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10/29/2025, 12:01:05 PM

tiny love(914.6)


私は鳥が好きだ。

犬派か猫派かと聞かれれば、鳥派だと答える。
ちなみに、
ガンダム派とエヴァ派なら、銀英伝派。
クラスに二大勢力あれば、常に第三勢力。

飼っていた動物を好きになりがちなのか、
好きだから飼うのか(卵が先か鶏が先か問題)。
はたまた、
争いを好まず、王道から外れた生き方をよしとする性格ゆえか。
単なる天の邪鬼か。


閑話休題。


鳥のうち特に、
小さくて頭がつるつるしている子が好きだ。
なでなでしたくなるキュートさがある。
カモなどの水鳥も好きだ。
頭だけ潜って、水面に可愛いおちりが突き立っているのも可愛いし、頭の位置を戻した時に、水滴が、頭と体を伝ってつるんと流れ落ちるもいとをかし。
優雅に進んでいるように見えて、水面下で必死に足を動かしているのも、地上ではよろよろよたよた歩きになるのもまた可愛い。
鳥の、少しお馬鹿な感じも良き。
tiny love。

10/28/2025, 1:41:47 PM

おもてなし(TOV)

宿に戻ったユーリの目に、異様な光景が飛び込んできた。
宿併設の食堂にリタがいたのだが、その目の前の食卓に、ケーキやクレープなどの甘い菓子がずらっと並んでいたのだ。
甘いものに目がないユーリとしては、頬が緩まざるを得ない。が。
「どうしたよ、これ」
リタは肩をすくめて目線をやった。
そこには、満面の笑みを浮かべた、エプロン姿のレイヴンがいた。
「青年、お帰り。待ってたわよ〜。さあさあ!座って!おっさん頑張っちゃった!日頃の感謝をこめて♡め・し・あ・が・れ♡」
胡散臭さ満載の笑顔と態度である。
ユーリは眉をひそめた。
「何やらかしたんだ?おっさん」
「え、な、何って?」
「おかしいだろ。急に。なんか謝らなきゃならん事でもしでかしたのか?どうせすぐバレるんだからさっさと吐いちまった方がいいぜ」
「ひっ、ひどっ!まだ何もしちゃいないわよ〜」
「まだ?」
「せ、青年、甘いもの好きでしょ」
「そりゃ好きだが…」
あからさまに話を逸らしに来ている。
何の理由もなくこれほどの菓子をせっせと作るはずもない。
ユーリはしばし考え、
「そっか。じゃあ純粋に感謝のおもてなしってわけで、食べた後で、謝罪もお願いもないんだな?」
そう詰めると、レイヴンはグッと言葉に詰まった様子であった。
(やっぱりか)
ユーリは席に着き、クレープを手に取った。
(美味い)
レイヴンの手作りだった。
「ううう…そんな事言われたら白状するしかないじゃない」
レイヴンはしばし唸っていたが、覚悟を決めてそう言った。ユーリの横に来て正座をし、手のひらを合わせて頭上に差し上げる。
「青年!お願い!この後一緒に酒場につきあって!」
「なんで」
「いや〜今日出会った、とっても素敵なお姉さんがさぁ〜青年を連れて来たら一緒に飲んでくれるっていうからぁ」
そう、ヘラリと笑った。
期待を裏切らないレイヴンらしい理由に、ふたりは心底呆れた。
「馬鹿っぽい…」
「裏事情しかねぇじゃねぇか。俺は釣り餌か」
「そ、そんな事思ってないわよ?!」
「じゃあ、どういうつもりだよ」
「そ、そもそも!!青年がフェロモン垂れ流しで歩いてるのがいけないのよ!」
「はぁ?」
「お姉さん、街中で青年見かけたらしいけど声かけらんなかったって、一緒にいたおっさんに声かけてきたんだもん。俺様の魅力を存分にお伝えして、夜一緒に飲みませんかって誘ったら、青年が来るならって…」
勢いの良かったレイヴンの声が、みるみる萎んでいく。
話を聞いていたふたりは、哀れみの目でレイヴンを見た。
「それ、普通にお断りされてるじゃん」
「モテねぇんだな、おっさん」
「ううう、傷つく」
レイヴンは肩を落とし、泣き真似をした。
気持ち的には本当に、少し泣いていたかもしれない。

その後、レイヴンの賄賂目的の手作りお菓子は、次々帰ってきた他の仲間のお腹におさまった。事情を知らないカロルやエステルから感謝され、少し報われた気持ちになるレイヴンなのであった。







裏ばっかり=表なし
思ってない=思てなし
モテない=おモテなし

10/27/2025, 1:32:31 PM

消えない焔(オリジナル)(異世界ファンタジー)

声にならない叫び声をあげて飛び起きた。
全身にびっしょり汗をかいている。
荒い息をつきながら、胸元のシャツをギュッと握って痛みに耐えた。
痛いのは、心の臓ではなく、心。

いつもの夢を見た。

まだ夜は明けておらず、宿の部屋は真っ暗で、シンとした空気があたりを包んでいる。
誰にも気づかれなかったようだ。
ラッツは安堵の吐息をついた。

夢の種火は常に燻っていて、少しのきっかけで容易に燃え上がる。

今回は、久しぶりに合流したネオと酒場で情報交換をしているうちに、周囲の冒険者達を巻き込んでのドンチャン騒ぎになったことが原因だろう。

楽しかった。
だからこそ。

まだ10代の若い頃、孤児院の仲間3人とパーティを組んで冒険者になった。
当時、無知ゆえの万能感に溢れていた。
だから、禁忌に手を出した。
自分たちなら、何が起きても、きっとどうにかできると考えて。
今の技術では到底造れない古代の遺物を手に入れようとして、封印を解いてしまった。
今とは比べ物にならない強力な魔術時代の封印を。
そして、封印を解いた者に対する強力な呪いが発動した。
ラッツは洞窟の最奥で封を解くと同時に気を失い、次に目を覚ました時は洞窟の入り口にうつ伏せで倒れていた。
洞窟の入り口は巨大な岩が崩れ落ちて埋まっていた。その石の下から、見覚えのある手甲をした手が。
こちらに伸ばされるような形で、手首から先だけが。地面を真っ赤に濡らして落ちていて。

その時の情景が。
その後、洞窟を独り掘り進め、皆の変わり果てた姿に現実を突きつけられた慟哭が。

今も鮮明に夢で甦る。

封印を解こうと希望したのは自分だった。
仲間が持つドラゴンの魔防マントに対抗して、何か強力な物を、自分でも持ちたかった。

気を失った自分を、仲間が出口まで運んでくれた。
何の落ち度もない仲間の方が死んでしまった。
彼らの輝かしい未来を奪ってしまった。

そのせいだろう。
楽しいことがあると、己を戒めるように夢を見る。
己にその権利があるのかと。

知らなかったからといって許されるわけもなく、
しかし、孤児ゆえに謝るべき生者もなく、
許してくれる人もなく、
許されたいとも思っておらず、
罰されたいと思いながら、
罰してくれる人もおらず。

だから、種火のままいつまでも。
取り返しのつかない過ちに対する後悔と、彼らの歩めなかった未来を楽しんでいる事への罪悪感で、あれから10年以上経った今でも、ささいな事ですぐに轟々と燃え上がる。

大丈夫。もう巻き込むような仲間はつくらない。
助けられた命、彼らの分まで精一杯生きる。
決して彼らの事を忘れたりしない。
しでかした事も忘れない。

彼らの形見を胸に掻き抱き、ラッツは早鐘を打つ心臓を宥めるように、深く深く息を吐いた。

夜明けまでは、まだ、遠い。

10/26/2025, 1:40:54 PM

終わらない問い(TOV)注:ED後&ネタバレ&虚空


キャナリがもし生きていたら。
今でも時々夢想する。
それはたぶん、実現がとても難しい仮定の話。
その場合、確実に自分は死んでいて。
それでも、己が生き残るより、キャナリの方が、今よりマシな結末を迎える事ができたんじゃないかって。
そう思ってしまうんだ。

アレクセイが狂う前に止められたかもしれない。
ドンは死ななくて済んだかもしれない。
世界がこんな風になる前に、もっと何か別の方法があったんじゃないかって。

世界をこんな風にしてしまう片棒を担いでいた。

自分が生き残った意味は、あったんだろうかって。


こんな事を思う事自体、キャナリに知られたら烈火の如く怒られる、何なら壁に矢で縫い付けられるであろう事は想像に難くない。

それでも。

ごめん、キャナリ。
助けられた命だったのに、死人として生きてしまった。
弱い男でごめん。
過去はもう変えられない。

でも、未来は変えられる。
意味はなくとも、生きていく。
もらった命。助けられた命。仲間に預けた命だから。

いつか会えた時、皆に胸を張れるように。
これからを見ていて欲しい。
地位も能力も人脈も、持てる限りの力を尽くして前に進んで行くから。


…………。


あ、でも、やっぱり、今この時隣にいて、ともに歩んでくれていたら、どんなにか……。


ぐるぐると、とめどなく思考が流れる。
三徹で、だいぶ限界が来ているようだ。

レイヴンは帝都の己の執務室で、深い深いため息をついた。

この山盛りの書類、一緒に捌いて欲しかったなぁ。

10/25/2025, 4:12:27 PM

揺れる羽根(TOV)注:腐向け

報酬を受け取り、露天商が立ち並ぶ賑やかな通りを歩いている時だった。
ふと、目についた店があった。
なんとはなしに近づくと、そこには色とりどりの羽根をモチーフにしたアクセサリー類が並んでいた。
七色の羽根がゆらゆら揺れる耳飾り、白い羽根のブローチ、荷や髪を縛るのに良さそうなゴム紐や、剣の柄につけられそうな小物などなど。
己の格好には基本無頓着で、性能と使いやすさで装備品を選ぶ自分には全く縁のない店である。
が、ユーリは惹かれた原因である一つの品を手に取った。
若い店主が、嬉しそうに声をかけてくる。
「いらっしゃい!お客様お目が高いですね!そいつはデザインはもとより、風魔法も付与されていて、武器につけても良いお品ですよ!」
指でつまんで持ち上げると、羽根がゆらゆら揺れている。武器につけると戦闘時は邪魔かもしれないが、歩くたびに羽根が揺れる姿を想像して、素直に良いな、と思えた。
「ユーリ!」
突然見知った声に呼ばれ、我に返った。顔を向けると遠くにカロルがいて、手を振っていた。突然の遭遇を喜び、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「ユーリも依頼無事に終わったんだね。良かった!僕もちょうど戻るとこ!」
「ああ」
「わー!綺麗な羽飾りだね。え、それユーリがつけるの?なんか、らしくないけど、似合うと思うよ!」
「いや…」
「わ、この七色の羽飾りなんてジュディスに似合いそう!白い羽根はエステルっぽい!リタなら赤かな…パティは青で…ナンだったら黄色かなぁ…」
ナンのあたりで小声になるカロルであったが、隣に立つユーリから何の反応も返ってこない。
「ユーリ?」
目をやると、ユーリはなぜか、呆然とした様子で固まっていた。カロルの声で我に返り、羽飾りを持っていない方の手で、自身の顔を覆った。
「どうしたの?」
「いや。何でもねぇ…」
ユーリは手にしていた羽飾りを、そっと元の位置に戻した。
黒い羽根で、光に透かすと不思議と綺麗なエメラルドグリーンに光るそれ。
ユーリは無言でスタスタと店を離れた。
「お、お客さん?!」
「ユーリ?!」
カロルが慌てて追いかけてくる。
顔が熱い。
顔を見られたくなくて、追いつかれない程度の速足で歩く。
羽根の似合う仲間など沢山いるというのに。
カロルが言うまで、その事に全く気づかなかった自分に唖然とした。
1番に想像したのがあのおっさんだったとは。
(いや、レイヴンなんて鳥の名前なのがいけねぇ。そうだ、風魔法付与ならおっさんを連想しちまうのもおかしくねぇ。そうだ、そのせいだ)
宿に戻るまでの間、そう自分を納得させて気持ちを落ち着かせたものの、しばらくは八つ当たり気味にレイヴンに対する当たりが強くなり、皆に訝しげな視線を向けられる事になるのであった。

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