きらめく街並み(オリジナル)(秘密の手紙続編)
クリスマスイルミネーションでデコレートされた街はとても綺麗だった。
周囲はカップルだらけ。
そして自分はひとり。
いや、厳密にはひとりではないのだが。
隣には街並みを物珍しそうに見回している友人がいる。しかし、幽霊なので、普通の人には見えない。
「いやー、ロマンチックだなぁ。さっちんは彼女とかいねぇの?」
急に話しかけてきた。人のいるところで話しかけられるとこちらが独り言を喋っている変な人になるのでやめて欲しいのだが。
「急に何?」
「俺、野球に忙しくて、こういうところ全然来た事なかったからさぁ。彼女とかいれば来た事あるんだろうなと思って」
「……彼女はいないけど、この時期の限定グッズを買いに来る事はあるね」
僕の回答を聞いて、かずやは吹き出した。
「らしいなぁ!」
失礼である。
「かずくんこそ、野球部でモテモテだったじゃん。彼女とこういうところ来なかったの?」
「彼女つくる暇あったと思うか?俺野球バカだぜ?まぁ、今となっちゃあ学園のマドンナとこういうところ歩いときゃ良かったかなぁ」
「うっそ!聖子さん好きだったの?」
「いや、告白されて断った」
聖子さんは高校一のマドンナだ。欧州人系のクォーターで、柔らかい髪と綺麗な瞳の清楚な女性で、皆の憧れであった。
「男の風上にも置けない…」
「うるせぇな。だから今後悔してんだろー!」
後悔と言いながらカラッとした物言いで、そういうところが、かずやらしい。
僕はクスリと笑った。
「あっ!あそこ!ハンバーグめちゃ美味そう!さっちん、あれ食べよう!」
幽霊は食事を取らないが、匂いはわかるらしく、それで食べた気持ちにはなれるらしい。
色気より食い気なところも彼らしい。
たぶん、彼が一緒にいる人間に自分を選んでくれたのは、こういう子供っぽい自分をさらけ出せる場所が他になかったからじゃないかと思う。
店に入り、ハンバーグが出てくる前に、彼のスマホに着信が入った。
「うげ!」
「仕事?」
「ゔゔゔー!ハンバーグ…」
彼は『最期の手紙配達員』見習いであり、時々こうして呼び出しをくらう。
恨めしげにスマホを見つめていたが、
「また一緒に来ようよ。ここのハンバーグはクリスマス関係なくいつもあるからさ」
僕がそういうと、悲しそうに頷いて、
「ごめんな、さっちん。行ってくる」
と、天井をすり抜けて飛んで行った。
ごめんな、の中には、孤食になった僕に対する気遣いも感じられたが、気にしないで欲しいと思う。
最期の手紙を届ける仕事を頑張って欲しい気持ちの方が上回っているから。
それに、彼とこうして未来を約束する事で、まだここにいてくれるんじゃないかと安心できるので。
豪華なハンバーグはとても美味しかった。
ガツンと肉肉しくて、きっと彼の好きな味だと思う。
次に来る時の彼の反応が楽しみだ。
秘密の手紙(オリジナル)
玄関のドアを開けたら、目の前に人が立っていた。
シルクハットにロングコートという、マジシャンや吸血鬼のような格好の、長髪の男である。
コスプレ趣味の人かもしれないし、普通に危ない人かもしれない。
「わ!すみません」
とっさに頭を下げて顔を隠した。夜で明かりが少ないとはいえ、今は見られたくない顔をしていたからだ。
なのに、その男は去るどころか、
「お届け物です」
と言って、真っ白な無地の封筒を差し出してきた。
とても配達員には見えないのだが?
疑いながらも受け取ると、その封筒、切手もなければ消印もない。
宛名に「さっちんへ」と書いてある。
心臓が跳ねた。
その呼び名を知るのは幼稚園が一緒だった人だけだ。
差出人名の記載はない。
震える手で封筒を開けると、封筒がふわりと消えた。
「は?え?」
「さっちんへ」
いきなり、声が聞こえてきた。
ああ、この声は。
「元気にしてるか?久しぶり。実はずっとさっちんに言いたいことがあったんだけど、言う機会がなかったから、こうして手紙にしています。昔はよく一緒に遊んだよな。中学生くらいまでかな。すごく楽しかったよ。高校の時、俺が野球で忙しくなると、あまり会えなくなったよな。君はゲーム研究会で、俺たち、趣味も嗜好も正反対で、でも、それがまた楽しかったんだけど、交われる時間が本当に少なくなって。本当は寂しかったんだ」
「………っ」
「周りは君のこと、生きる世界が違うとか相応しくないとか色々言ってたよな。そんな風に言われたから、あえて遠ざかったんだろ?実は俺もなんだ。君を悪く言う奴らに君が絡まれたらせっかくの学校生活が楽しくなくなっちゃうんじゃないかって申し訳なくて。今思えばもっとガツンと言ってやるんだった。本当はすごく悔しかったんだ。君は優しいし、心から通じ合える友達だって思ってたから」
彼は野球部のエースで、王道を歩む男。自分とは違う世界の人間だと高校で思い知らされた。隠キャな自分が彼に相応しくないのはその通りで、自分ではない人間が彼を幸せにしてくれと願っていた。
「俺の活躍、応援してくれてたんだってな。何で知ってるかって?俺たちの母親、スーパーで良く会うらしいぜ。立ち話で色々情報交換してるって。新聞雑誌の切り抜きとかバレてるからな。試合にも欠かさず来てくれてたって聞いた。逆に何がそっちにバレてるか、ちょっと心配だけど」
羞恥で顔が一気に赤くなる。
うちの親は何も話してくれなかった。
「だから、ずっとありがとうって言いたかった。寂しかったし、また一緒に遊ぼうって言いたかった。まさか言う前に死んじゃうとは思わなかったからさ」
そう、今日は彼のお葬式だった。
散々泣いて、目が腫れていて、ひどい顔だと思う。
枯れたと思っていた涙がまたとめどなく溢れてきた。
「どうか幸せでいてください」
声はそこで途切れた。
手紙はその文で終わりのようだった。
「かずくん…ばか…やろう…が…」
彼の幸せの方をこそ祈っていた。
なのに、死んでしまうなんて。
そして、こんな一方的な手紙なんて寄越して。
返事が送れないじゃないか。
手紙を届けた謎の男は、満足そうな笑みを浮かべて、
「心残りがあると成仏できませんから、そういう人間を助けるべく活動しております。私こういうものです」
名刺に『最期の手紙配達員』とある。
彼は挨拶をするようにシルクハットを脱ぎ、
「実は聡様にお願いがあ」
まで言ったところで、別の声が割り込んだ。
「あああああ!!貴様ぁぁぁ!!!」
宙をすっ飛んで現れたのは、手紙の主。
「かずや?!!?」
玄関先に到着すると、シルクハットの男の首を絞めんばかりに胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。
「もう会えないと思って書いた手紙なのによくも届けてくれたな!こっちを選ぶなら渡さないって言ったじゃないか!クソが!」
男はヘラヘラと笑っている。
「まあまあ、素面じゃ言えない素直な気持ちを伝えられたんだから良いじゃないですか」
「良くねぇぇぇ!!!」
「あの?かずくん?」
「あー。聡ごめん。実はこんな感じに幽霊になっちまったんだけど、こいつの仕事を手伝うことになったんだ。そんで、生身の人間の家を拠点にしなきゃなんないって言われてさ、聡しか思い浮かばなかったんだけど……」
僕は泣いたら良いやら、笑ったら良いやら複雑な顔つきになってしまったけれど、さっきの手紙の中身と自分を選んでくれた嬉しさもあって、
「いいよ!」
笑顔で即答していた。
彼が亡くなってしまったのは本当に悲しいけれど、手紙の返事の代わりに、彼が成仏するまで、たくさん幸せにしてあげられればと思う。
冬の足音(914.6)
冬の足音とは、冬が来たと感じる事ですね。
私、数年前から初めて三次元に推しができまして。
グループ活動が冬だけなんです。
だから、彼らが動き出すと冬が来たと思いますね。
本日、改名後初のデジタルシングル発売日です。
年末のコンサートでファンを想って歌詞変してくれたものをそのまま1stシングルにしてくれたものです。
そんなん、ファンは泣くしかない。
皆様もご興味あれば是非。
贈り物の中身(オリジナル)
A子「彼氏がサプライズでプレゼントくれたんだけど、すっごく趣味悪いネックレスでさ〜。サプライズはいらんから選ばせろって思ったね」
B子「えー、愛されてるじゃん」
C子「そうだよ〜!贈り物を選ぶ時間いっぱい、相手が自分のことを考えてくれたって事なんだから。嬉しいじゃん」
B子「そうそう。それに、アクセサリーを贈るって、独占欲って言うよね」
A子「でもさぁ、いらないものもらっても大変よ?趣味合わないのにつけてきてとか言われたらどうする?売るに売れないし」
C子「別れるならまだしも、付き合ってるのに売っちゃうのはちょっと彼氏が可哀想」
B子「まさかもらった時に渋い顔したんじゃないでしょうね?」
A子「いや、喜べないよさすがに。ひきつったね。私をどんな風に見てるんだと問いただしたくなったよ」
B子「どゆこと?」
A子はネックレス画像を友達に見せた。
それは、ギラギラゴツゴツした純金の鎖だった。
C子「………ヤクザ?」
B子「売ったらお金になるから?高飛びする時使えるじゃん」
A子「誰が高飛びするか!」
凍てつく星空(914.6)
フィンランドにオーロラを見に行った事があります。
晴天率はカナダやアラスカの方が高いのですが、ムーミンやサンタに興味もあってのチョイス。
全体がガラス張りのガラスイグルーに泊まり、部屋の中でぬくぬくと星空やオーロラを眺めながら寝られたら最高じゃないですか。
ところが私ときたら布団の心地よさに朝まで爆睡。
結局、ずっと雲が厚く、オーロラは見られなかったらしいけれど、そうでなくても小雨のせいか寒暖差のせいかガラスに氷の結晶がはりついて視界が遮られてしまい、ツアーのお客様達と相棒は夜中ずっとガラスにお湯をかけてみたり、色々すったもんだしていたらしい。
参加できずにすまんという気持ちと、気持ちを共有できず残念という気持ちと、見られなかったなら睡眠取れて良かったという最低な気持ちと(笑)
その後、オーロラチャンスに恵まれなかった我々のために、ガイドさんは別日に街の光が届かないところまでバスで連れて行ってくれました。
真夜中だったのでとても寒くて、皆であったかい飲み物を飲みながら懸命に空を見上げたけれど、結局雲が晴れる事はなく。
オーロラはカメラを通さなければただの白い霧としか認識できず、性能の良いカメラを持った人が雲の隙間からほんのり緑に映るオーロラを発見して教えて見せてくれ、皆で万歳三唱。
あの時の凍てついた空気の感じ、晴れていたら星空もどんなにか綺麗だったかと思う。
ちなみに、オーロラは帰りの飛行機で見る事ができました。雲の上に出たからね…。