば、分かるに違いない。ここで探し出せる。なにかのパンフレットがある。駅によくあるようなラックにささっている。
手にとって開いて見ようとすると、ボトッと音がして何かがパンフレットに当たり、床に落ちた。それは大きなアゲハチョウの幼虫だった。
そうとう大きい迫力ある虫で、カゲロウでもセミでも儚い羽虫は幼虫の頃がむしろ彼らの人生の最盛期のように思える。
天井あたりから落っこちて来たのだ。この出来事の意味について考え始めた。成虫とは亡霊で、生きても死んでも同じ次元に棲んでいる。
とはいえ、ただ虫が落ちてきただけかもしれない。全ての事に意味があるわけじゃない。人生も意味は無いってオチなのかも知れない。
床に落ちたパンフレットを拾い上げた。この先に海と灯台があるので、見に行けるらしい。やはり意味など考えるな。私はサナギからの脱皮に失敗した異形の蝶だ、とか、そういうこといいから。
『善悪』
良かれと思ってやったことなのに、ことごとく悪いと言われて、あるいは悪い結果になってしまい、そんなつもりじゃ無かったんですけど、言われてみれば悪かったです。
起こられっぱなしの人生で、いつも不安だ。何が正しいのか考えても無駄だし。絶対間違ってるから。私は生まれながらにやることなすこと悪いので、バンドやりたかったです。
『流れ星に願いを』
流れ星に願いをのせたら、そのまま消えちゃう気がする。こっちに向かって落ちてきても困るよね。