寂しくて(914.6)
ひとりでいるのは嫌いじゃない。
ひとりで飲食店に入れるし、孤食も気にならない。
複数人でないと行けないところは行くのを諦める。
それが別に嫌じゃない。
寂しさを埋めるために友達や恋人をつくるのはなんか違う気がするし、失礼な気もする。
「誰でも良かった。何人目かでつかまったのが自分だった」などと知るのは、自分を必要としてくれたと期待していただけに、ちょっと悲しくなる。
最も強く孤独の寂しさを感じるのは、そこに多くの人がいて、自分だけが取り残されて、ぽつんと独りになっている時のように思う。
だから、初めから独りを選ぶ。
自分で選んだ独りであれば、寂しくないから。
入りたくて入れないのは辛い。
なら、初めから入りたいと思わなければいい。
今は家族がいるので寂しくはないが、家に独りになったらちょっと寂しいかもな、とは思う。
同じものを見て、異なる感想を言いあって、あるいは共感を分け合って。
それは、心を満たす、大事な時間だと思うから。
寂しくて、すぐに周りを巻き込む人がいるけれど、とても自分にはできないので、正直ちょっと羨ましい。
心の境界線(TOV)注:腐向け
出会った当初、馴れ合わないのはお互い様だった。
レイヴンは成り行きで一緒に旅をしていて、何をしている何者かもわからない、胡散臭いおっさんだった。
俺の方に秘密はないが、特に話す機会も必要もなかったし。
仲良くなる必要もなく、特に知りたいとも思わなかった。
それが、いつからだろう。
レイヴンが、あからさまに線を引いているのがわかるようになった。
旅が長くなるにつれ、皆の背景も正体も否応なくわかるようになっていて。
で、おっさんは?という風になるのは当然だろう。
確かに正体は判明した。ギルドの人間だと。
けれど。
まだ何かある。
知られたくないのか、時々のらりくらりと話を逸らす。
とても心を開いているような親しげな雰囲気で、煙に巻く。
(何を隠してやがんだ、おっさん)
隠されると、逆に気になって仕方がない。
自分は本来、来るもの拒まず、去るもの追わずで、人が嫌だと思うものまで暴こうとするタチではない。
なのに。
その線の内側に何があるのか。
どういう人間ならその内側に入れるのか。
知りたいと思ってしまう。
自他の境を常に意識するという意味での境界線は大事だろう。
しかし、心を閉ざしている境界線は問題だ。しかも、何か暗いもの、もしくはとても柔らかいものが隠されているようで、見ていて少しハラハラするのだ。
(それを明かしてもらえる人間にゃ、まだ足りねぇってことなのかな)
歳の差も、経験の差も、知識の差も、かなりある。
今の自分が何か言ったところで、明かしてくれるビジョンは全く浮かばない。
己の不甲斐なさを自覚し、ユーリは肩を落とした。
とはいえ、色々と、追いつけないとは思っていない。
(いつか、暴いてやるからな)
内心、そんな決意をしていたのであるが。
その内側にとんでもないものを隠しており、もっと先に暴いておけば良かったと後悔する日が来ようとは、この時のユーリに知る由もなかった。
透明な羽根(オリジナル)
「王子、マジ天使」
手に持ったジョッキを机にドンと置きながら、私は友人に力説した。
「また出たよ。あー子のオタク特有誇張表現」
友人は呆れたように笑うが、今日の私は一味違っていた。
スマホ写真を友人に突きつける。
「いつもそう言うから、ほら、これ!」
「うっわ、マジイケメン!!」
会社で盗撮した王子の横顔である。
あまりの美しさに、友人がスマホごと私の手を握って叫んだ。近眼かとツッコミたくなる近さで画面を凝視している。
「え、ちょっと憂いを帯びたこの雰囲気、エロいね」
「でしょでしょー」
「これで、困ってると助けてくれちゃうんでしょ」
「そうそう。地獄耳でさ、どこにいてもすぐに飛んできてフォローしてくれるの。誰にでも優しくてー、格好良くてー、もー皆のアイドル!王子なの」
「目の保養羨ましい…それだけで会社行きたくなるってもんだよね」
「わかってくれるか、友よ」
とはいえ、彼は転職入社組である。結構頻繁に転職しているらしく、あの見た目と物腰から、女関係で揉めるか男の嫉妬で転職を余儀なくされているのではないかと勝手に妄想している。
私は腕を組んでうんうんと頷いた。
友は真剣に写真を見ていたが、訝しげに眉間に皺を寄せた。
「これ」
「ん?」
「彼、背中に羽生えてない?」
急にそんなことを言い出すので、思わず吹き出して笑ってしまった。
「あっは!マジ天使だけど!羽とか!頭に輪っかも見える?」
「いや、輪っかは見えないけどさ、この椅子の後ろのところ、うっすらそれっぽく見えない?」
友は霊感が強く、良く心霊写真などを見せてくれる。が、自分は全くわからないので、正直彼女が本物なのか、何かを精神的に抱えているのか、未だわからずにいる。
今回もこれまでと同じで、私には全く何も見えなかった。
「天使の羽生えててもびっくりしないけどね。いや、むしろ加工してつけたいまである」
「まぁ…似合いそうだけど」
友人はずっと首を捻っていた。
その帰り道。
なぜか人気の途絶えた細道で。
「やぁ、こんばんは、奥田さん」
まさかの。王子と遭遇した。
友達とまだ一緒だったので、ふたりして飛び上がる。
夜の闇も彼の美しさを損なうどころかいや増していて、思わず悲鳴が出そうだった。
「あっ、こっ、こんばんは」
なんとか声を捻り出す。
王子は美しい微笑みを浮かべ、
「ご友人とふたり、一緒に来ていただけますか?」
と言った。
「へ?」
バサリ。
王子の背に、翼が見える。
「私のことを、天使だと吹聴して、写真まで撮って、そちらのご友人には、この羽も見えているようでしたので」
黒い、翼。
「せっかく隠している正体を広められては困るんです。なので」
神隠しにあってもらいます。
何を言われているかわからなかった。
王子が瞬間移動のように迫ってきて。
黒い翼がふたりを包んだとたん、
その場から、三人が消えた。
黒い羽根が数枚、ひらりと宙を舞い、三人が消えると同時に透けて消えた。
道に人気が戻り、何事もなかったかのように、日常が戻る。
ふたりのいた痕跡は消えた。
彼はまた転職する。
正体を隠し、快適な暮らしを続けるために。
灯火を囲んで(914.6)(お題外)
昨日、夜中まで創作してて「語彙が出てこない…繋ぎが変…疲れたから明日推敲して投稿しよう」とそのままにして寝たら、全てが消えていました。
いつもは途中で放置しててもそのまま残っていたから油断しました…いつもと何が違ったんや…。
マイナスの意見をもらう可能性がないのがこのアプリの良いところだけれど、有識者に答えをもらえないのが残念です。
直接打ち込まず、コピペが正解なのかしら。
しかしこのアプリ、フォントと文字数、大きさがほどよくて、直接書くの好きなんですけどね。
休む時に他にコピペっとくか。
まぁ、やり直すほどの力作ではなかったので、消えてしまったけれど、書く練習はできたということで。
後で良いものを閃いたら、このスペースを編集で書きかえるという使い方もできますもんね。
ちょっとショックだったけれど、明日のお題に向けて、気持ち切り替えていこう。
冬支度(914.6)
冬は好き。
暖かい布団で温々するのが好き。
布団から出るのが地獄になるけれど。
炬燵も好き。
掃除が大変だけど。
家族で4方向に入る団欒も良き。
麻雀やるもよし。
中では足の位置取りで、無言の戦いが勃発。
時々、救出し損ねた洗濯物が発掘されたりして。
冬を迎える準備をしながら、
思ひ出ぽろぽろ。
そういえば。
芋栗かぼちゃも好き。
冬に向かって増す食欲。
人にも冬眠の遺伝子があるんじゃないかしら。
そう言い訳して、着々と脂肪を蓄えている。
そんな、冬支度。